第8話

哲人の所属しているサークルは表向きはテニスサークルなのだが、ほぼ飲みサークルだ。


メンバーは全部で十数人くらいで、他大学の学生が3割位いる。菜央もその一人だった。


菜央は某女子大の学生で、麻沙美も同じ大学の学生だ。


二人は大学入学当初から友達の関係で、二人でT大のサークルにやってきた。


一年生の時は二人とももっさりした感じだったが、三年生の今となっては、すっかりあか抜けて化粧もばっちり決めている。



哲人がアパート近くの最寄り駅で電車を待っていると、ラインが来た。



菜央:哲人と出会いたての時の私の写真を見るとイモ臭いよね笑



どうやら昔の写真を見て、ラインしてきたらしい。



哲人:まあな。でも新入生なんてそんなものだろ


菜央:哲人も暗い感じだったけどだんだん明るくなったよね


哲人:浪人すると暗くなるんだよ


菜央:暗いままじゃなくてよかったね笑


哲人:よかったよ笑


菜央:麻沙美も言ってたよー表情が明るくなったって


菜央:なんで彼女できないの?


哲人:なんでできないんだろうね


菜央:すぐできると思うよ。学校にはいい子いないの?


哲人:工学部は男子校のようなものだから女性がいません。


菜央:サークルの女の子はどうなの?


哲人:麻沙美いいと思うよ


菜央:麻沙美ねーいいじゃん


菜央:彼氏いないからいっちゃえば?


哲人:考えとくわ


菜央:なにそれ笑


菜央:上からw



哲人はしばらくラインした後、ホームに入ってきた電車に乗った。


座席に座り反対側の窓の外を見ながら、「彼女がほしい」と心の中で強く思った。


哲人は高校時代は彼女がいたが、付き合ったとはいえないような交際だった。ラインのやり取りもそこそこで、デートもほとんどしなかった。そのまま彼女のほうから別れを告げられた。浪人中は予備校に真面目に通いながら勉強が恋人だった。



つまり哲人は童貞である。麻沙美の裸を思い浮かべながらニヤニヤしていると、停車した電車に乗ってきたはげたサラリーマンに変な目でジロジロ見られた。


麻沙美のルックスは中の上くらいで、100人に聞いたら65人位はかわいい、美人だと言うような顔立ちをしている。女子アナにいそうなタイプだ。


麻沙美は哲人とはそれほど仲がいいというわけではなく、サークルに来たら話す程度の仲だ。哲人は前から麻沙美のことをかわいいと思っていたが、童貞特有の嫌われ不安病がでて、こちらから連絡することはなかった。



連絡してみようかなとスマホの画面を見て、麻沙美のラインのアイコンをタップし、麻沙美と菜央二人で写っている写真を開いた。この写真は何回かおかずにしたことがある。もちろん麻沙美のほうだ。そうこうしているうちに降りる駅に電車が停まるアナウンスが流れ、哲人は座席を立ち上がった。そして電車のドアをくぐり抜け、人ごみの中へと消えていった。

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人生ゲーム ブロッコリー @suzuki5527

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