第7話 警鐘

 久々の外は気持ちよかった。


 いままで避けていた世界に触れ直すことで、自分には無かった感動で鈴を鳴らす。


 それは、レーザーで刷られたA4サイズの小説を片手に、連絡が付いた友達の所へ逃げれたから。そして、それをちゃんと、今までと”同じ言葉”として見過ごしていた自分に、”意味があった言葉”として、叱ってくれた。

 同じ言葉であるはずなのに、僕は友達の言葉に納得していて、自分を振り返られずにはいられなかった。鈴ではないな、これは”警鐘≪けいしょう≫を鳴らす”か。







 ―――青年、ふたりはこの町を歩いていた。


 まだ雪解けの季節ではないこの時期に、除雪機できれいに持っていかれて肌を出したアスファルトの上で笑い合っている。街路樹の木々たちは、まだ寒いとばかりに葉のない枝で世界に訴えかけている。


 交差するこの町にもまだ一本道は健在で、人々の在りかた”多様性”を掲示してくれている。



 片方の小さい青年がポケットから手を出したときに、小銭がチャランと音を鳴らして落ちた。そんな姿を私は微笑ましそうに、ポケットから落ちた10円玉を拾って彼に渡した。どんな春よりも、春らしい春が、彼にやって来たのではないのか…。

 ”思春期”と呼んでおこうか。彼には、そんな笑顔が桜にも負けず咲いている。



 「ありがとう。」

 そう呟かれて、背を向けて歩いている私はなによりも輝かしい。



 ループだけの世界よりも、自分の手だけでなく他人の手を借りるのも良いものだと風が運んでくる―――。                       



                                     』





・・目に見えるものだけじゃなく、聴くこともしよう・・・と。

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カクヨム 奥野鷹弘 @takahiro_no_oku

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