私の罪

私の罪

　制服を着た男に呼び止められた。どうやら私を捕まえようとしているらしい。

　何をバカな。私はただまっすぐ歩いていただけだ。目の前にあった柵（さく）をちょっとまたいだりはしたが…。

　足を上げるのを犯罪だとでも言うのだろうか。確かにちょっと短いスカートを履いているから、破廉恥（はれんち）な罪を犯したと言えなくもないが。

　男でスカート姿なら不審だ。声をかけるのも分かる。でも私はれっきとした女だ。上だってちゃんと着ている。青少年に悪影響を与える見た目はしていない。

　それならば、ここは立ち入り禁止区域か？いや違う。今だって私のすぐそばをスーツ姿の中年男性が通り過ぎた。何で私だけ捕まえようとするんだ。

　銃か？麻薬か？そんなもの生まれてこの方、手にしたことも直接目にしたこともない。

　ああ、この街は平和だ。犯罪なんて一件も起きていないんだろう。暇つぶしに重箱（じゅうばこ）の隅（すみ）をつつくような取り締まりを行っているに違いない。

　制服姿の男は神妙（しんみょう）な面持（おももち）で言った。

「お客さん、ダメですそんなことしちゃ」

　自動改札をまたいだのがバレた。ちっ…。……切符無くしちゃったんだよう…。