第85話 ヨセフ 正体を明かす
ヨセフの家の宴の間に通された兄弟達は、長男から一番下の弟まで年齢順に席に座らされた。
ヨセフがそうしたので、兄弟たちは驚いて顔を見合わせます。12年の歳月が経っていても、ヨセフには分かったのです。
一方兄たちは、目の前にいる人物が弟だとは全く気づきません。そりゃあそうでしょ!奴隷として売った弟がエジプトの高官になってるなんて考えもしない事でしょう。
ヨセフはベニヤミンの食事だけみんなの5倍にして与えます。露骨すぎる。
兄弟たちは、お腹いっぱいになった御礼をして朝、明るくなってから出発しました。
ヨセフは兄たちへの最後のテストとして、夜のうちに罠を仕掛けていました。
「あの人たちの袋に、持っていけるだけの食糧をいっぱいに入れ、各人のお金をそれぞれの袋の口の所に入れておきなさい。そして一番下の人の袋の中には、穀物の代金と一緒に、私の銀の杯を必ず入れておきなさい」44:1~2
そうです。ベニヤミンを盗人に仕立て上げ、兄たちの反応を見たかったのです。そこまで兄たちの本性を知りたかったヨセフ。かなり深い人間不信です。かわいそうに。
管理人に呼び戻された兄弟達にヨセフはこう言います。
「杯を持っていた人だけが私の奴隷となる。他の人には何もしない。父親の所に帰りなさい」44:17
ベニヤミンの袋から見っかった銀の杯。犯人は弟のベニヤミン。――兄弟たちはどうする?
ユダがヨセフに近づきました。
「お願いです。ご主人様。どうか一言申し上げさせて下さい。――私が弟の代わりに奴隷として残りますので、弟は兄たちと一緒に帰れるようにしていただけないでしょうか。弟を連れずに父の所に帰ることなど、どうしてできるでしょうか。父が苦しむ姿は見るに堪えません」44:18~34抜粋
あのユダです。ヨセフを奴隷としてイシュマエル人に売り飛ばそうと口火を切ったユダ兄の言葉です。人間変われば変わるもの。
ユダはベニヤミンとベニヤミンを愛する父親ヤコブの事を思いやってヨセフに哀願しているのです。心を入れ替えたことは明白でした。
「全員、席を外しなさい」ヨセフは自分の家の者を部屋から出し、自分と兄弟たちだけにします。
――ついにヨセフは自分の事を明かし、声を上げて泣き出しました。家中のエジプト人に泣き声が聞こえます。びっくりしたことでしょう。
「私はヨセフです。……どうぞ、そばに来てください」気が動転している兄たちは無言です。
「私は弟のヨセフです。皆さんは私をエジプトに売りました。しかし、今は私を売ったことで、心を痛めたり、互いに責め合ったりはしないで下さい。皆さんが生き続けられるよう、神が私を先に遣わしたのです」45:1~5
ポジティブです。ヨセフは超イケメン。自分を殺そうとし、奴隷として売った兄たちに対する恨みの言葉が微塵もありません。
ヨセフ、あなた思い出してごらん、あんなこと、こんなことあったでしょう。
ポテパルの奥さんの色仕掛け拒否による投獄。
暗くて汚い牢獄の2年間。何より愛するお父さんとの生き別れ。恨んでもいいんだよ。(私なら爆弾作ってますけどね)
目を白黒させているであろう兄弟達に、ヨセフはさらに言葉を続けます。兄たち、心して聞け!
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