第194話 パウロ カエサルに上訴します!
ポルキオ・フェストは総督着任三日後、エルサレムに上りました。ユダヤ人の指導者に挨拶するためです。
祭司長にこんにちは、サンヘドリン長老たちに宜しくを言って回ります。
しつこいかな、祭司長たちは、まだパウロを訴えたいので、エルサレムに戻すように伝えます。
前任フェリクスが使えなかったので、フェスト頼みしたのでしょう。また道の途中で暗殺計画。
しかし、フェスト総督はパウロを訴えたいなら、あんたらが来い!と男前に言い放ちます。
単細胞な祭司長とユダヤ人は訴えに来ました。パウロも出廷します。そして二年前と同じ訴えをします。成長してませんね。
ユダヤ人の律法に違反したこと、神殿を汚したこと、皇帝に反逆した事を強調し、訴えます。
パウロはキッパリスッキリ弁明。フェストを唸らせます。嫌疑不十分で釈放しても良いレベルだと判断しました。
しかし、フェストも人の子です。パウロを釈放すれば、ユダヤ人との関係が悪化する恐れがあり、自分もフェリクスみたいに辞めさせられるかもしれません。
サンヘドリンのオッサン連中との対立を避け、パウロを有罪にしないために何が出来るか?
「あなたはエルサレムに上り、この件について私の前で裁判を受ける事が出来るか?」
パウロに提案します。ユダヤ人の歓心も買えます。少なくてもフェリクスよりは頭がキレます。
「私はカエサレアの法廷に立っているのですから、ここで裁判を受けるのが当然です!私が悪い事をして死刑に当たる事をしたのでしたら、私は死をのがれる事はしません!しかしこの人たちが訴えていることについて、一つも根拠がないとすれば、誰も私を彼らに引き渡す事は出来ません!――私はカエサルに上訴します!」
カエサル……つまりローマ皇帝による裁判を希望します!ということです。パウロはローマの市民権があるので、最高裁判を受ける権利があるのです。パウロはここぞというときに、ローマ市民権を用います。さすがですね。
理由は、エルサレムでは公正な判決が下されない事も、イエスとステファノの殉教から心得ていました。
しかし、カエサルに上訴した本当の理由は、神のご意志、イエスの約束を守り、ローマで証しする任務を全うしたい。それだけです。
カエサルに上訴すれば、ローマで証しが出きるのです。自分の命の危険よりも、イエスからの命令を守りたい一心で、この二年間囚人の暮らしを忍耐しました。自暴自棄にもならず、落胆もせず、使命を果たす事だけを望んできました。
パウロがそう出来たのは何故でしょう?
奴隷として売られたヨセフの記述や、死に至るまで忠実を保った古代の預言者の記述を読んでいたからでしょう。ヨセフも二年間奴隷生活。
イザヤ、ダニエル、エレミヤ、ヨナ、みんな神様のご意志を果たす為に自分の命をかけました。
神様に対する信仰って強くするのですね。
パウロは毎日祈ったことでしょう。イエスの命令通りローマで証しする強さを……。
フェストはどう答えるでしょうか。エルサレムに行けとなれば、暗殺か死刑です。
「あなたはカエサルに上訴したのだから、カエサルのもとへ行きなさい!」
フェストありがとう!フェリクスじゃなくて良かったよ。きっと神様がパウロを守り、導いているのだと思います。
さあローマへ。がんばれー!
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