大賢者に出来る事。
「ペラペラと秘密を喋っちまってよかったのか?」
「分かった所であの方に頂いたアーティファクトアーマーは無敵だからね!」
余裕こいていられるのも今のうちだぞこいつ。
私はサクラコとロピアより後ろへ下がり、土魔法を唱える。
「ロックシューター!」
普段は人の頭くらいのサイズの岩石を高速でいくつも打ち出す魔法だが、今回はそれを分散させずに一つの巨大な岩の塊を用意した。
「わお! おっきい岩だね!」
どこまでも能天気な奴だなこいつは……。
頭はあまり良くないらしい。
「これを受け止める自信はあるか?」
「何それ決闘でも挑んでるの?」
「それ以外に聞こえたか?」
「いいよ、アーティファクトアーマーが最強だって所、見せてあげるよ!」
アーティファクトアーマーはお前の言う通り最強なのかもしれないな。
でも、それを使ってるお前はどうなんだ?
「サクラコ、あいつの足を止めろ。ロピアは……やる事分かってるな?」
「あいよ」
「まかしときーっ!」
まずサクラコが突進して剣撃を繰り出すがそれをセーガルが全て拳で受けた。
「お前みたいなのはこういう絡めてに慣れてないだろ?」
サクラコがセーガルの足元に短刀を投げる。
えっ、な、なんだこれ足が動かないっ!?」
「影縫いってんだ覚えとけ。ニンジャマスター舐めんなよ」
「おー! ニポポンズニンジャマスター! でもこれくらいなら……っ!」
ぼごり、とセーガルが足元の地面を抉り、足がくっついてしまっている地面ごと歩き出そうとしたが、その一瞬があれば十分なんだよ。
「くらえっ!」
私は大岩を水平に飛ばし、セーガルの身体ではなく頭部のみにぶち当てた。
「……ッ!?」
私の考えが正しければセーガルの頭部は激しくアーマー内の壁に打ち付けられている筈だ。
脳震盪でも起こしてフラついとけ!
「ロピア!」
「あいよっ! 覚悟しぃやーっ! 金剛流激掌!!」
一瞬でロピアが懐に潜り込み、アーティファクトアーマーに手を添える。
それだけなのに、その爆発力は全て内部へと向かい、アーマーの内部で激しい爆発音がした。
「この場にロピアが来ていた事が運の尽きだったな」
彼女の気功術のような物はこういうタイプの相手にこそ真価を発揮する。
外装が協力ならば内側から破壊すればいい。
「ぐっ、ぐがが、ごごっ、が……」
セーガルはガクガクと不規則な動きをして、ゆっくりと地面に崩れ落ちた。
「ふぅ、これであたしらの役目も終わりだろ」
「せやなぁ。一度王国へ……って、ん?」
「ガガガガガゴゴゴゴゴグゲガガガ」
「お、おいなんかあいつ様子が変だぞ」
……サクラコが言う通り、挙動が不自然だ。
急にガゴンと立ち上がり、関節があちこち変な方向に曲がったままこちらへ突っ込んできた。
「うわっ、なんやこいつ!?」
「おいアシュリー! どうなってる!?」
「分からん」
先程よりも動きは鈍いが、不規則な動きをするので先が読めない。
「二人とも、来るぞ!」
滅茶苦茶に腕を振り回しながら襲い掛かってくるセーガル。
「……憐れだな」
おそらくこいつは、このアーティファクトアーマーの使い手として選ばれたのではなく、誰も使い手の居ないアーティファクトアーマーの餌にされたんだ。
アーマーの内側でベキベキバリボリと骨の砕かれる音がする。
「…………」
もはや悲鳴も出せないか?
今頃あのアーマーの中はえげつない事になってる事だろう。
それにしても趣味の悪い鎧だぜ。
このアーティファクトに意思があるのかどうかは分からないが、少なくとも使用者を食ってエネルギーに変えて勝手に動く。
「おい、セーガル。聞こえてるならなんか言ってみろ。最後に聞いておいてやる」
「……」
「ダメか……」
「こ、これ……で」
おっ、かろうじてまだ生きてるみたいだ。
そうなってくると、本当の意味で中身が死んだら活動が停止するタイプかもしれない。
「少し……は、あの方、の……お役に……」
「はぁ……せめてそこであいつへの恨み言の一つも出してみせろよな……」
「…………」
「なんやちょっと可哀想やな」
ロピアは感受性が高いのか、昔無理矢理命令を聞かされていた頃の自分達と重ねているのか分からないが複雑な表情だった。
サクラコは無表情に少しだけ眉をひそめるだけ。
「なぁアシュリー、こいつちゃんと殺してやる方法あるか?」
「……見かけによらず優しいんだな」
「うるせぇよ」
放っておいても中身のエネルギーはそう長くもたないだろう。
三十分もすれば動かなくなると思うが……。
サクラコが言ってるのはそういう事じゃないんだろうな。
搾り取られて残りカスみたいになって死ぬのがちゃんとした死かと言われると答えようがない。
私達の手で確実に殺してやる為には……。
まずはあの馬鹿力をどうにかしないと手が出せない。装甲が固いのは実証済みなので身動きを止める所から始めないと。
「とにかくいろいろ試してみるからな!」
サクラコが一人で飛び出し、「雷遁!」と叫び雷を落とす。
どういう原理なんだあれは……魔法とは違う大系の物だろうが……。
「ちっ、ダメか……これはどうだ水遁!!」
今度はどこからともなく大量の水が吹き上がりセーガルに襲い掛かる。
……水。
「それだ! サクラコ! とにかく水を大量に用意しろ!」
「なんだか分からんがやってやんよ!」
サクラコが大量の水を集めた所で私がその水を結界に閉じ込める。
勿論セーガルと共に。
今回は障壁を何重にも張り巡らせて簡単には破られないようにする。
「ロピア! 思いっきり揺らしてやれ!」
「よくわからんけどやったるでーっ!」
二人の反応が全く同じで不覚にも笑ってしまった。
待ってろよ。
ちゃんと、殺してやる。
ロピアの攻撃は内部から破壊する事に長けている。
あれは体内に気功を流し込み内側を振動させる事による物だろう。
ならば対象を水の器に閉じ込めてやれば……。
ロピアがそっと結界に手を触れ、右足を思い切り踏み込み込む。
相変わらず手に力が入っているようには見えない。
しかし、確実に水に振動が伝わり、それどころか結界内の水は激しく沸騰を始めた。
振動がセーガルまで伝わった瞬間、水の中で激しく身体が膨れ上がり、弾け、内側からアーティファクトアーマーを砕いた。
「こんなやり方しかできなかったが許せよ……お前は確かに強かった」
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