都市伝説 水道メーターの中… 

低迷アクション

都市伝説 水道メーターの中… 

 「部屋の退去手続きは、厄介な事も多くてね。」


不動産屋の間で噂されている話です。引っ越しで部屋を退去した後は、次の入居者が

来る前に不動産と清掃会社の人が入るそうですが、結構な確率で、元の入居者が

“残したモノ”があるそうです。確かに要らなくなった衣類や家具など、処分代も

重なりますし、いっその事、天井裏とかに隠してなんて事を思いつくみたいで…

そういう時は引っ越し先の住所も、でたらめ教えて知らんふりを決め込むって

按配でして…

だから、部屋を掃除する時は、くまなく探すそうです。天井裏、箪笥の奥、トイレの

給水タンクの中とかね?そうすると出てくる。出てくる。カビ茶けた生鮮食品、

大量のゴミ袋、壊れた電子レンジに炊飯器、エロ本、下着の山?(入居者とは性別が

違うモノです)


「処分に困るモノもあるし、その後の対処、対応は全部ウチ持ちだからね?ヒドイ話だよ。」


不動産に務める友人は苦笑交じり、お手上げといった感じで話します。

ですが、そういった“隠し場所”の中にも時々おかしな場所に隠したり、

妙な“モノ”を見つかる時があるみたいです…


 「入居中は特に何もないお客さんだったんだけどね。いざ退去した後で、変な苦情が

ご近所からあってさ。業者さんと入ってみたんだけど…」


その入居者は若い男性で、退去手続きも特に問題なく、スムーズに終わったものでした。

ただ、退去してから数日後に事務所へ匿名の電話が入ったそうです。

(明らかに近所の番号でしたが)


「以前の入居者は人殺しだから、部屋を調べてほしい。」


どっかの暇人か、少し様子が可笑しい人(不動産ではよくある事と、事もなげに言って

いました。)のありがちな内容ですが、どのみち部屋はリフォームする必要がありますので、電話の翌日、業者さんと一緒に中へ入りました。天井裏など、ある程度の目星をつけた

隠し場所には何もなく、電気のブレーカー、ガスの確認をした後、一応念のため、

外に設置してある水道メーターを開けました。ネジをドライバーで回すと蓋部分が

勢いよく外れ、

「ザーッ」という小さな音と共に、いくつもの何かが足元に零れ落ちました。彼には、

それが何か?はじめは、わからなかったそうです。


「うわっ、何ですか?それ。」


近くに来た清掃業者が顔をしかめます。視線の先は彼の足元ではなく、水道メーターの中に向けられています。友人もそちらを見て、ようやく正体がわかりました。


「爪だ…」


モノを入れる余裕のないメーターボックス内に黄色く変色した人の爪がギッシリと…

計器類の隙間という隙間に余す所なく詰め込まれていました。その異様な光景に加えて、

形容し難い異臭も伴っています。


「水道会社の人だって、あそこ見るんだぞ?何だってあんな所に?

あんなもんを詰め込んだんだ?」


友人と業者は「ヒィヒィ」言いながら、それを片付けました。以前の入居者には案の定、

連絡が繋がりませんでした。入居していたのは半年間。その爪全てが彼のモノだったかどうかは確かめる術はなかったし、確かめたくなかったと言っていました。


この話には続きがあります。友人は仕事柄、住宅展示場などで他の会社の方と会う機会が

多くあります。その飲みの席での事…お互いの近況や、仕事の話の中で友人は

とっておきとばかりに爪の話をしました。周りの反応は上々で「気持ちワリ―」とか

「ヤバいやっちゃなー」等々、話のネタとして一席沸かすものとなったそうです。

さて、飲み会が終わり、帰り支度をする彼の横に、離れた席にいた一人が、何気ない様子で座り、小声で囁きました。


「俺んとこは魚の目ん玉だった…」


何か、水道メーターに関係したまじないのようなモノが流行っているのでしょうか?…(終)

 

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