不在着信 19:47 非通知

『─────────────────────────────────────────────────────────、

──────オマエノ、カタワレハ、アズカッタ。ハヤク、イエニ、モドレ』

「ひっ………!?」

 温度を感じない機械的な声。抑揚のない淡々とした喋り方。文節ごとにぶつ切りにされた言葉は、私の言語野にバラバラに谺して、意味を捉えるのに暫く時間を要した。

 やっぱり、何かあったんだ。

 確信めいた何かを掴んだ気がする。ただ、何かの正体は依然不明のまま。

 反射的に通話を終了させていた私は、居ても立っても居られずその場を離れた。

                 ◇

 早歩きはいつのまにか小走りになっていた。背中を這い上がってくるような怖気に対して、拮抗するよう身体が熱を生成している。雑貨屋と家のほぼ中間地点にある公園は既に遥か後方だ。

 急げ急げと脳が身体に鞭を打つ。

 私は続いて、次の留守電を聞くことにした。まだ残されたメッセージは4件もあるのだ。

 私が見つめる画面にあるのは、2件目の留守番電話の通知。

 非通知と表示されるそれを確かめるのには抵抗があった。

 しかし、もうそうも言っていられない。もう躊躇なんてしていられない。

 私は思い切って画面をタップした。




『──────オマエノ、カタワレハ、アズカッタ。ハヤク、イエ二、モドレ』

「もう!!なんなのこれ!!!?」

 不快な音声をこれ以上聞く気にもなれず、私はその留守電を即刻消去した。

 早くも息を切らし始めている私は、次いで3件目の留守電を再生する事に。

 このままの勢いで、全部聞いてしまおう。

 私を、私達を振り回す“何か”の全貌は、この5件の留守番電話に隠されているはずだ。

 留守番電話再生を宣言する自動音声のゆったりとしたトーンによって、余計に焦燥は掻き立てられる。それを押し殺すように地面を蹴った。

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