Extra 01:心
狭い部屋。ベッドと水色ランプとテレビとガラステーブルしかない簡素な部屋に一人。ベッドに身体をうつ伏せで預け、枕に顔を埋めている。さっきから部屋をノックする音が聞こえてくるけれど、無視を決め込んで答えない。
何故ならば、そういう気分じゃないから。顔を合わせたら多分怒りで酷い言葉をぶつけてしまうから。それがとても怖いから。なのにノックを止めてくれないの。ずっと同じリズムでコンコン、コンコンって叩いている。
構ってほしいのは分かっている。顔を見せて欲しいのは分かっている。でもそれはできないの。だって今は喧嘩しているんだもの。きっと分からないでしょうね。だって心なんて簡単には読めないもの。
お互いに心が読めたなら、手に取るように分かったら、どれだけ楽しい日々を過ごせるか。嫌なことなんて一切ない、刃を向け合わなくたって済むのにな。そんなことを考えている。
突然いなくなって、あちこち探して、見つからなくて。何かあったんじゃないかって、どこかで倒れているんじゃないかって。心配で、心配で。そしたらひょっこり帰ってきて『ただいま』なんて簡単に言うの。そこに怒りが込み上げて。
いいえ、本当はこの手で抱きしめたい。抱きしめられたい。いっぱい、いっぱい甘えたい。そして心が通じているということを証明してほしいの。でも、今はだめ。どんな言葉も心に響かない。信じられない自分がいるから。
……心って複雑ね。
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