第7話頼み事
飯を食べて風呂に入り、寝間着に着替えて自室に戻ると、メッセージが届く
『葵です、明日なんだけど、良ければ一緒に登校してもらえないかな?』
!!!????
『どうした?』
『今日はお母さんが送ってくれたんだけど、明日からは歩いて登校するって話になったんだけど、一人で行くのはもしものことがあったときに心配だからってお母さんが・・・』
そういう事か。なんと返そうか考えていると、電話がかかってくる。一瞬ビクッとしてしまう。
「はい、もしもし。」
震え声で応える。
「あ、陸翔君?突然ごめんね~」
携帯電話から聞こえてきたのは葵の母親である澄玲さんだった。
「あ、葵さんのお母さん。どうしました?」
さっきの葵からのメールの話なのは明白だが、一応確認しておく。
「葵からさっき連絡あったと思うんだけど、やっぱりさすがに何かあったとき近くに人がいてくれないと心配なのよね。」
「そうですね、まだ完治というわけでもないですし、体力が戻っているわけでもないですからね。」
「そうなの。だから家も近いし、最近話もしてたみたいだからお願いしてもいいかな?」
あれは話をしたといえるのだろうか。
「わかりました、明日家に向かいますので、何時ごろ向かえばいいですか?」
「それじゃあ、7時半に迎えに来てもらえる?わざわざありがとうね。」
「いえ、わかりました。その時間にそちらに向かいます。」
「あ、そうだ!もう一個だけ、できたら帰りも一緒にお願いしていいかしら?」
「帰りは自分部活があるので、遅くなってしまうと思うんですが・・・」
「あ、そっか。じゃあちょっと待っててね。」
電話から小さく会話が聞こえてくる。葵と話しているのだろう。
「遅くても大丈夫みたいだから、一緒にお願いするね。」
「あ、わかりました、それじゃあ、明日向かいます、失礼します。」
「夜中にごめんね、おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい。」
向こうが終了したのを確認して通話を終了させる。部屋の窓を開けると、季節に合った冷えた風が肌を撫ぜる。その寒さを噛みしめつつ空を見る。月は雲に隠れているが、ぼんやりとした光が優しく地面を照らしている。
あー、緊張した。メール来ただけで少しドキッとするのに通話なんて焦るに決まってるわ。
後になって自分は変なことを言ってなかったかなど、意味のない自己嫌悪をいつも通り始める。どーせ意味もないのに二日三日引きずることになる。
いろいろ面倒くさくなり、大きく外に向けてため息をつく。考えても仕方がないと頭の中で言い聞かせて、ベッドに寝転がり時計を見る。いつの間にか日が回ってしまっていた。今日は寝坊できないから、もう寝ておこう。
毛布をかぶり目を伏せる。微睡の中遠くから聞こえてくるバイクのエンジン音が耳に心地いい。
バイクはかっこいいけど乗るのは怖いなー、とぼんやり考えていると、いつもの世界がやってくる。やはり様々な眼に中止されるというのはいつまでたってもなれるもんじゃないな。見られているのを無視して眠りに入る。
明日は二度寝できねえな。最後にそんなことを思ったところで意識が暗闇に奪われていく。
宙の音色 冬ノ千 @oyunomame
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。宙の音色の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます