魔王様と大賢者の関係。
「あの、もうお気付きだとは思うんですけど、私が心当たりがあるって言ったのは……」
「うん、こっちのコーべニア君でしょ?」
「コーべニア君……セスティ様、僕の事はコーべニアで構いません」
ヒールニントは最近私達に対する礼儀みたいなのがちょっとどっか行き気味だったけど、彼女の友達達はしっかりしてるわね。
「そっか。じゃあコーべニア、私の事もセスティでいいわよ」
「で、でもセスティ様を呼び捨てはちょっとしにくいというか……」
やっぱり私相手ってなるとみんな委縮しちゃうものなのかもね♪
「私もセスティさんって呼んでますし、セスティさんでいいんじゃないですか?」
ヒールニントがコーべニアに提案し、コーべニアの中ではそれが採用されたみたいなんだけど、そこでロンザが異を唱える。
「俺は……セスティ様の事を、是非お呼びしたい呼び方があるんです」
「ロンザ、一体何を言ってるのさ! セスティさんって呼ばせてもらえるだけで光栄な事でしょ!?」
「いや、お前は忘れてる。絶対この方がしっくりくる筈だ」
えーっと、なんだこの時間。
「いいよ、好きに呼びなよ。変なあだ名とかじゃなければ……」
「では遠慮なく、姫と呼ばせて頂きます!」
「それかーっ!! 確かに、そう言われたらそれが一番しっくりくるよ。ハーミット様はずっと姫って言ってたし」
なんだ、思ってたよりもまともじゃん。
「許す! うちにも私の事姫って呼ぶ子が居るしね♪」
「ありがとうございます! これで俺も姫の騎士……!」
「じゃあ姫の騎士としてしっかり働いてちょうだいね♪」
「お任せ下さい!」
なんかちょっとデュクシの事思い出しちゃうなぁ。あいつも昔姫の騎士になりたいとか言ってた気がする。
「おい、そろそろ話し進めたいんだが?」
「ああ、ごめんアシュリー、よろしく頼むね」
私の言葉を聞いて「ふぇっ!?」と大声をあげたのはコーべニア。
「あ、ああああアシュリーってあの大賢者アシュリー様ですかっ!?」
「……だったらなんだよ」
アシュリーはめっちゃ嫌そうな顔してる。
それとは対照的にコーべニアは追いかけてた虫でも捕まえた子供みたいにキラキラしちゃってる。
「お会いできて光栄です! アシュリー様のお書きになった大魔法入門、僕の愛読書です!」
ピクっと、アシュリーの耳が動いた。可愛い。
「……ほう、私が十歳の頃に書いた初歩も初歩な物だが……おかしいな、アレは一般流通していないと思うんだけど」
「冒険を始めた後になりますが古物商が売っていたのを見つけて有り金全部渡して譲ってもらいました」
それって普通は偽物っていうパターンだよね? 多分売った方も本物とは思ってなくてぼったくってる可能性もあるよ……。
「いい心がけだな。それで? 実際アレを読んでどこまで使えるようになった?」
「ビッグメンチとストロングゼロまでは使えるようになりました」
「へぇ、アレは威力はそれなりだが魔力効率が悪い魔法だから、アレが使えるって事はそれなりに優秀だな」
「うっ……」
急にコーべニアが涙腺崩壊して大粒の涙をボロボロと床に落とした。
ロンザはそれを見て彼の肩を抱き、「良かったな!」なんて言って自分も目を潤ませてたけど、ヒールニントはドン引きだった。
「アレが使えるならもっと効率のいい魔法が沢ある……今回の件が終わったら教えてやってもいい」
「大賢者様から手ほどきを……! 本当に大賢者の弟子に……!」
「弟子にするとは言ってねぇよ。……だが、良い働きをしたなら考えてやらん事も無い。お前転移魔法使えるらしいな? 何人まで同時に行ける?」
あ、そうそう。ヒールニントが言ってた転移魔法使える人ってのはコーべニアだもんね、彼が何人同時に連れて行けるか次第でかなり状況が変わってくる。
「僕は……自分を含め四人が限界です」
「いや、四人転移出来るなら上々だ。これで戦術の幅が広がるぞ」
「あ、あの……ただ、四人も転移させてしまうと僕は多分魔力が尽きて役に立たなくなるかと……」
移動だけの人って感じになっちゃうのはまずいんじゃない? だって行っても帰って来れなかったらどうするの?
神術搭とかいうのを壊したら島が崩壊! とかだったら海に真っ逆さまだし。
「ならそれなりに戦力の有る者を同行させよう。それと魔力不足は心配しなくていいわ。アンタにはこれをくれてやる」
そう言ってアシュリーは疑似アーティファクトをコーべニアに投げた。
「それには私の魔力を詰めてある。転移魔法くらいならそれなりの回数使えるだろうから攻撃魔法なんかも遠慮せず使って大丈夫だ」
「こ、こんな物があるなんて……これもしかしてアシュリー様の自作ですか?」
「ああ、アーティファクトを作ろうとしたがそれが限界だった。しかし魔力の貯蔵庫としては充分役に立つぞ」
「す、すごい……!!」
アシュリーも普通の魔法使いからしたらめちゃくちゃ凄い人なんだなぁ。
「良かったねアシュリー♪」
そう声をかけてアシュリーの頭を撫でてあげる。
「わ、私だってお前の愛人として恥ずかしくないくらいの実力と名声はあるんだからなっ!」
「「え゛っ!?」」
ロンザとコーべニアの視線が一瞬で私に突き刺さる。やめてよ照れるじゃん。
「ロンザ、コーべニア、早く二人も慣れた方がいいですよ。この人達は……こういう人なので」
なんだかヒールニントにとても失礼な事を言われた気がする。
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