「内緒にしといてよ」

早坂は僕にそう言った。プールサイドで肛門を見せてきた次の日、彼女は内緒にしてくれとたのんだ。僕と彼女の秘密。そう思った。僕以外に見せたことがないものだと思っていた。バカだ。早坂くらい明るい人間だったら肛門の一つや二つギャグにして当然だ。舞い上がって気づかなかった。


 なんだか早坂に感じていた親しみみたいなものがすうっとどこかへ消えていってしまった。結局僕と早坂はただの同級生で、お互いの知っていることなんて名前くらいなもんなんだ。それ以上のなにものでもない関係なんだ。最初からずっとそうなんだ。生まれて初めてみた女子の肛門にすこしおかしくなってしまっていた。舞い上がっていたんだ。仕方がないことだろう。女子の肛門をみたってのは僕みたいな人間からしたら大ニュースなわけだし。

 

 授業は続いて、早坂たちのおしゃべりも止まらなかった。彼女のきれいな金色の髪への興味は急激に薄れていって、見ていてもなにも感じなくなった。


淡々と話す先生の退屈なことばを聞く気にも、誰かのことを考える気にもなれなくて、僕はスマホをいじる。あのつまらないソシャゲを再インストールした。

 

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ELECTRICSUMMER 凡野悟 @TsuKkue

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