第169話 マタイ 山上の垂訓 Ⅱ

 マタイによる書の六章をお伝えする前に、この当時の宗教的背景について、少し触れておきますね。

 もちろん、イエスは宣教期間中ですから、まだキリスト教は確立していませんでした。ですから、ほとんどのイスラエル国民はユダヤ教徒です。ユダヤ人の主要な一派がパリサイ派と呼ばれます。


 「分ける」を語源にしたパリサイ派は、旧約聖書に書かれた律法を厳密に行い、伝統を守る中流階級の人達でした。規則で一般市民縛る嫌な感じのオッサン連中です。伝統を守らないと裁きまくる迷惑なオッサン連中です。


 額と左腕に小さな聖句入れの箱を付ける事を習慣にしていました。この格好をしたユダヤ人が、昔、日本の山奥にいたそうです。笑


 背が高く、頭に黒い箱を付けたこの外国人にビックリ仰天の日本人は……天狗と呼びました。


 聖書の巻物をトーラーと言います。ここから虎の巻きという言葉が誕生。諸説あり。


 そしてパリサイ派の人以外にサドカイ派と呼ばれる人達もいました。貴族出身の裕福なオッサン連中です。彼らは祭司長や大祭司など権力のある地位についていました。目立つことが大好きなオッサン連中です。


 パリサイ派とサドカイ派は仲良くありません。しかし、このオッサン連中はイエスが大嫌いです。イエスはこの六章で、彼らを偽善者と呼びます。偽善者とはギリシャ語でヒュポクテース。大きな仮面を付けた舞台俳優を意味し、嘘や見せ掛けで本当の自分を隠し、いつも自分の評判を気にしている人の事を指します。


 オッサン連中はどんな事をして自分達を良く見せていたのでしょう!善行として奨励されていた、施し、祈り、断食です。隠れてするのではなく、人に誉められ尊敬される為にやっていました。


「あなた動機が不純なんだわ♪」百恵ちゃん(怒)。


「あなたは施しをするとき、右の手がしていることが、左の手に知られないようにしなさい!」

 そうです。現代に当てはめるなら、妻は自分の善行を夫にも話してはなりません。必ず隠れてやった事でも、神様は見ていて下さるのです。


 祈りも断食も隠れてやんなさい!オッサン。


 そしてイエスは、ご自分の弟子に、祈り方を教えられました。まず、神様のお名前が神聖になること、王国が来ること、神様のご意志がなされる事、罪の許しを請願し、個人の願いを祈るスタイルです。いきなり、「宝くじが当たりますように」と祈ると怒られます。残念。


 そして、六章の後半では物質主義に陥らないように諭しが与えられます。

「自分の為に地上に宝を蓄えてはなりません。そこでは蛾や錆が蝕み、泥棒が入って盗みます。むしろ天に宝を蓄えなさい!あなたの宝のあるところ、そこに心もあるのです」

 

 目に見える宝ではなく、徳を積む、神様の喜ばれる事をして天に宝蓄えなさいという事ですね。


 一日一膳の満足感は、一日千円貯金箱に入れるより価値があるという感じでしょうか。


「神と富との奴隷にはなれません!それで何を食べ、何を飲むのだろうか?と自分の命の事で、また何を着るのだろうかと自分の体の事で心配するのをやめなさい!命は食物より、体は衣服より大切ではありませんか?鳥をよく観察しなさい!種を蒔いたり、刈り取ったり、倉に集め入れたりはしません!それでも天の父は鳥を養っています。あなたたちは、それよりも価値があるのではありませんか!」


 ……、……。えっ、めちゃめちゃ大晦日とお正月に何を食べ、何を飲むのか考え中です。コートも欲しいなぁ。あっダウンを買わなきゃ。


 ブー、イエスは頭の中が、生活の思い煩いによって振り回されないようにと教えています。


 神様に対する感謝を忘れて、物質主義に陥らないようにとの警告ですね。年末年始ヤバそう。


「それで、次の日の事を決して心配してはなりません。次の日には次の日で心配する事があります。その日の問題はその日だけで十分です!」


 この言葉で六章はおしまいです。


「明日は明日の風が吹く」っておおらな気持ちでいないといけませんね。「来年の事を言えば鬼が笑う」って言葉も思い出しました。


 イエスは明日の事すら心配するなとおっしゃいました。マタイはきっと大きく頷いたでしょう。


 こちとら、お米や、トイレットぺーバーの小さな事から、夫の定年後の心配、老後の不安、年金の問題、墓はどうするかなど心配だらけです。


 イエスの弟子たちは、一切の物を後にして従ったのですから……すごいです。特にマタイは職場からそのまま弟子です。退職届けはいらない。


 次回、七章です。


 


 




 

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