ふとん

@bobbob

第1話

私は、布団の中にいる。


ここからは出られない。


いや、出られるのだろうけど、出る意思がないんだろう。


引きこもりではない。


ただ時々、こうやって、自分と世界を遮断したい願望にかられる時がある。


そんな時は決まって、布団を頭から被る。


もぐってもぐって、


足元から見えてくる光の先に、もしかしたら違う世界があるかもしれないけど

きっとそうではないことが分かるから、今まで行くことが出来なかった。


だけど、今日は行こうと思う。


「きっとステキなことがたくさんあるよ」

「早く出てきてね」

「みんな待ってるよ」


自分のためを思う家族の言葉が

この頃、槍のように突き刺さってくる。


分かってるよ、大丈夫だよ、別に、ちょっと休みたいだけなんだ。


頭から入り込む隙間から見える光が痛い。

それから逃れるように

私は、奥へ奥へともぐっていく。


足元から光が見える。


頭の上の光はもう見えない。


出口はあそこしかないのだ。


怖いけど、

私は思い切って光の先に飛び込んだ。



「おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」



私は泣いていた。

大きな、大きな声で。


痛みと、苦しみと、恐怖と

初めて感じる風や匂いを感じながら

無我夢中に泣いた。


よく見えなかったが、私の他にもう1人泣いている人がいた。


その人は、泣いているが、笑っているようにも思えた。


私は、なぜか、安らぎを覚えた。

この人がいるなら大丈夫。

温もりに包まれながら、安心して眠りに落ちた。


きっと、ステキなことが待っている。

そんな気がした。


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