第117話 ゆん、変身する?

「あ、あ、あの…」


ゆんは固まっていた。

同じくルーシーとクラスメートも固まっていた。


「ちょ、ちょっと…ちょっと待って!ゆん、カイリーを知ってるの?」


ルーシーは息をあっぷあっぷさせながら言う。


「あ、えっと、その…」


カイリーはようやくゆんから離れると、よく来てくれたとゆんの両手をにぎってぶんぶん上下に振っていた。


「あら、ルーシーじゃないの」

「こんにちは。っていうか、ゆんをご存知なんですか?」

「あーもーこの子にうちの服着せたくてたまらなくって!可愛いでしょ〜スタイルいいでしょ〜たまらないわ!」

「それはよく分かるんですけど、どうして…」

「仕事でね、社長についてレン・テラモトの家についていったのよ。そこで会ったんだけど、もーもったいなくて!」

「それは同意します」

「でしょ?あ、えっと、友達だったの?」

「クラスメートです」

「まぁ!そうだったのね!」

「あ…あのぉ…」


すっかり置いてけぼりになってるゆんが言う。


「ごめんなさいね。ルーシーはうちの得意客なのよ。よく来てくれるから知ってるのよ。でもまさかあなたがルーシーのクラスメートだったなんて!」


カイリーはますます嬉しそうだ。


「んもーあなたに会ったあとからすぐあれ着せたいな、これ着せたいなって考えててね、早く遊びに来てくれないかなってずっと思ってたのよ!」

「え…そんな…」

「大丈夫よ、気にしないで!わたしがそうしたいわけだし」

「そうそう、ゆん、カイリーに任せておけばバッチリよ!」


カイリーとルーシーは顔を見合わせてニッコリする。


「ゆん、カイリーのことあんまり知らないでしょ。凄い人なのよ!」

「まぁ、上には上がいるけどね。エミリー・マクガイアとか」

「エミリーは別格でしょ?でもカイリーもInto The Caveを仕切ってるスタイリストなんだからね。わたしにとっては神よ、神!」


ルーシーは言う。

ゆんは自分にとっては全くわからない世界の話で困惑する。


「よくわからないんですけど…」

「まぁまぁ、カイリーにおまかせでいいんじゃない?」


ルーシーはカイリーを見ながら言う。


「わたしよりあなたに合う服をきっちりコーディネートしてくれるわよ!」


ルーシーは言い切った。


「カイリーがゆんのこと知ってるんならおまかせしちゃうわ!わたしも楽しみなのよ。カイリーがいなかったらわたしがあれこれ選んでたしね!」

「でもでも…」

「たまにはいいじゃない。普段やらないことをやってみるのも良いことよ?じゃない?」

「そ…そうかもだけど…」


ゆんは戸惑いを隠せない。


「大丈夫よ。もうあれこれ選んじゃってるのよね〜」


カイリーは本気で楽しそうに言う。

ルーシーはゆんに告げる。


「わたしもみんなも楽しみにしてるんだから、とりあえずカイリーにお任せでいいんじゃない?カイリー、お願いするわ!わたしだってめちゃくちゃ楽しみなんだもの!だから一緒にここに来ようって言ったのよ!」


そしてルーシーはぽんとゆんをカイリーの方に押し出す。


「了解よ。あとであなたのコーディネートもばっちりするからね!」

「忘れちゃダメですよ!」

「はいはい、もちろん!」


そう言うとカイリーはスタッフに何かを告げる。


「待ってて、あなたの為に用意した服を持ってくるから」


カイリーはそれが当たり前のようにゆんに告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしたち生き延びられる? かむら @podo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ