第8話 ダビデ ヨナタンとの友情

 アガペー、ストルゲー、エロス、フィリア。

 聖書の中では基本的に愛がこの四つの言葉で表わされている。他人のために自分の命を差し出すような愛。家庭内に存在する自然の情愛。男女の愛。そして性的な含みが全くない円熟した男子、女子同士の友達の愛。


 ダビデとヨナタンはそうした互いに対する熱烈な友情(フィリア)で結ばれていた。


 ヨナタンはあのサウル王の息子。王位継承を欲することなく、ダビデを忠節に支持した。

 サウルが王として治世し始めた頃、ヨナタンはまだ二十代の若者だった。

 

 サウル王もその頃は慎み深く、神様に敬意を示す従順な人だった。ヨナタンは人格形成期に父親の良い影響を受けたので良い特質を培う。

 

 男の子は特に、父親の接し方が一生を左右する。三つ子の魂だ。ヨナタンは、父親に深く愛され、ずっと仲が良かった。


 ダビデがゴリアテを殺した直後に、ヨナタンはこの勇敢な若者に特別な愛情を抱く。

「ヨナタンの魂がダビデの魂と結びつき、ヨナタンは自分の魂のように彼を愛するようになった」サムエル第一18:1


 そして自分の服を脱いでダビデに着せ、剣や弓、帯を与える。千人戦士の司令官で弓の名手だったヨナタンは、ダビデの石投げに惚れたのかな。年の差は三十歳。現代、こんな友情ある⁉

 

 上司と部下は奇跡だ。俳優さん同士ならなくもない。熟年俳優が若手の演技に惚れる。相棒の杉下(水谷豊)さんと反町君? 独断です。


ヨナタンもダビデの人気に嫉妬し激怒していた父親に、槍を投げつけられている。それでもダビデの逃亡を助ける。愛している息子を殺そうとするサウルってどうなん? ヨナタンもショックだったでしょう。


 荒野でダビデと再会。「互いに口づけし、互いのために泣き出す」サムエル第一20:41


  ふたりの間にしか分からない胸の内を想像すると、もらい泣きしそうになる。


 そしてダビデ三十歳、ヨナタン六十歳の時、サウル王とヨナタンはフィリステア人との戦いで死ぬ。憎らしかったサウルよ、お疲れさま。


 鷲よりも速く、ライオンよりも力強い戦士ヨナタン、あなたの死は悼みます。


 ダビデは、ふたりを埋葬し、[弓]と題する哀歌を詠唱する。ヨナタンの死を深く嘆き、悲しみを表すダビデを抱き締めてあげたい。


「私の兄弟ヨナタン、私はあなたの事で苦しんでいる。あなたはわたしにとって非常に気持ちの良い人だった。あなたの愛は、わたしにとって女の愛より素晴らしかった」サム第2.1:17~27


少しエロスも入ってませんか? ないですね。失礼しました。


 男同士の深い友情にまた涙する。生きている間に、魂が結び付くほどの人に出会えたら幸せなんだろうな。一期一会の大切さをしみじみ感じる。ダビデは、男としてだけでなく、人間として魅力があり、誰からも愛された人。


ソウイウ モノニワタシモ ナリタイ


究極、アガペー愛を示せればいいのですが。


やっとダビデは、王様になる。がんばれー。



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