第162話 エレミヤ 新しい契約
バビロンの地で、ユダ国民は何を思っていたのでしょうか?反抗者はバビロンに入る道中、処刑されていました。
今、この地にいる多くの者は、ダニエルと三人の友のように、有能な者ばかりです。
エレミヤの語り記した預言を思い起こし、何度もその成就を願ったに違いありません。
「私がイスラエル国民および、ユダ国民と新しい契約を結ぶ時が来る。その契約は私が彼らの父祖たちの手を取ってエジプトから連れ出した日に、その父祖たちと結んだ契約のようなものではない。その時、私はダビデのために正しい芽を芽生えさせ、その者はこの土地で公正に裁き、正しい事を行う」31:31~32
新しい契約をイスラエル国民と結ぶという約束です。整理しましょう。新しいものがあれば、古い契約もありますね。では、古いとは何の事でしょう。モーセを指導者として、エジプトから救出した時、シナイ山で交わした神と民との契約です。
「モーセの十戒」です。石の書き板に神が自ら書いたものです。モーセの律法に従い続けるなら、イスラエル国民は神の民として平和を保証されていました。しかし、破ったので、バビロン捕囚です。
しかし、神はまた新しい契約を結ぶと言われました。契約を結ぶ時には仲介者が必要です。
古い契約はモーセが仲介者です。では、新しい契約の仲介者は誰でしょうか?
ヒントはダビデから出る新しい芽です。ダビデの家系から出るのです。
もうお分かりですね。公正に裁き、正しい事を行う者は……メシアです。
イスラエル国民は神との関係を修復するために、神の油注がれた者、メシアに希望を持ちました。この仲介者を見つけて、信仰を持つなら、神の子として生きる事が出来るのです。
この新しい契約は石の書き板ではなく、心の書き板に記されます。バビロン捕囚中、親は子供に、子供は孫に口頭で伝え続けた事でしょう。
では、そのメシアは誰?イエス・キリストです。
メシア誕生以降に書かれた、マタイ伝からを新約聖書と呼ぶ理由もこの事からです。
それ以前を旧約聖書と呼びます。
話がそれました。神の約束通りバビロン捕囚から70年後、ユダ国民はエルサレムに帰還しました。メデタシ、メデタシ。
あっ、一番大切な事を忘れていました。エレミヤごめんね。あなたは陥落後どうなったのかしら?ずっと拘禁されてましたもの、大丈夫でしたか?
エレミヤを拘禁していたのは、ユダの王ゼデキヤと側近の者です。ゼデキヤのおっさん、目をえぐられて連れていかれましたけど。
なっ、なんと、征服者バビロニア人がエレミヤの拘禁を解き自由にしました。
その後、バビロンに連れて行かれると思いきや、ユダの地に残った者達がエレミヤを無理矢理エジプトに連れて逃げます。
ネブカドネザル君が総督に任じたゲダリヤを、暗殺したのです。ネブカドネザル君に対する反抗です。
エレミヤは、バビロンの王を恐れるなと何度も民を励ましたのですが、ダメでした。そして、エジプトもバビロンに征服されると預言したエレミヤを、連れて逃げるのです。バカです。
「ある人たちは、死に至る病気にかかり、ある人たちは、捕らわれ、ある人たちは、剣で討たれる」43:11
エジプトに逃げても、剣と飢餓と疫病によって処罰されると預言します。
もう精神錯乱状態のユダの民。バビロンに連れて行かれるのも嫌、ユダに残っても餓死。エジプトに逃げても殺される。
ここまで来ると、自業自得です。悔い改めて神のもとに素直に戻っていれば良かったのに。エレミヤの警告に留意して、神様に謝れば良かったのに。エレミヤがあんなに泣いたんですけどね。
人はパニックになり、思考能力低下すると、その元凶となるものを壊そうとしますね。
エレミヤはエジプトに連れて行かれても、最期まで忠実に神に仕え、語れと言うことを語りました。エレミヤよく頑張りました。
聖書にはエレミヤの最期は記されていません。
伝承によると、エジプトでユダの民に殺されました。石打ちです。処刑です。よっぽど自分達の死を預言するエレミヤが憎かったのでしょう。
生まれる前から預言者として選ばれ、殉教するまで任務を全うしました。
ユダの霊的退廃を嘆き、泣き落胆し、けれど神を信じて忠誠を保った預言者エレミヤお疲れ様でした。
エレミヤ書は預言の言葉と、民の反応といった出来事が記されています。
次回から、エレミヤの心情が分かる「エレミヤの哀歌」をご紹介致します。
エレミヤの遺書のようで、泣けます。
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