魔王様は知らんうちに目的達成。


「ふーんふーんふふーん♪」


「だーりんってば随分ご機嫌だべな?」


「あら、そう見える? なんかね、久しぶりにめっちゃ気分いいんだよね。もうなんかいろんなしがらみから解放されたーって感じ?」



「よく分からんけんども……だーりんが幸せならそれでいいべさ」


 ちょっとチャコが私に対して距離を置いたような反応するんだよなぁ。


「あ、だーりんあの塔が目的地だべな?」


 私はチャコと神憑りをして羽根を生やしてぷかぷかと飛んでる状態。


 転移魔法で島に来たら少し座標がズレていきなり海に落ちそうになったから慌てて羽根生やして飛んできたってところ。


「あんたもうちょっといい仕事しなさいよね」


『いや、我がある程度補正してこの体たらくなのですが……』


「うっさい! もっとちゃんと完璧にサポートしてこその相棒でしょーが!」


『そもそもメアとして生きていた時はきちんと転移が出来ていたと聞いています。なぜその身体に戻ったらできなくなったのですか?』


「だーかーらーっ! メアの身体の中にはいろんな情報が詰まってるアーティファクトがあって、それを参照すれば大抵の事は出来るんだってば!」


『ならどうしてその時にきちんと学習しておかないのです!』


「なによ私が悪いって言うの!?」


『悪いとは言っておりませんへっぽこだと言っているんです!』


「ムキーッ!」


「むっ、とうとう現れたな! この塔を狙うとは愚かな奴め! 俺の……」


『そもそも主はいつも考えが浅すぎるのです! どうしてもっと慎重になれないんですか? もっと考えて行動すれば避けられたトラブルも多くあったように思います!』


「あーあーそうですかー! 全部私が悪いんですかー!?」


「だ、だーりん、メディファスも……落ち着くべ、それに敵が来てるべさ」


 私はちらっとチャコの言うそいつの方を見たけれど、今は忙しいから後にしてほしい。


『その女性化している時は特にそうです! 勢いだけで物事を考えるからいつもひどい事になっているのを自覚していないのですか!?』



「なによ! 私が女じゃダメだっていうの!?」


『違います女になると頭が悪くなると言っているんです!』


「頭が悪いって何よあんただって役に立たない癖にーっ! ちょっとは出来るやつだとみなおしたのに酷いっ!」


『相棒だからこそ苦言を呈しているのです!』



「お、おい! 貴様俺を無視するんじゃない! ふざけやがって……独り言ならあの世に行ってからにしろ!」


「てめーはどいてろ!」


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」


 ごちゃごちゃうるさいから思い切り裏拳ぶちかましてやった。


『……主?』


「何よまだ何かあるの!?」


『いや、さっきのは一体何者です?』


「知らないわよ魔族かなんかでしょ!」


 ……そう言えば誰だったんだろ。


「だから敵が来てるって言ったべさ……」


「……ん? あぁ、アレがここを守ってるっていう魔族だったの?」


『そのようです』


「じゃあ今は言い合ってる場合じゃないわね」


『肯定。今は魔族を倒し塔を破壊する事を最優先に……』


 私の目の前で塔の上層部が、ぐごご……って音を立てて崩れ出した。


「えっ、何!? 何が起きてるの!?」


「……だーりん、さっきぶっ飛ばした魔族が塔に突っ込んでああなったんだべさ……」


 えっと……つまり……?


「守ってた魔族があいつで? そいつぶっ飛ばして塔が壊れたって事?」


『どうやら、ここに来た目的は果たしてしまったようですね』


「えーっ!? つまんない! もっと手に汗握るバトルとかさ、そういうのあるんじゃないの!?」


 とんだぬか喜びだよ。せっかく暴れられると思ったのに……!


 念の為に塔の近くまで飛んで行くと、塔の上層部は完全に崩れ落ちていて、メディファスに調べてもらったら完全に魔力の供給も途切れているんだって。


 やっぱりこいつこういう時には役に立つのよね。


「メディファス、さっきはちょっと言い過ぎたわ。ごめんなさい」


『いえ、我もムキになり過ぎました。反省しております』


「そう? よかった……じゃあこれからも至らない私だけど宜しくお願いできるかな?」


『無論です。我の主は貴方なのですから』


「いい話だべ……」


 その時、瓦礫の中から何かが飛び出してきた。



「死ぬかと思ったぁぁぁぁっ!! クソがっ! あのお方に頂いた力を使う前に死んだら話にならん! しかしさっきの一撃で仕留めそこなったのは失敗だったな! 俺のこの最強の一撃を受けてみろ……! はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「もうそのくだりは終わったんだってば!」



 魔族のすぐ真上に転移してくるっと回転し勢いを付けながら思い切り踵落としを脳天に叩きこむ。


「受けてみぼぼっ……!?」


 頭がぐちゃりと潰れて肩と同じ高さになってしまった魔族が、しばらく状況が掴めずに手足をバタバタさせながら、やがて絶命して落っこちてった。


「大事な話の途中に割り込んで来るからだばーか!」


『主、おめでとうございます』


「へっ? 何が?」


『ただいまの戦闘、見事でした』


「あっ、そう言えば転移ちゃんと成功したじゃん♪ やったーっ! メディファスありがと大好き♪ ちゅっちゅっ♪」


『ちょっ、あ、主っ! それは、ちょっとっ!!』


「……こ、これで良かったんだべか……?」

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