第72話 エステル 王の金の笏

 エステルは自分の民を救うべく、アハシュエロス王のいる宮殿に向かいました。

 中庭を通って大広間に足を進めます。30日以上王の寵愛を受けていないので、ドキドキしていた事でしょう。自分に逆らったワシテを退位させる非情な王です。正妻といえども気に入らなければ何をされるかわかりません。


 エステルは王座に座るアハシュエロスだけを見つめて近づきました。表情を読みとるために必死だったでしょう。


 アハシュエロス王は驚いてエステルを見つめ返しました。この場に招いてないのですから。王のすぐ近くにいたハマンも驚いた事でしょう。


 しかし、エステルを見るとアハシュエロス王は穏やかな表情になり、エステルに金の笏を差しのべました。王はエステルを愛していたのです。

「王妃エステルよ、どうしたのか。あなたの願いは何か?」5:3

――許された。エステルはほっと胸を撫で下ろします。処刑は免れました。エステルは感謝して手を伸ばし笏の先に触れます。話す機会を与えられたのです。ハマンの策略を暴露出来るのです。


 エステルは考えました。高官達の前ですべてを打ち明けるなら王に恥を書かせるかもしれない。もしかしたらハマンが反論するかもしれない。今は話すべき時ではない‼


「もし、王にとって確かに良いと思われるのでしたら、私が王の為に設けました宴会に今日、ハマンと一緒においでになりますように」5:4


エステルは何と賢い女性なのでしょう。夫の尊厳を重んじる可愛い妻です。アハシュエロス王は喜んで承諾しました。


 エステルは宴会を王の好みに合わせて準備しました。美味しい料理とぶどう酒で上機嫌になったアハシュエロス王は、エステルに王国の半分をあげると約束します。(調子のいい社長か!)


 エステルはその日には心配事を打ち明けませんでした。もう一度、夫に敬意を示す機会を求めて翌日にも宴会を設けます。勿論、ハマンも招待します。(こやつ呼ばなきゃ話にならない)


ハマンは大喜びで帰ります。王様と王妃の宴会に招待されたのは自分だけですから。しかし、門の所でモルデカイにあってしまいます。


 モルデカイ、ガン無視。ハマン激おこ‼

家に着くと妻と友人に愚痴ります。友人はキレるハマンにある提案をします。悪党の友は悪党。


「高さ22メートルの杭を用意し、それにモルデカイを掛ける許可を王さまに求めるように」5:12


ハマンは単純なのか、その提案が気に入り本当に高さ22メートルの杭を造ります。


 明日の宴会を楽しむために、モルデカイを先に処刑しようとしたのでしょう。遠足前日の子供のようにワクワクして眠れなかった事でしょう。



 不思議な事に宮殿のアハシュエロス王もその夜はなかなか寝付けませんでした。


 何故?      神様が介入するからです。

 次回お楽しみに。

 


 

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