第2話 非常

 流行は止まなかった。

 七~九月になっても衰えない。

 道には人が無く、野良犬のみがうろついている。

 ここまでくると嘆きでは焦りが勝ってくる。

 理由は単純


 金がない。


 現在、道場内は籠城生活となっているわけだが、籠城にも金がかかる。米も必要だ。意外と何かと入り用なのだ。

 その工面は歳三がしていた。

 日野宿ひのじゅく佐藤彦五郎さとうひこごろうという義理の兄に


「色々ちょーだい♡」


 と何度も使いパシリを走らせては金銭他のやりくりをしていた。

 にも限界がある。

 ヒモ生活は体面的にもよくない。人を鍛え上げる道場が他人に頼りっぱなしなどマヌケを絵にかいたような話だ。


 十月に入ってようやくコレラは衰えを見せた。

 しかし、現実は非常である。


「・・・ダメだ、トシ。戻って来ねぇ・・・」


 閑古鳥が鳴いている。門人が戻ってこないのである。

 そもそも門人といっても全員が全員、立派な侍たちではなかった。

 侍は一握り、あとは有象無象の集団であったのだから、コレラ流行を機に彼らはを失ってしまったのだ。


 こうなっては打つ手がない。


 秋から冬へと時が動いても光明が見えずにいた道場一派あったが、一人の男が持ってきた情報が彼らの未来を変えることになる。



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幕末を斬る ダメ人間 @dameningen

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