第2話 復讐神

誰も、何も気付かない。分からない。

あいつも、あの女も。

ピッチャーで4番。才能も頭脳もずっと上だった。

のうのうと野球を続けるあいつが、を殺した原因のあいつも許せない。憎らしい。


1年前の事故で俺は死んだ。神の力は偉大だ。なんだって可能にする。自分のニセモノも簡単に作れた。誰も俺が死んだなんて思わなかった。

瓜二つのそれの片脚を無くしたのは、あいつらを少しでも傷付けるため。

こんな復讐にしたのは、より深い苦しみを堪能してもらうため。

あいつがあの女に殺されたのも俺の仕組んだ通り。あいつがあの女を殺さないのは読み通り。


は今日も死に続ける。ホンモノは今日もほくそ笑む。

ニセモノは誰にも気付かれない。ホンモノは誰からも相手にされない。

ニセモノは愛される。ホンモノは忘れ去られる。


永遠の時間に囚われたあいつが大切なニセモノの永遠の死で永遠の苦しみを。

永遠の時間の中に囚われたあの女には永遠の死で永遠の苦しみを。


ホンモノは俺。ニセモノは俺。復讐神ふくしゅうしんは……。



ーーーー復讐完了。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復讐神。神様になりました メガネ男爵 @tacosu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ