第32話 ぺテロ イエスを否認する

「今夜、おんどりが鳴く前に、あなたは三度私の事を否認するでしょう」イエスがぺテロに言ったこの預言の言葉は、有名だ。

 少し前、イエスは、弟子たちが皆イエスを見捨てる事を予告された。しかしぺテロは、たとえ死ぬことになってもイエスから離れたりはしない、他の皆があなたを見捨てる事があっても、私は決して否認したりしませんと豪語していた。

 

 その時のイエスの預言はどうなるでしょう?


 地上で過ごされる最後の晩、イエスはゲッセマネと呼ばれる園で、ぺテロとヤコブとヨハネと共に祈っておられた。

 そこへ来ました。さあ誰が?イエスを捕まえるために、祭司長と民の年長者、あと群衆が剣とこん棒を持ってやって来た。

 そして、あの裏切り者ユダがイエスに口づけする。月明かりの下、はっきりとこれがイエスだと教えるためだ。(ユダ、あんた、金に目が眩んだね?銀貨30枚で師を売るとは地獄行きだ!) 結局、 罪の重さに耐えられず、自殺。

 

 イエスと分かると、大祭司の奴隷が拘引する。その時、ぺテロは携えていた剣を抜いて、奴隷に撃ちかかる。右の耳切り落とす。(痛いよね?中途半端な仕事だよ、ぺテロ)


  イエスは直ぐに奴隷の耳を癒し、「あなたの剣を元の所に納めなさい。すべて剣を取る者は剣によって滅びるのです」とぺテロに言われた。『右の頬を打たれたら、左の頬を出しなさい!』『人を7回ではなく、77回許しなさい!』と教えてもらったよね?

 まあ、御主人様を守るための手段です。一緒に拘引されるから……拘引されるから……拘引されないんですね……なんてこったい。弟子たちはみな、イエスを捨てて逃げて行った。ぺテロも逃げた。あれだけ豪語してたのにね。


 一方、イエスは大祭司カヤファの所に連れて行かれ、最高法廷サンヘドリンにおいて、死に処する為の偽証を探されていた。

 その様子は中庭で見ることが出来た。カヤファの家の従者達、群衆が集まる。夜中なので火が炊かれている。逃げたぺテロは群衆に隠れて後をついてきた。気になるよね?やっぱり。


 イエスはというと、神を冒涜したとされ、顔に唾をかけられ、こぶしで殴られていた。

 ぺテロはその光景をどんな思いで見ていたのかな?中庭に座っていると、火の明かりでぺテロに気づいた下女に、「あなたも、ガリラヤ人のイエスと一緒にいました!」と指摘される。

 ぺテロは「あなたが何の事を話しているのか私には分からない」と1度目の否認をする。

 門舎の近くで別の下女に気づかれると、「私はその人を知らない!」と2度目の否認。

 今度はとどめだ。右の耳切り落とした奴隷の親族に見つかり、3度目の否認。


 その言葉のすぐ後、おんどりが鳴く。その様子をバルコニーに引き出されたイエスに見られていました。しかも、目があった。ぺテロは惨めな気持ちと、否認してしまった苦しみで外に出て、そこでくずおれて、激しく泣きます。

 

 自分は許されない罪を犯した!でも弟子たち仲間も逃げた。いや、否認はしていない。夜明けと共に苦しんだね。その日の晩に処刑されたイエスの最期に苦しみを与えたね。


 私がぺテロなら耐えられない。自責の念、後悔。自殺した方が楽かも……。

 この先、ぺテロは立ち直れるでしょうか?

 




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