第193話 パウロ 軟禁二年間

 総督フェリクスはパウロに関する問題をどう扱っていいのか分からず、放置します。アナニアのオッサンとインテリヤクザみたいなテルトロは諦めて帰りました。


 数日後、総督フェリクスは妻ドルシアを伴ってパウロを呼び出しました。


 ドルシアがパウロの話を聞きたいとおねだりしたのです。フェリクスは妻のご機嫌をとります。


 ここで、妻ドルシアについてプチ情報。ドルシアはヘロデ・アグリッパ一世の末娘。


 ヘロデとはローマ帝国によって任命されユダヤ人を治めた王家の名称です。


 父親アグリッパ一世は初期クリスチャンを虐待し、弟子ヨハネの兄弟ヤコブを処刑した男です。

 アグリッパ一世の兄弟、ヘロデ・アンテパスはパブテストのヨハネの首をはねました。

 

 こんなに二人が残虐なのは、祖父ヘロデ大王の血が流れているからです。


 ヘロデ大王は生まれたてのイエスを殺し損ね、キレまくってエルサレムの二歳以下の幼児を皆殺ししたとんでもない野郎です。言葉遣い注意⚠


 ですから、その血を受け継ぐドルシアは、パウロに興味津々だったわけです。イエスを殺しても、弟子を殺しても生き残っているナザレ人一派パウロを疫病だと思っていたのかもしれません。


 パウロはフェリクス総督と妻に何を話すのでしょうか?「義と自制と来るべき裁き」について大胆に語りました。


 パウロからキリストの復活について聞けると期待したフェリクスはビビります。

 

 パウロの話に良心が痛んだからです。パウロはドルシアとフェリクスの関係を知っていました。


 ドルシアは14歳の時にシリアの王と結婚。夫の性格に不満を持っている頃、フェリクスに唆されて離婚。16歳でフェリクスの第三婦人になります。


 フェリクスはもとは、皇帝一家の奴隷でした。しかし、クラウディウス帝により兄のパラスと共に解放されます。兄は性格も良く、頭もキレたのでしょう。皇帝のお気に入りで重役です。フェリクスは兄のおかげで総督の職を得ました。しかし、美人が大好き。しかもエッチも大好き。


「残虐で肉欲を満たすことなら何でも行い、奴隷根性を丸出しにして王の権力をふるった人物」と歴史家にディスられています。


 ピチピチ美人のドルシアとのエッチと、ヘロデ家の権力が欲しかったのでしょう。


 フェリクスは、性欲をコントロール出来ない下半身暴走男だと暴露され、神の義の規準に外れているので、裁きを受けて滅びるのだと怯えたのです。


 ここで、悔い改めて生き方を変化させれば良かったのに、お金にも貪欲でした。


 パウロを何度も呼び出し、解放する代わりに賄賂を要求します。パウロが仲間に声をかければ、寄付金が集まるとでも思ったのでしょう。


 その点、ドルシアは根っからの悪人なのか、パウロの話を聞いても動じません。ヘロデ家最強。


 フェリクスは妻の機嫌を取るために、パウロを二年間も囚人として拘禁しました。


 総督フェリクスの支配は、人格と同じで腐敗したものとなり、ユダヤ人の反発を買い、皇帝ネロの時に罷免されます。また兄のおかげで、処刑は免れます。この人の人生……なんか残念。囚人だったのはフェリクスの方だったのかもしれませんね。


 

 二年後、代わりにポルキオ・フェストが総督としてあとを継ぎます。


 この二年間、パウロはどんな思いで忍耐したのでしょう。ルカや仲間はパウロに会うことを許され、パウロから手紙を預かり各会衆に届けます。


 パウロは軟禁状態の間も、仲間の事を励まし続けたのです。


 フェストが総督に着任して三日後、事態が変わります。パウロどうなる?がんばれー!


 


 

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