魔王様の奥の手とメアの真実。
もう、こうするしか皆を守る方法が無い。
試した事も無いからどんな結果を生むかもわからない。
それでも、もうこれしか……!
俺はそのアーティファクトを使用した。
「ヒールニントさん参上っ! みんな待ってて下さい! すぐに治しますからね!!」
「なっ!? ヒールニントなんでここに!?」
「説明は後です! 私が皆さんを……」
違う、そうじゃない!
「バカ! 今すぐここから離れろ! 巻き込まれるぞ!?」
「大丈夫です! 戦う力は私にも……」
「そうじゃねぇ! そうじゃねぇんだよ!」
ピカっと、俺の手に握られたアーティファクトが光を発し、目の前が真っ白になる。
俺がクワッカーから預かってきたアーティファクト、それはロザリアとメアが最後の戦いをしていた頃王国へやってきた魔族が使っていた物だ。
今までに無い効力の興味深い物だったのでクワッカーやアシュリーへの手土産のつもりで持ち帰っていた物だが、こんな重要な場面っで使う事になるとは思って居なかった。
そして、まさかヒールニントまで巻き込んでしまうとは……。
「セスティ様……? 今のはいったい何が起きたんですか?」
「あれ? この声……ヒールニント?」
「メアさん、無事ですか!? あれ、これどうなってるんです?」
「セスティ、いったい何をしたのじゃ!?」
「おにぃちゃん……これって、もしかして……」
「すまん。後でいくら責めてもらっても構わん。だけど今俺達は……」
光が消えて視界は良好。
まるで自分が自分では無いようだ。
確かに感じるみんなの命の鼓動。
そして、あるべき物がそこへ戻った感覚。
『おぉぉぉ! 力が溢れる……! 貴様、いったい何をした!?』
オロチも驚いているようだ。それはそうだろう。
そして、予想外というか、誰だお前的な人が一番テンション爆上げで喜んでいた。
『な、ななななんだこれは!! まさかこんな所で私の臓器と再会できるとは!! しかも……この波長は、まさかジェミニアか!? 今日はなんと素晴らしい日だ! あの日失った物を全て、全て取り戻したぞ!!』
「……ご機嫌な所悪いがお前誰だ……?」
『ハッ、すまない。あまりの出来事に舞い上がってしまった。私の名はジェミニ。君達が言う所の……そうだな、神と言ったところか』
……はぁ?
「おい、ヒールニント。こいつはお前が連れてきたのか?」
「あっ、はい。いろいろありまして力になってもらってます」
これは、とんでもない拾い物だ。
「ふははは……ヒールニントが君らを治せばまた楽しめると思ったのだが……まさかその期待をはるかに超えた結果を示してくれるとは……!」
上空ではアルプトラウムまでテンション爆上げ中だ。
俺達はガーゴゴイルとかいう奴が使っていたアーティファクトを用いて、一つになった。
本来ならばいざという時に、メアと同化して、俺の精神と身体に分かたれたあのアーティファクトを一つにまとめ、本来の力を取り戻す為。
俺だけでは引き出し切れなかった力をメアのサポートがあれば最大限引き出せるだろうという目算だった。
それが土壇場でショコラとめりにゃんを助ける為とはいえ同化に巻き込んでしまった。
俺の判断が少し早すぎた。
ヒールニントが来るのならばこんな事をせずとも皆を助けられた。
しかし、逆にヒールニントまで巻き込んでしまった事によって得られた神の力。
これは大きい。
「ジェミニ……あんたは味方だと思っていいのか?」
『ふむ……? ヒールニントが君の力になりたがっていたからね。協力するのもやぶさかではない。しかも私の【臓器】と片割れまで所持しているのだから便宜を図るのは当然というものよ』
「その臓器とか片割れって何の事だ?」
『臓器、では分からぬか……それは我等の力の源よ』
あっ……! アルプトラウムが異空間から取り出したあのぶよぶよした物。どうも見覚えがあると思ったんだ。
あれは、奴が見せた夢の中でアシュリーが持ってきたぶよぶよした物とよく似ていなかったか?
俺は、このジェミニとかいう神の力の源を繋ぎにする事で命を取り留めたのか。
「……なんとなく察しはついた。じゃあ片割れっていうのは何の事だ?」
『今同じく一つになっているではないか』
一つになっている……?
「ヒールニントの事か?」
『いや、違う』
「ショコラじゃねぇだろうし俺でもないよな? めりにゃんは……」
『私が言っているのは一つになる前銀髪だった少女の事だ。近くに居たというのに気付かないとは我も耄碌したものだよ』
「えっ、私?」
メア。メアが片割れだと?
「どういう事か説明してもらえるか?」
『私は……元々は一つの身体に二つの心を宿した二面神であった。ジェミニとジェミニア。私が平和の象徴であり、ジェミニアは破壊の象徴である』
「ちょっと、ちょっと待って……私が、そのジェミニア? 神様? 待って、分らないわそんな事言われても」
『私は奴等が……今こちらを見ている奴、アルフェリアを含む同族達にこの世界に手を付けるのはやめろと進言したんだがね、異端者扱いされて力の源は奪われるし半身と切り離されてしまうし……ずっと牢獄の中で治らぬ傷を抱え苦しんでいたのだ。それを助けてくれたのが彼女、というわけだよ』
「メアさん、黙っていてごめんなさい。ニポポンの遺跡の時です」
「そう、様子が変だったものね……でも、そんな事より……私は、貴方から切り離されて……それで……?」
「すまない。君を引き剥がされ私は牢獄へ放り込まれていたのでね、その後の事は……」
「……」
メアもいろいろ思う所があるだろうが今は……。
「すまん、そろそろあちらさんは我慢が出来なくなっちまったらしい」
アルプトラウム……さっきまでのようにはいかねぇぞ。
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