魔王様とレッツパーティ。
「デュクシ、お前……私達を騙したの?」
「騙す、なんて人聞きが悪いね。私は最初から全部で五つ、なんて言っていないと思うが」
……確かに五つって判断したのは私達の方だった。
それ以外観測できなかったから……。
「もう一つ、どこかに隠してあったの?」
「その通りだよ。しかし……姫ちゃん達ならみつけてくれると思っていたんだけれどね。こればっかりは正直期待外れと言わざるを得ない」
「おにぃちゃん……もしかしたら王国に来た魔族みたいに?」
きっとそうだと思う。私は無言でショコラの質問に頷いた。
きっとあの時の魔族達みたいに姿を消していたのね。
「塔は全部で六つ。ここを中心にして六芒星を描くように配置してある。それぞれの位置関係をきちんと考えればわかると思ったんだけれど……がっかりだよ。一つでも残っていればこれのトリガーとなり得るからね」
「儂らがそれをさせると思ってる訳じゃあるまいのう?」
めりにゃんが私の掌を握る手に力を込めたので私もそれを握り返す。
「デュクシが本当にこの世界を壊そうとしてるとは思えないしね。どうせ私達が勝てなかったら世界を壊すとかそういう事でしょ?」
「……ふふっ」
デュクシ……いや、アルプトラウムが私を酷く見下したような目で笑った。
「やはりダメだ。せっかく千里眼の使用をやめてまで楽しい結末を楽しみにしていたというのに……期待外れもいいところだよ。もう終わりにしよう」
「させる訳ないでしょう!?」
メアがアルプトラウムへ魔法を放つがそれを避けようともせず、炎の槍は彼の目の前で見えない力にかき消された。
そして、右手をゆっくりと上げ……。
「……おや? これは……ふふふ、姫ちゃんも人が悪い。こうやって無駄話をしていたのは全て時間稼ぎだったという事か。これは驚いた……先ほどの非礼を詫びさせてほしい」
……えっと?
「デュクシが何を言ってるのか分からないけど?」
正直言うと今私の心臓は物凄い速さでバクバク鳴りっぱなしだった。
「こうやって時間を稼いでいる間に最後の塔を破壊するとは……いやはや迅速な対応恐れ入るね」
……アシュリーあたりが気付いて破壊してくれたのかな?
「ふっふっふー! 恐れ入ったか! 私達王国の力を舐めるんじゃないわよっ!」
「ああ、これで実際問題この剣を大地に突き立てるのは難しくなってしまった」
あっぶねーっ! 本当に誰か分からないけど気付いてくれてありがとう!
世界を守ったのは最後の塔を壊した誰かよ!
「……セスティ、これも予定のうちなのかのう?」
めりにゃんの疑惑の視線が突き刺さってくるけど「勿論」と精一杯の作り笑顔を返す。
ごめん。だけど奴には全部わかってたって思わせておきたいしさ、あとで謝るから許して。
「姫ちゃんならこれくらい対応できると信じていたからね……この剣は本当に塔からのエネルギーでしか動かないように作った。君達の勝ちだよ」
「だったらその身体からさっさと出て行ってくれないかな?」
「おかしな事を言うね……私はデュクシであり、ハーミットであり、勿論アルプトラウムだよ。全てが混ざり合って今の私があるのだからこの身体は私の物だ」
また私を馬鹿にするような目で見やがって。
「そういう屁理屈はいいの! とにかく私達に普通の馬鹿でアホで調子のいいデュクシを返せって言ってるのよ」
「……そりゃないだろ姫ちゃん。俺はこれでも姫ちゃんが居ない間頑張って来たんだぜ?」
「……ッ!」
「これで信じて貰えたかな? ただ単に混ざり合って出来上がった人格がコレだというだけで私は私だよ」
めんどくさい事になって来てるなぁ。
どうやって元に戻せばいいか……一応試しておきたい事はあるけれど、簡単に出来るとは思えない。
「だったらボコって謝らせるしかないね」
「君達に出来るかな? では最後の最後に楽しませてもらうとしようか。それに相応しい舞台を用意しよう」
そう言ってデュクシが巨大な剣に手を触れると、一瞬でそれがバラバラになり作り替えられていく。
そして海の上に膨大な広さの地面が生まれた。
「こんな事もあろうかと他の用途でも使えるように考えていたんだよ。地面があった方が君等は戦いやすいだろう?」
「そりゃ気を付かって貰ってありがたいわね。下へ行くわよ」
私達は新しく作られた地面の上へと降り立つ。
何の素材で作られているのか分からないけれど繋ぎ目も何も見えないし、とても丈夫そうだ。
濃い灰色のパネルに変化した剣がどんどん同化していき、一つの大地へと変わる。
どうやったらこんな事が出来るんだろう?
メアとかだったら同じような事もできるのかな?
すーっと私達の目の前にデュクシが降り立つ。
良く見ると地面からはほんの少し浮いているみたい。
「ふふふ……ついにこの時が来たね。君達からしたら最後の敵との大勝負という訳だ。せいぜい楽しませてくれたまえよ」
笑ってられるのも今のうちよ。
「一つ聞いていい? 私達の状況はどこまで把握しているの?」
「……? 千里眼を使うのを辞めたと言っただろう? もう大分前から状況の把握をするのはやめたよ。楽しみが減るからね」
「なるほどなるほど、じゃあ私のこの羽根は何だと思う?」
デュクシが一瞬眉をひそめた。
「……魔法、では無かったのか。だとしたらそれは……?」
「オーケー。それだけ確認出来れば上々ってやつよ!」
「なるほど……私が知らない何かがある、と……そういう事かな? それは楽しみだね。是非とも私を脅かして頂きたいものだ」
余裕かましてられるのも今のうちだからね。
「さぁ、纏めてかかってくるといい! パーティと行こうじゃないか」
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