第10話

とりあえず庶務兼秘書兼議長の俺は会長様(笑)のご命令に従い議会を招集すべく招集状を作成し、議長ではあるが執行部側の人間である俺を除き実質的トップである副議長に伝えに行かねばならない。非常に憂鬱。

副議長は役員ではないが準役員のような扱いであり他の委員会の委員長や議会役員とともに議会事務室という部屋が与えられている。本来は生徒会室の横にあり行き来は楽なのだがご存知の通り校舎建て替えの都合で第2会議室を間借りしている状況であり少し遠くめんどくさい。

別に仕事が嫌な訳では無い。決してそうではないのだが、……


──コンコンコン、ガラガラっ

「失礼します。今村先輩みえますでしょうか」

「はいはぁい。あ、透くんいらっしゃ~い。用事?お茶?それともわぁ、たぁ、し~?」

この人に会うのが嫌なんだよなぁ……。この人いつもこうであんま絡みたくないんだけど……。

この人は我が校の議会副議長にして会計の陽斗の姉である今村晴香先輩だ。だいぶ抜けていてちょっとサイコパスが混じっているが頭がよく人当たりもいいため入学からすぐ議会入り、副議長のポストに着いた、正真正銘の天才である。

「仕事。業務連絡です」

ぶっきらぼうに言うと印刷してきた招集状を渡す。

「透くんのいけずぅ〜。ってなにこれ〜?お姉ちゃんこんなこと聞いてないよ〜」

「そりゃそうでしょうよ。今初めて言いましたし」

むしろ知ってたらヤバい。生徒会の機密漏れの心配とかしなきゃいけない。個人情報とか漏れたら最悪解散だからね!?

「いや、そうじゃなくて〜、なんで臨時議会を開くかが聞きたいのよ〜?」

「そこに書いてあるから読んどいてください。今時間ないので」

「別に読まなくてもわかるわよ。ただ透くんの声が聞きたかっただけ〜」

「はいはい」

「体育祭に関する議決権の委任について、とかじゃない?」

「なんでわかるんです?」

何この人他人の頭覗けるの?絶対わかってないと思ってたんだけど。でもこの人時々クリティカル入れてくるんだよねぇ……。

「今年の体育祭は例年より1週間早い。となると確実に時間が足りなくなる訳だね?だから削れるところから削っていかなきゃいけなくて、だけど実務のところは削る訳にはいかない。だとしたら削るところはそこしかないでしょう?」

あ、正解です。さすがだ。これが天才なのか。いやサイコの方かもしれない。

「でも雅ちゃんじゃないよね、考えたの」

!?!?そこまでわかるのこの人??強過ぎないか。

「雅ちゃんならゴリ押しで通していこうとするはずだからね」

あー。確かにそういう所はある。よく周り見てんだなこの人。ちょっと見直したわ。

っとこんなことしてる場合じゃない。

「じゃあこれ回しといてくださいね」

次の仕事があるんだ。

「はいは〜い。頑張ってぇ〜🎶」

根はいい人で天才なんだけどなぁ。残念感がすごい。

とはいえ任務は完了。生徒会室に戻って、さぁ次の仕事だ。


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陰キャコミュ障の俺が青春ラブコメ主人公になるはずなんてない! naka @nakanakapretty

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