魔王様と最高の相棒。
「で、だ。一通り分かっている事を共有しておきたい。まずは私の方から……おいザラ、クワッカー」
「はぁいアシュリーちゃん♪」
「はいアシュリー様」
会議室に着いた時には既に魔王軍幹部達もみんな揃っていて、ほんとは少し休憩してからがよかったのにアシュリーが急かすからすぐにこんな流れになっちゃった。
「まずはこれを見てもらえるかしらん」
クワッカーとザラが無駄にお互いをベタベタ触りながら準備をしたのはスクリーンだった。
でもこれ魔法じゃないんだって。てっきりいつもの投影魔法かと思ったのに、ザラが持ってきた古都の民の技術を応用した機械なんだって。
使い方さえ分かれば誰でも使えるっていうのは便利だけど、あんなごちゃごちゃした線がいっぱい出てる機械なんてちょっと触ったら壊れちゃうよ。
ザラが機械のボタンを押すと、会議室の壁に浮遊大陸が五つ映し出された。
「私から説明しましょう。どこからともなく現れた浮遊大陸は五つ、ディレクシアの西、海上を心として北、東、西、南西、南東……」
今更だけどザラも今じゃ完全に王国の一員だよね……こいつのやってきた事自体は許せるもんじゃないんだけど、それを言い出したらメアはこの国に居られないもんね。
ナーリア辺りはいろいろ複雑な気持ちもあるみたいだけど、この国の一員になった以上その辺の事は忘れてもらうしかない。
本人だけは忘れずにいなきゃダメだけどね。
「五つの島を線で結ぶと五角形になっていて、その中心部に例の巨大な光の剣が突き刺さっている状態です」
クワッカーがボタンを切り替えて、今度はバカでかい光の剣が映し出された。
「こちらで偵察機を送り込み軽く調べてみたのですが、この光の剣は見た通り、魔力の濃縮体ですね。本来なら硬さや重量等調べてみたいところですが一定以上近付くと偵察機の動力が魔力にやられてしまうので近付けません」
なるほどなー。
「じゃあ直接剣の所まで乗り込んでってぶっ壊すって訳にはいかない感じ?」
私が聞くと、アシュリーが答えてくれた。
「それで壊せる可能性はゼロじゃないだろうが……おそらく魔力の塊だとしてもクリスタルツリーみたいにガワがある訳じゃないだろうから意味がないだろうな。もし乗り込んでから無理でした、じゃ奴を刺激するだけだ」
「じゃあどうするの?」
「神術搭とかいうのを全部まとめて一気にぶっ潰すしかないだろうな」
全部まとめて一気に……? 何を無茶苦茶言ってるのかなこのロリ賢者は……。
「なんだその顔は……お前今私の事馬鹿にしてるだろ」
「いや、そんな事はないんだけど、その大陸って全部バラバラの場所にあるんでしょ? 纏めてぶっ潰すって言ったってそんな広範囲の魔法なんて」
「おい、今お前が居るここは何処だ?」
……? 私が居るここ?
「魔物フレンズ王国……?」
……あっ、そうかそうかそういう事か。
「そうだ。そしてこの国には」
「頼りになる仲間が沢山居るって事ね♪」
アシュリーが満足そうにニヤリと笑う。
「まぁしかしだ。正直言うと転移魔法を使える人員が足りていない。この国に居る面子で転移可能なのは私、メリニャン、メア、そしてセスティくらいだろう? そうすると必然的に一人分足りないんだ」
……転移魔法とか私だってあんまり自信ないけどね。座標ズレるし。結構難しいんだよなぁ……。
「あの、一つ聞きたいんですけど、転移魔法ってそんなに難しい物なんですか?」
ヒールニントが律儀に挙手してアシュリーに質問を投げかける。
「攻撃魔法、回復魔法も上位の物になれば何度は跳ね上がるが、それらよりも転移魔法ってのはコントロールが繊細なんだよ。ちゃんと理論が分かってないと使えない……そこの魔王は感覚だけで使ってるけどな」
「照れる」
「褒めてねぇよいい加減ちゃんとした座標に飛べるようになってくれ」
おこられた……。
「ある程度魔力の練り方、転移魔法の構成の組み方なんかを把握してない奴が使ったりすると足だけおいてきたり手だけが転移……つまり手だけを転送って形だな。そういう事になるケースもある」
こっわ! 私そんな危険な事をノリでやってたの?
大体の感覚はメアとして生きてた時にあの引き出しから情報引き出して大体分かったけど……。
「そんな危ないなら注意してくれても良かったんじゃないの……?」
「あんたの場合は足が取り残されたり手だけどっか行ったって死にゃしないだろ」
それもそうだった……。
「それにな、あんたは気付いてないかもしれないが、本当にヤバそうな時はメディファスがサポートして整えてくれてるぞ」
……えっ?
今までそんな事一言も言わなかったじゃん。
『……敢えて言うまでも無い事かと……』
「って事は本当なんだ?」
『肯定』
口数が少なくなってるって事は照れてるねー。いつも黙って助けてくれてたなんていじらしいじゃん♪
『やっぱメディファスは私にとって最高の相棒よ。これからもよろしくね♪』
メディファスを顔の前に掲げてその刀身にキスをする。
『ばっ、ばばっ、●◇§÷▲×!?』
メディファスの刀身が真っ赤になった。
「あっはは♪ かっわいーっ☆彡」
『……』
黙っちゃった。からかい過ぎたかな?
今思考読んでる? 最高の相棒って思ってるのは本当だからね?
『……』
あれ、聞いてないのかな?
私に何も言わずにこっそり助けてくれて、私が文句言ってもそれを引き合いに出そうとしなかった所が好感持てる。好き。
『ぶふっ』
なんだ聞いてんじゃん。ちゃんと返事くらいしなさいよね?
……これからも、私の事を助けてね。
『御意』
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