第2話. 攻撃と回復。
【 「ボケ(ネタ見せ)」について 】
・ 戦闘ターンは「ボケる」、または、「ネタづくり」のどちらかを行う。
・ 「ボケる(ネタ見せ)」が、「攻撃」となる。
・ 「ネタづくり」は、次ターンでどんなボケ攻撃をするか、「作戦を立てる」時間でもある。
・ 敵の「ボケる(ネタ見せ) = 攻撃」に対し、「笑ってしまう」と「ダメージ」になる。
・ 「笑う = ダメージ = HPの減少」、HPがゼロになると死ぬ。
*
【 「ツッコミ」について 】
・ 「仲間」内でのフリートーク中、「ボケ」に対し「ツッコミ」が入ると、ボケた者のHPが「回復」する。
・ 「敵」とのフリートーク中、“おかしい”と感じる部分に「ツッコミ」を入れると、ツッコまれた者が「ダメージ」を受ける。
*
【 「持ち時間・属性ジャンル」について 】
・ 「ボケる(ネタ見せ) = 攻撃」の持ち時間は、1人1分。コンビの場合は、2人で2分。トリオの場合は、3人で3分。(時間概念は、現実世界と同じ)
・ ピンでボケても、コンビでボケても、トリオでボケてもOK。
・ 戦闘する各々に「得意属性」がある。「得意属性」は、現実世界の「笑いのスタイル・ジャンル」に当たる。
・ 「得意属性 = 笑いのスタイル・ジャンル」は、「漫談/漫才/コント/ギャグ/リズム/フリップ/モノマネ/ジョーク/リアクション/天然/自虐/毒舌/小道具」……など、様々。
・ 「得意属性」を生かした「ボケる(ネタ見せ) = 攻撃」は、「漫才 × 天然 × リアクション」のように、複合的に重ねてもOK。
*
【 「パーティ・役割」について 】
・ 私たちのパーティは、自分を含めて「4人」。
・ 私(ナガイ)がリーダーで、私が「指示・作戦」を立てる役割。
* * *
現実世界で、デザイナーを長年やってきた。様々なプロジェクトで起こる問題。いろんな性格のクライアント。数々の修羅場を越えてきた。その場における、「瞬時の状況把握、対処、対応」は得意だ。
「……状況はわかった、ありがとう。それじゃあ……先にみんなの『得意属性』を知りたい。だから、このターン。1人ずつピン芸で攻めようと思う。みんな、持ちネタはあるか?」
「ある!」
「ある!」
「ある!」
3人揃って、ある。よし。
「OK。じゃあ、全員ピン芸でいこう。ぜんぶ見た後に、次ターンの攻め方、作戦を考えるよ」
「わかった!」
「わかった!」
「合点承知の助ぇ〜」
「いつの時代だよ!」
ピロピロピロ! 私がツッコむと、ジグのHPが上がった。なるほど。
「それじゃ、ピン芸を見せる順番は、エリザ、ジグ、フィリーで行こう。まず、エリザ! 頼むぞ!!」
「まかせて! いってくるわ!!」
* * *
【 エリザ 「ピン:『ビキニアーマー』あるある」 】
「『ビキニアーマーあるある』、言います!」
「『ビキニアーマー』って、防具のくせに露出度高過ぎじゃねって、ドヤ顔で言う男に限って……メンタル防御が弱い!」
「流行デザインで『ビキニアーマー』を選ぶ女は……男を変えるのもはやい!」……
* * *
なるほど、エリザの「得意属性」は「毒舌・あるあるネタ」か。ノォールを見る。
「…………」
……笑ってないな。ってか、ネタじゃなく、エリザのでかい胸元を見てる……。意識が、“エロ > 笑い”のパワーバランス……。“笑い”において、「ビキニアーマー」って掘りさげポイントは、男にはあまり響かないのかも。その証拠に、フィリーだけちょっと笑っている。
「次、ジグ!」
「御意!」
「武士かよ!」
ピロピロピロ!
* * *
【 ジグ 「ピン:ショートコント『武器屋』」 】
「おぉ、ここが新しくできた武器屋か! どれどれ、入ってみよう。カランコロン」
「いらっしゃいませ〜」
「あのぉ、強い斧を探しにきたんですけど」
「あっ、それだったら、この斧がオススメですよ」
「どんな敵に効きますか?」
「ゴースト系によく効きますよ!」
「……ゴースト系? 特殊ですね……あんま使わなそうだな。結構高いし……。また今度にします」
「へへへ、わかりました。でも、あなた、この斧……すぐに欲しくなりますよ」
「……気味悪い店員だな……もう帰ります! あれ? 扉が開かない……」
「……ふふ、この斧、ゴーストによーく効くんですよ……」
「……ま、まさか、店員さんが……」
「いえ、あなたがゴーストです。ご自身の頭にドン! これで、気持ちよく成仏できますよ!」
「ワシがゴーストかい! ん〜買います!!」
* * *
……なんというか、昭和を感じるネタだ。しっかり声が出て、滑舌もいい。演技も上手い。ネタの面白さというより、技術を評価したい。「得意属性」は「ベタ・ショートコント」といったところか。
ノォールを見る。ベタなオチは結構好きなのか、HPが少し減っている。ほほう。
「次、フィリー!」
* * *
【 フィリー「ピン:もしも『ラスボスが○○』だったら」 】
「フィリーですぅ。よろしくお願いしますぅ。もしも、ラスボスが、休日出勤中のビジネスマンだったらぁ」
「あぁ、仕事ありそうでないわぁ〜、ヒマだぁ〜。勇者攻めてくるのなんて、物語の最後の最後だしぃ〜。キャラクターデザイン凝ってるのに、登場時間、一瞬だしぃ〜」……
* * *
「ドワァッハッッッハッハァーーーッッッ!!!!! ……や、やめて……ハラいたい…………ヒ、ヒィィ……」
ノォールにウケてる。ものすごく。爆笑。これは「内輪ネタ」だ。外部の者にとっちゃ、あまり面白くないけど、わかる人 = ウケる人には響くネタ。フィリー、狙いを定めて喰らわせにいったな!
よし、私のターンだ。持ちネタが少ないが、挨拶代わりにコレでいこう。
* * *
【 ナガイ 「ピン:漫談『出会い系の実話。』」 】
皆さん、出会い系って、やったことありますか?
出会い系は、ネット上で男女が知り合うためのサービスです。
私、結婚していて、妻がいます。
妻とは、出会い系で知り合いました。
この事を公表すること、妻には言ってません。
妻に出会う前の出会い系で、こんなことがありました。
*
ある時、CMディレクターの女性と食事することになり、予約したイタリアンのお店に、一緒にいきました。
お店に入るなり、彼女は言いました。「私、この店、イヤ。ちがうお店にしない?」。
……予約している店なんですけど! さすが、CMディレクター。こだわりが強い。
*
別の女性と、新宿の丸井1階で待ち合わせしました。
待ち合わせ場所は彼女の指定でした。
初めて、会うなり、彼女は言いました。「私、今日、誕生日なんだ」。
……初見で、プレゼントをねだるなよ!
気づけば、彼女はアクセサリー売り場で、店員さんに「私、今日、誕生日なんですよー」と3分前に聞いたセリフを吐いてました。
店員さんは、私が彼氏で、お前が買ってあげるんだろ? と勘違いしています。
私は目で訴えます。その人とは、さっき、初めて、会ったんですよ!
……もちろん。なにも通じません。
結局、おねだりされたアクセサリー。買いました。そこそこ、いい値段しました。
が、私は後悔してません! なぜなら、この場で、ネタとして話せたから!!
*
最後に。私が使っていた出会い系サービスの名前は、“サーチングラブ”です。
みんなで“愛とネタ”を探そう。以上です。ありがとうございました。
* * *
……ちょっとだけ、ウケた。ノォールが口を開く。
「ひとつ、聞かせてくれ。出会い系ってホントに出会えるの?」
「そこに興味持つなよ!」
「グアッ!!」
私がツッコんだ瞬間、ノォールのHPが減った。ジグが叫ぶ。
「おぉ、やった! そんな感じで、フリートーク中、相手コメントに『的確なツッコミを入れる』とダメージを与えられるんじゃ!」
さっきのネタより、今のツッコミの方のダメージが大きいんすけど……ちと、複雑……。ノォールが吠える。
「くそっ、覚悟しろ! こっちのターンだな! 出でよ、アシスタントA&B!!」
ブワンブワンブワン! ノォールの左右にでっかい毛玉が現れる。直径1mぐらい。中央に目玉がついている。
「ノォール様、お呼びいただき、ありがとうございます」
「ノォール様、借りていた漫画、お返しします。ありがとうございました」
「面白かっただろ、この漫画」
私は、すかさず、
「ここ、教室じゃねぇぞ!」
「グアッ!」
「グアッ!」
「グアッ!」
「アシスタントAには、ツッコんでねぇよ!」
「グアアアアッ!!」
「声、でけぇよ!」
「グアアアアアアアアッッッ!!!!!」
「さすが……細かな攻撃ポイントを見逃さないでツッコんでいるわ……」
「お、おのれ……許さんぞ……いくぞ、トリオネタ! あ、ちなみに“アシスタントA&B”は、このターンだけの登場だからな!」
怒りに満ちたノォールたち。一呼吸おいて、攻めてきた!
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