第28話 「ある意味でこいつらはマジックマッシュルーム」
「アハハハハハハハハハハハハハハ‼ アーハッハッハッハッハ‼」
突然作業員の一人が奇怪な声をあげて、大声で笑い始めた。
「お、おい‼ どうした‼」
「大丈夫か⁉」
仲間の作業員や親方が、その作業員の元へ駆けつける。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ‼ ウヒ、ウヒョウヒョ――――‼」
なおも作業員は狂ったかのように笑い続けている。
「まさか……椎菜お前……」
「はい。ヤバそうだなと思ったのでちょっと菌力を使っていただきました」
あのサインはやっぱりそういうことだったのか。何ということをしてくれたんだ、と思ったがどうせこのままじゃ話し合いによる解決は望めない。むしろこれは好機か?
「笑いが止まらないあの作業員には申し訳ないが……椎菜よくやったぞ。これはチャンスかもしれん」
おぞましい菌力のお蔭でこの状況の打開策をひらめいた。
とりあえず、あの作業員のところへ向かおう。
「大丈夫ですか~!」
心配そうなふりをして声をかけながら走り寄る。
「大丈夫じゃねぇよ‼ おいおいどうなってんだこりゃ!」
親方は俺たちの姿をみとめると不安そうな表情で言葉を発した。
「あ~あ~やっぱりこうなった。だから伐採なんて許可しなかったのに」
「何⁉ おい、やっぱりってどういうことだよ‼」
親方がにじり寄ってくる。きっと部下の事を本当に大事に思っているのだろう。いい上司だ。
「親方、実はこの森呪われてるんですよ」
「……呪われてる?」
「ええ。よくよく考えてみてください。これだけの広大な土地が今までずっと遊ばされていた、ってそもそも不自然じゃないですか?」
「むむ……確かに……」
「この土地は使わなかったのではなく、使えなかったのですよ。ほら、このように土地を傷つける者が軒並み呪われてしまうから」
次の俺の発言を予想してのことだろう。椎菜が隣でまたもやごそごそと動いた。
「だからもしこのままここにいたら、皆さん全員おかしくなっちゃうかもしれませんよ?」
そう言い終わるかどうかというタイミングで、笑い続ける作業員を介抱していた同僚たちが、同様に笑い始めたり、酔っぱらったかのようにふらふらと動き始めた。何この地獄絵図。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ‼」
「うぇ~にゃんでさいきんのでんしれんじは、チ~ンっていわにゃいんだろ~。れんじでチンじゃなくて~れんじでたらららたらららたらららら~♪」
「オホホホホホホホホ! オ~ッホッホッホッホッホッホ!」
最後の男の人、絶対あっち入ってるだろ。
「な、何だこれは! 何がどうなってんだい⁉」
親方が一人慌て始める。
「早く病院に連れて行った方が良いと思いますよ。もしかしたら一生このままかも……」
一生という言葉に焦ったのか、親方は携帯を取り出し救急車を呼び始めた。
「……よし。とりあえずもう大丈夫だろ。下手に怪しまれないうちに撤退しよう」
「はい」
「う、うん!」
そういえば舞、お前いたんだったな。
「よし、それじゃ舞はきのこフォルムのきの娘達を連れてちょっと遠回りしてから集会所に戻ってきてくれ。見られるとマズいから」
「了解だよ!」
そういって舞は走り始めた。
「私たちも急いでここを立ち去りましょう」
「ああ」
そして俺達も舞とは別の方向に走り出す。
伐採が行われていた場所に背を向け走り出した俺達には、被害者たちのあげる不気味な声と親方の悲痛な叫び、それといまだ音の遠いサイレンだけが届いていた。
とりあえず、今日のところは何とかなったみたいだな。
集会所に戻ったら明日以降のことについて話し合わなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます