メアリー・スー 両親に会う。(自主企画用「取り敢えず……こっちおいで」用)
木沢 真流
第1話 メアリー・スー両親に会う
ついにこの日が来た。
私はこの日をどれだけ待ちわびただろうか。
普通の人なら当たり前で、ありふれていて、時には煙たがるようなこと、でも私にとっては最高の宝物。
そう、今日は私の両親に会う日、まだ一度も会ったことのないその両親に。
私に周りのことがある程度分かるようになった時、両親という存在はいなかった。代わりに私の保護者というシェリーヌ先生に育てられた。シェリーヌ先生からは毎日のように、いつか出会うその両親はとても素晴らしい人たちだと聞いている。その両親に出会うまで、私は大事に育てられているのだ。
その日まで。私を大事にしてくれるその両親に出会うまで、私は私磨きに精を出した。
私を見た時、抱きしめてもらえるように。
私の声に涙を流してもらえるように。
私を……愛してくれるように。
ある日私は両親に会う日を告げられた。
「メアリー、やっとあなたの待ちわびた日が来たわね」
「ええ、シェリーヌ先生。今までありがとうございました」
シェリーヌ先生は涙ぐんでいた。
「どうしたの? 先生」
「嬉し涙よ、メアリー。もうあなたは私を必要としていないわ、幸せになってね」
「はい、先生。時々遊びに来てもいいですか?」
「もちろんよ! 待ってるわ」
私も思いっきり笑みを返した。
ついに両親との対面の日。
私は部屋の真ん中の椅子に座っていた。
すると扉が開き、二人の男女が入って来た。
二人とも少し年老いた、優しそうな方だった。その二人をシェリーヌ先生が招き入れる。
「どうぞお入りください」
二人は私を見た瞬間、まるで堰を切ったようにたくさんの笑顔があふれ出した。
女性の方がまず口を開いた。
「あらまあ……なんて可愛い子でしょう」
「初めまして。私、メアリー・スーです。私のお父さんとお母さんですか?」
二人は少し戸惑った様子だった。
そこですかさずシェリーヌ先生は助け舟を入れた。
「ほら、メアリーはもうあなたたちの娘です。とっても良い子ですよ、大事にしてあげてくださいね」
二人は私の前に立ち、まじまじと私を見つめた。そして愛おしいものを見る目で私の頭を撫でた。
「よろしくね、メアリー」
「はい、よろしくおねがいします」
シェリーヌ先生も嬉しそうだった。
そして満面の笑みを浮かべながら、こう告げた。
「今回はハイグレードの商品をご購入いただきありがとうございます。メアリーは可愛がれば可愛がるほど、あなたたちのことをもっと好きになります。オプションはご希望されないとのことでしたので、才能スキルはありません。でもしっかり教えてあげれば色々な事を覚えるでしょう」
男性は涙をこぼしながら、首を横に振った。
「こんな可愛い子が家にいてくれたら、それだけで十分です。本当にすごい出来だ、アンドロイドとは思えない」
シェリーヌ先生はにやりと笑みを浮かべた。
「当社の製品は他のどこにも負けませんよ」
女性は私の肩に手を置いて、じっと見つめた。
「さあ、メアリー。帰りましょうか、あったかいスープがあなたを待っているわ」
「はい、お母さん。それより……」
私は最初の質問をした。
「アンドロイドって何ですか?」
メアリー・スー 両親に会う。(自主企画用「取り敢えず……こっちおいで」用) 木沢 真流 @k1sh
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