エピローグ

 平成最後の夏だからって、なにかが起こるわけでもない。


 来年で平成が終わるからって、世界が滅びるわけでもない。


 そう考えていたけれど、どうやらそうはならないようで。






「ッシャア! これで討伐戦績三体目~。真尋抜かした~」


「るせぇ! つぎ二体まとめ狩りして追い抜かしてやっからな!」






 悲観することはなく、楽観的にもなれず、感動がなければ、感情的になることもない。


 そう思っていたけれど、そんな心情じゃあ戦うこともできないらしい。


 でも、だいじょうぶだ。


 俺は……俺たちは、気づいてしまったんだから。


 平成の怪物に。


 魂の熱量に。






「うわぁ……空飛ぶってこんな感じなんですね~」


「ふたり抱えて空飛ぶとか、サフさんマジマッチョっすわ~」


「褒め言葉と受け取っておきます。あまり嬉しくありませんが」






 だから、いまのままではいられない。


 いままでのようには過ごせない。


 世界のために。


 自分のために。






「うわ、なんかスゲェの見えてきた。なにあの白くてめっちゃデカいの。あれが本拠地?」


「雲のなかの浮遊島とかマジテンション上がるわ~」


「私に対しては構いませんが、他のかたには無礼のないようお願いします」


『は~い』






 感情を、感動を、心のなにもかもを取り戻して。


 記憶を、運命を、魂のなにもかもを取り返して。


 そうやって、フワフワと、夢を描いて生きていく。


 いつの日か彼女を護れるように。


 いつの日か妄想にかなうように。


 そうやって、キラキラと、夢を掲げて生きていく。


 たとえその結末が、滅びを迎えるものだとしても。






「スールズ討伐隊第三部隊所属、サフ=エデン。『ジョーカー』桶川おけがわ真尋、ならびに『メインディッシュ』丸山雄太を連れ、ただいま帰投しました」


「そうか。よくやった。だが……」


「面倒なのでお断りします」


「ほう? 上官に逆らうと? 我、天見あまみ知流ちるぞ? 討伐隊の最高責任者ぞ?」


「お黙りなさい赤子の気も抜けきらないド底辺指揮官が」


『サフさん無礼の話どこいった!?』


「そう! その罵りだ! もっと我を苛めてくれ! もっと我を悦ばせておくれェッ!」


『ヤッベェこの人マジヤベェ! 特に最高責任者ってのがとんでもなくヤベェ!』






 いまは気づけなくても構わない。


 どんな滅びだろうと否定しない。


 どんな障害も結末も、必ず超えてみせるから。


 どんな天理も賢劫げんごうも、必ず変えてみせるから。


 だから……






「では改めて、スールズ討伐隊総隊長の天見知流だ。よろしく頼むよ、新入りくん」


『はい! 新入り一同、魂の限り!』





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ヘイセイの怪物 水沢洸 @mizusawa

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