不在着信 20:27 後輩ちゃん

 5件目。

 それは学校の後輩からのものだった。

 天真爛漫でどこか抜けている。健気だけど天然が強すぎて、なんとも憎めない性格をしている人物なのだが、立て続けに入っている留守電のトリを飾る人物としては、その予測不可能さが返って私の恐怖を煽った。

 恐る恐る、しかし勢い任せに再生した。


『あれ?先輩、電話出てくれないなんて珍しいですねぇ。あ!ひょっとしてデート?デートですかぁ?いやぁ〜だったらごめんなさい!変なタイミングで電話かけちゃいましたね!て・へ!!ってー!先輩彼氏いないじゃないですか!!』


 あざとい上に間の悪い“てへ”。雑なノリツッコミ。

 尚も音声は続く。


『……じゃなくって!先輩今日誕生日じゃないですかぁ!なので今日はサ……え?これ言っちゃいけないんですか?あ、そっかごめんなさい』



 どうやら電話口の向こう側には、後輩ちゃんの他にも何人かの人がいるらしい。留守電メッセージを吹き込んでいる最中だというのに、後輩ちゃんは何やら向こうの人達とやり取りをしている様子だ。

 そして最後に、


『先輩ごめんなさい、やっぱなんでもないです!あんまり寄り道せずに帰ってきてくださーい!それだけでーす!』


 ここでメッセージは切れた。

「のどかか!!!」

 期待を裏切らない阿呆っぷり。

 一連の留守電に比べてものすごく緊張感に欠けるメッセージだ。

 まぁ、誕生日を言祝いでくれる健気な後輩を、この焦燥の捌け口にしてはいけない。私は気持ちを落ち着かせ、冷静に留守番電話サービスから接続を切った。ちょっと強めに画面をタップしたのは、ただ走ってるせいで勢いがついてしまったからだ。それだけだ。

「────って、あれ!?」

 そこで、私は知らぬ間に新しい着信が入っていたことに気がついた。

 しかも不在着信になっている。

 留守番メッセージが残されていて、

 相手は、

「────お姉ちゃんだ」

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