第190話 パウロ 群衆とサンヘドリンへの弁明

「兄弟たち、父たちよ!私の弁明をぜひ聞いてください。私はユダヤ人でキリキアのタルソス生まれですが、この都でガマリエルから直接教えられました。先祖の律法について厳格な教えを受けており、今の皆さんと同じように神に対して熱心です」


 ヘブライ語で話すパウロ。群衆は静まり耳を傾けます。そしてサウロ時代、クリスチャンを迫害してきたこと、ダマスカスに行く途中、復活したイエスに声をかけられた事を話します。


 そしてイエスから、遠く異国の地まで伝道するよう命じられた事を話しました。自分は罪になるような事を何もしていないと、弁明をします。


 静かに聞いていた群衆がざわめきます。ローマ兵はヘブライ語が分からないので、パウロが何を言って群衆を怒らせているのか戸惑います。


「こんな男は地上から消してしまえ!生きている価値などないのだ!」


 群衆はパウロに向かって自分の外衣や、土を放り投げます。わめきたて怒りながら投げつけるのです。


 異国に行く事を責めているのではありません。ユダヤ人にとって、いきなりクリスチャンになる事が許せないのです。まずモーセの律法に従うユダヤ教に改宗するべきだと怒っているのです。


 ユダヤ人はパウロの弁明を認めません。


 軍司令官は、なぜパウロがここまで憎まれるのか取り調べるために兵営に連れていきます。


 取り調べ……口を割らせる為の拷問です。タバコとカツ丼無し。


 パウロはムチ打ち。背中をめくられ、両手両足を固定されました。パウロは冷静な男、ゆっくり口を開きます。


「有罪宣告を受けていないローマ市民をムチ打ってもいいのですか?」


 百人隊長はビックリ‼ 先に言ってよ(怒) 慌てて千人隊長軍司令官に報告します。


 軍司令官クラウディウス・ルシアスもお決まりの台詞「もう、先に言ってよ~‼鎖で縛っちゃったよ。もしムチ打ってたら俺が死刑になるところだったよ!勘弁してよ!」(怒)

 

 パウロの所に急いで行き、「私はローマ市民権をたくさんのお金で買ったがお前は?」と質問します。賄賂いくらで手に入れたのか知りたいのです。


「私は生まれながらのローマ市民です」ドヤ。


 簡単に言うと、これが目に入らぬかの葵の御門と同じです。パウロは由緒正しきお坊っちゃま。


 軍司令官は、次の日、パウロを解放し祭司長たちとサンヘドリンの前で弁明させます。


 ユダヤ最高議会で有罪か無罪かを決めてもらいたいのです。軍司令官はその様子を見守っていました。


「兄弟たち、父たちよ、私は今日まで、神の前で良心に全くやましいところなく行動してきました」

 パウロが弁明を始めます。大祭司アナニアがこの言葉にプッツン。パウロの口を打つように命じます。これ以上話すなという事です。これにパウロはカチン。


「白く塗った壁よ!あなたは神に打たれます!律法に従って私を裁くために座っていながら、私を打つように命じて律法を破るのですか」


 大祭司をいきなり侮辱。近くの議員がパウロに怒ります。パウロは素直に謝ります。パウロは視力が弱く大祭司だということに気がつかなかったのです。タスキかバッジつけときなさいよ!


 パウロは敬意を示し、冷静な態度で……戦法をかえます。これ以上自分の弁明をストレートにしても埒があかない。パウロは議員の一部がサドカイ派、残りがパリサイ派だということに気がつきました。パウロも以前はサンヘドリンの議員です。同僚もいたことでしょう。おっさんだけど。


「皆さん、私はパリサイ派でパリサイ派の人の子です。死者の復活の希望に関して裁かれているのです!」


 死者の復活の希望。パウロお見事、嘘は言っていません。イエスの復活と復活したイエスについて宣教したら捕まったんですもの。


 復活したイエスに信仰を持つなら希望があると宣教してきたんですよね。


 この言葉を聞いたパリサイ派は、

「この人に全く悪い所はない。目に見えない天使か聖霊が彼に話したのかもしれない」


 パウロの味方になります。パリサイ派は、死後の魂や天使や悪魔の存在を信じています。パウロはパリサイ派の教えの共通点を巧みに強調したのです。


 パウロの投げ込んだ爆弾発言で、パリサイ派とサドカイ派は論争。サドカイ派は死後の命も天使の存在も信じていません。


 パウロの作戦成功。サンヘドリンは二つに別れて言い争い。軍司令官はパウロが巻き込まれないようにまたしても兵営に避難させます。


 パウロは賢い。冷静沈着。何度も命の危険を感じながら、それでもイエスの復活を証し出来ました。


 お疲れ様。しかしまだ命を狙われています。

 パウロがんばれー!

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