宝箱

勝利だギューちゃん

第1話

人はいつか大人になる。

そして、大人になれば忘れてしまう。


自分が子どもだったころを・・・


僕も例外ではない。

子供の頃の記憶なんて、大人になれば薄れてしまう。


そして、今の記憶も・・・

何年かすれば、薄れる。


しかし、それは完全になくなるのではなく、心の中の宝箱に大事にしまわれる。

滅多に開く事はないが、神様の気まぐれで、希に開く時がある。


その瞬間に、思い出が蘇ってくる。

そう、いともあっけなく・・・


    (やあ、久しぶりだね)

    (ああ)

    (私の事、思い出してくれた?)

    (たった今ね)

    (それでも、嬉しいよ)

    (おてんばだったよね)

    (君は、泣き虫だったよね)

    (子供の頃は、男女の差はないだろ?)

    (確かにね。今いくつ?)

    (高2の17歳だよ。君は?)

    (私は、君の思い出の中の存在だから、あの頃のままだよ)

     (そっか・・・)

    感慨深くなる。


     (どうする?)

     (何が?)

     (今の私に会いたい?)

     (いや、いいよ)

     (どうして?)

     (君は、思い出として、閉まっておきたい)

     (わかったわ。じぁあ、また気が向いたら、開けてね)

     (うん)


こうして、心の中の宝箱は、再び閉じる。

今度は、鍵を開けておこう。


そして、この鍵は、墓場まで持っていく。


誰にも、開けられないように・・・ 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宝箱 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る