第163話 エレミヤ 哀歌

 哀歌とは、亡くなった友や、荒廃させられた国民のために、哀悼の気持ちを込めて作った歌の事です。エレミヤは40年以上預言者として忠実に働きました。その終わりの時期の作品です。


 エレミヤは哀歌を、まだ記憶が生々しい滅びのすぐあとに書きました。今日は特別にエレミヤさんに哀歌について語ってもらいたいと思います。


ハナス 「今日は、お忙しいのにインタビューに応じて下さりありがとうございます。あなたの預言者としての働きはすでにお伝え致しました。是非、哀歌について教えて頂けますか?」


エレミヤ「お招きありがとうございます。この哀歌は五章から構成されています。書いたのは、エルサレムが陥落してすぐです。哀しくて、辛くて、誰かに気持ちを打ち明けたかったのです」


ハナス 「そうでしたね。私もある程度哀歌について調べてきました。たった五章に多くの技巧が凝らしてあって素晴らしいです。エレミヤさんはとても繊細な方だと伺ってましたが、この書にも表れていて感服しました。まず、「ああ……とは!」これはヘブライ語ではエーカーという語ですね。私の大好きなダビデもヨナタンの死を悼み書いた弓の歌で使っていました」


エレミヤ「そうです。この「ああ」が書名になりました。この言葉以外他に思い付きません」


ハナス 「あと、アルファベット歌になってるのも素敵です。アクロティクですね。詩編でもよく見かけます。一章、二章、四章がこのヘブライ語のアルファベットの別々の22文字で始まるのですね。日本で言うと、「いろは」です。ですから三章以外は全て22節なんですね。几帳面ですね」


エレミヤ「そこ、触れてくれてありがとうございます。アーレフ、ベート、ギメル、ダーレトって知ってますか?」


ハナス 「ごっごめんなさい。スイヘー、リーべボクノフネなら、聞いた事がありますが、ヘブライ語はちょっと。犬も歩けば棒に当たるみたいに覚えやすい構成ですね」


エレミヤ「そうです。私はエルサレムの滅びから是非教訓を得て欲しくて、子供が暗唱出来るようにしたんです。三章は66節あります。三行詩の三倍です!」


ハナス 「あと、キアズムと呼ばれる、交差対句法も使ってますね。同義対句法より難しいと思いますが、さすがエレミヤさん。表現される思想がたすき掛けのように配置されていて感動します」


エレミヤ「これはイザヤの55:8節を参考にした手法です。『我が思いは、あなた方の思いとは異なり、あなた方の道は、我が道と異なっている』

見事に交差対句でしょ。たすき掛けですね」


ハナス「エレミヤさんの口からタスキっ。笑

けどこれ、私も詩を書くときに使いたいと思います。あとあなたのスゴい所は、一章は民をテーマにし、二章は神、三章は自分の気持ち、四章で神、、五章でまた民をテーマにして、ここにも大掛かりな交差を持って来てますね。やりますね。演歌の作詞に使いたいと思います」


エレミヤ「ハナスさんは私の哀歌で何か印象に残った箇所ありますか?」


ハナス 「あります!あります。では今度は技法から文面の感動した所についてお話をしたいと思います。少し休憩しましょうか」


 ちょっとコーヒータイムの時間です。次回エレミヤの哀歌の好きな詩を独断と偏見でお伝え致します。

 

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