第195話 パウロ アグリッパ王二世に弁明

 カエサルに上訴することを認めらたパウロは、その時が来るまで、囚人です。身の回りの世話を兼ねて、仲間が来てくれるので心配ありません。


 そんな頃、フェストの所に、ある夫婦が表敬訪問します。ヘロデ・アグリッパ二世とベルニケです。


 ローマ皇帝から任命されたアグリッパ王は、ユダヤ教とローマの法律に精通していました。大祭司任命権と、神殿管理もしています。


 父親のアグリッパ一世が亡くなった時、まだ10代でした。ユダヤ総督に頼ってきたと思われます。


 ベレニケは驚く事に、アグリッパ2世と血の繋がった妹です。近親相姦の夫婦です。どの時代もあるんですね。怖。なので、前回罷免されたフェリクスの妻ドルシラと三兄妹となります。


 フェストは、パウロのことを持ち出しました。

「フェリクスが残しっていった囚人がいまして……告訴人たちは立ち上がりましたが、私が予想していた悪事は告発しませんでした。自分達の宗教とイエスという男に関して争っているだけでした。イエスは死んだのに、パウロは生きていると主張し続けているのです。私はこの論争の扱いに困り、パウロに、エルサレムに行ってそこでこの件に関して裁きを受けたいかどうか尋ねてみました。しかしパウロがカエサルによる判決を受ける為に自分を拘束しておくようにと申し出ましたので、私は、カエサルのもとに送るまで彼を拘束しておくように命令しました」使徒25:18~20


フェストはパウロをどう扱っていいのか相談したんですね。前任のフェリクスのせいです。


 アグリッパ王は自分もパウロの話が聞きたいとおねだりし、翌日パウロはアグリッパ王の前に立つことになりました。


 翌日、軍司令官五人と町の著名人と共にアグリッパ王と妻が着飾って広間に入ります。


 フェストは全ての人の前で、パウロの無罪を主張します。そしてパウロ自身が望むカエサルに上訴するための罪状の書き方について迷っている事を認めます。


「囚人を送りながら罪状を示さないのは、道理に合わないことに思えます」


 アグリッパ王はパウロに、自分の弁明をするようすすめます。それを聞いて罪状を書けばいいんじゃねぇ?となったようです。


 パウロは大喜びで弁明を始めました。

「アグリッパ王、私がユダヤ人に訴えられている全ての事について、今日あなたの前で弁明できることを、嬉しく思います。あなたはユダヤ人の慣習や問題に精通しておられるからです。どうか、私の申し上げることを忍耐を持ってお聞き下さるよう、お願い致します」


 パウロはイエスの言葉を思い出していたのでしょう!

「行きなさい!パウロは私の名を、異邦人、王たち、イスラエルの子孫に運ぶ、私の選びの器です!」使徒たちの活動9:15


 王の前でイエス様の名前を証しする事が、もう嬉しくて仕方ないのです。良かったねパウロ。


 パウロは弁明を続けます。

「私は、私たちの宗教の最も厳格な派に従って、パリサイ人として生活してまいりました。そして今、神が私たちの父祖たちに約束されたものを待ち望んでいることで、私は裁判を受けているのです。王よ、私はこの希望のためにユダヤ人から訴えられているのです!」


 パウロの希望とは復活の事です。ユダヤ人はサドカイ派以外はみな、死者の復活を信じて待ち望んでいるのです。


 なのに、パウロがイエスの復活を話した途端、憎まれ、殺されかけ、現在裁判にかけられたという事です。


 そして自分自身もかつては、イエスの復活を伝えるクリスチャンを迫害してきた事、ダマスカスに行く途中復活したイエスの声を聞いた事、その時イエスから全ての人に宣教するよう命じられた事を話しました。


 この弁明を聞いたフェストが口を挟みます。

「あなたは気が狂っている!博学があなたの気を狂わせている!」と叫びます。


 ローマ人だから仕方ないけど、口を挟むな!フェストは復活を信じない、というより全く理解出来ませんでした。けど口を挟むな!


 アグリッパ王はどう反応するでしょうか?パウロをキチガ○扱いせず、

「あなたは、わずかな言葉で、私をクリスチャンにしようとしている!」と言いました。


 アグリッパ王が預言者を信じている事を知っていたパウロは、旧約聖書を信じている共通の土台の上に、自らの論理を展開していこうしました。


 パウロは巧みな伝道者です。アグリッパ王は困りました。旧約聖書を信じていないと言うなら、ユダヤ教徒ではないと自分で認める事になり、もし、信じていると言うなら、キリストの復活を認める事になります。


 アグリッパ王は自分の王としての立場を守る為に、わずかな言葉で、つまり短い時間で俺を説得するんじゃない!(怒)となったのです。心が動いたのを悟られたくなかったのでしょう。


「言葉が多かろうと、少なかろうと関係ありません!私が願っていることは、全ての人が私のようになってくれる事です!」


 私と同じように、イエスを信じ、光を受け入れて下さいという切なる願いを、パウロは王たちに語りました。


 「この人は死刑や拘禁に値することは何もしていない」とその場にいた人は互いに言い、「この人はカエサルに上訴していなければ、釈放されただろうに」とアグリッパ王はフェストに言いました。


 罪状書けませんね、フェスト総督、残念。


 それでも、パウロはカエサルの前に出るためローマに送られます。三千キロの船の旅、がんばれー!


 

 

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