魔王様は侵略を食い止めたい。
「結局あいつのアーティファクトってなんだったんだろ?」
『あの魔族の遺体を漁れば見つかるかも知れませんがどうしますか?』
「えーっ、汚いしいいよもう」
『今の主ならそう言うと思っていました。では王国へ帰りましょうか』
「……よく考えたらメディファスが居たから全然二人っきりじゃ無かったべさ……」
「ごめんね? でもこの戦いが終わって時間が出来たら一緒に沢山遊ぼうね♪」
「……まぁだーりんの役に立てるのは嬉しいし別にいいべさ」
「じゃあ一緒に帰りましょ♪」
私は転移魔法で王国、城の前まで飛んだんだけど……。
『……主、先ほどのようには出来ないのですか?』
「うるさいわね……距離が遠くなったから誤差が出るのは仕方ないのよ。それに合流場所は食堂だったんだし一石二鳥ってやつでしょ?」
私達は食堂の前に居た。ちゃんと王国に帰ってこれたし、みんなが合流する場所は食堂って事にしてたから都合がいい。
「あれ? もしかして私達が一番乗りかな?」
食堂に入ると、食事をしてる魔物達はいたけど塔へ向かったメンバーは誰も帰って来てなかった。
「あれ、おにぃちゃんもう帰ってきてたの?」
食堂にショコラとロンザ、コーべニア、ライゴスが入ってきた。
「おー、そっちはどうだった?」
「「「…………」」」
え、何その反応。男性陣が俯いて黙ってしまった。
「え、何かあったの?」
「ううん。とってもいい思いしたよ。魔族は生け捕りにしてクワッカーの所においてきた」
「……生け捕り……? 良い思いした……? ねぇ、その魔族って女だったんでしょ?」
「さすがおにぃちゃん。私の事よく分かってるね」
ショコラが両手を腰に当ててふんぞり返る。
「どやぁ」
「……とても心臓に悪かったです」
「確かにな」
「我は慣れっこではあるのだがさすがに魔族が不憫であった……」
ああ、きっとえらいこっちゃだったんだね。
「あ、他の人達も帰ってきたみたいだよ」
私達はショコラの言葉を合図に食堂の外へ出て皆をお出迎えした。
「みんなおかえりー♪ 首尾はどう?」
「おおセスティ、そっちも無事に終わったようじゃな。儂らの方もばっちりじゃよ」
「私も勿論しっかりぶっ壊してきたから安心しろ」
めりにゃんとアシュリーのところも無事に塔を壊せたみたいだ。
「思ったよりみんな早かったねー♪ お疲れ様! ……あれ? メアは?」
「私もちゃんと終わってるわよ」
「あ、おかえりー♪ メアが最後なんて意外だなぁ」
「いや、ちょっと穴掘ってたから」
……穴? 突っ込んで聞こうかと思ったけどメアが嫌そうな顔してたからそっとしておいた。
「さて、これで塔は全部ぶっ壊した訳だけど……アシュリー、どうかな? あの光の剣は……」
「ちょっと待ってろ」
アシュリーが転移でどこかへ消えた。多分ラボに行ったのかな?
アシュリーが小さいモニターみたいな機会を持ってすぐに帰ってきた。
「……おい、なんか変な蜂女が居たんだが……」
「それは私の性奴隷だから気にしないで」
「……やっぱりお前か……まぁいい。それよりこれを見てくれ」
アシュリーが見せてくれた機械には、光の剣が映っていた。
「ザラとクワッカーはずっとこれを観測してたらしいけど……残念ながら何も変わってないらしい」
……どういう事だろ?
「何か裏があるって事だよ。本格的に早くアルプトラウム本体を潰さないとまずい事になるかもしれないぞ」
まだ少しでもデュクシが残っているならそんな事しないと思うんだけどなぁ。
ナーリアとかはきっと同じ考えだと思う。
でも他の連中はそうもいかないよね。
アルプトラウムの一存でこの瞬間にも世界が滅んじゃう可能性があるんだから。
「やぁ、皆さんごきげんよう」
どこかから聞こえた声に私達は慌てて空を見上げる。
「デュクシ……」
再び空には大きな投影魔法のスクリーンが現れ、デュクシの姿を映し出していた。
「よもや私の事を忘れているとは思えないが念のために自己紹介をしておこうか。君らが言う所の神……アルプトラウムだ。世界に配置した神術塔だがね、鬼神セスティとその配下の者達の手に寄って五つ破壊されてしまったね。いやはやここまで早いとは驚きだよ」
またこいつ私達の事を持ち上げようとしてる。
いったい何が目的なの?
世界共通の敵になって敵意や恐れを集めていったい何がしたいのかしら。
それよりも勝手に私をどんどん祭り上げていくから気持ち悪くてしょうがないわ。
「こちらとしてもね、ここまで来ると打つ手が限られてきてしまうんだよ。残念ながらスマートとは程遠いやり方をせざるを得ないね。私が人工的に作り上げた魔物の軍勢を世界各地へ放った」
……とうとう、アルプトラウムが本格的に世界を侵略し始めた?
でも……ちょっと違和感がある。
「もうしばらくすれば君等の生活を破壊しにそいつらが到着するだろう。とはいえ頭が悪い人造魔物だからね、ある程度戦力のある者達が要れば守り切れるかもしれないよ? ははは、こちらが用意した大量の魔物対世界中の人々という構図だね。どちらが勝つか見ものじゃないか」
あぁ、違和感の正体はそれだったんだ。
本当にその魔物達で世界を滅ぼそうとはしていない。
どちらかというと……この状況で人々がどう出るのか。そして私がどれだけ心乱されるのか……それを楽しんでるだけだ。
あいつ私の事好きすぎでしょ……。
まったく、可愛い姫はつらいぜー。
……とか言ってる場合じゃ無かった。
「みんな! これからが正念場だよ! 世界を! そしてそこに生きる人々を! 私達の手で守り切るんだ!」
気が付けば私達の周りに国中の魔物達が集まり始めていた。
言葉を話せない獣に近い魔物達は仕方ないけれど、ある程度の自我を持つ者。言葉を離せる者達には協力してもらわないと。
「みんな、私に協力してくれるかな!?」
物凄い数の声が一斉に「いいとも!」と発し、国中が震える程だった。
頼もしい連中が沢山いて私も鼻が高いよ。
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