魔王様一世一代の大演説。
「セスティ……あの薬は適量以上一度に使うとむしろ効果が薄れるとアシュリーが説明してくれたじゃろうが……」
「そうだっけ? まぁいいじゃん♪ なるようにしかならないしおっけーおっけー!」
「だ、ダメじゃこやつ……人々の認識に完全に当てられてしもうた……」
めりにゃんがとても心配そうにこっちを見て来るけどそんな気にしなくて大丈夫だってば。
私は私だしプリンでもセスティでも大して変わんないでしょ?
「さぁセスティ様、皆に声をかけてあげて下さい。貴方はこの国にとって救世主なのですから」
人々が口々に私の容姿を褒める。
王都を襲うロンシャンを撃退した事を感謝してる。
復興を手伝った事を喜んでくれている。
私を可愛いと言う。
付き合ってほしい、結婚してほしい、可愛い、綺麗、美しい、美人、天使、天女、その他諸々。
私はさらに前にでてバルコニーの手すりの上にぴょんと飛び乗る。
「お、おいセスティ!」
「めりにゃんもおいで♪」
めりにゃんの手を取って持ち上げ、お姫様抱っこすると、彼女は顔を赤らめ、慌て出す。
そして民衆はその様子を見てきゃーきゃーと大歓声。
よーっし、かましてやるぞーっ!
「みんなーっ! よく聞いてねっ! 私プリンは、この命尽きるまで、何があろうと……めりにゃんを愛し続ける事を誓いまーっす!」
「なっ!? こんな所でお主はいったい何を言っておるんじゃむぐーっ!?」
騒ぎ出したから無理矢理その口を口で塞ぐ。
しばらくジタバタしてたけど、ちょっとしたら逆にぐったりと力が抜けた。
更なる大歓声が私達を包む。
「見たかーっ! この子は誰にもやらないからね! 私のもんだーっ! それと! よく聞けーっ! 私の国の魔物達は、みんないい奴だから! 虐めたら許さないよ! その代わり虐められたら遠慮なく言ってね! ぶん殴って謝らせるから! それとそれと! もうこの国は私の王国と同盟国なの! だから……私達は仲間よ! この先、この国も、私の国も、海の向こうのロンシャンだってニポポンだって、もう争わせたりしないから! あとあと、えーっと……何かあっても絶対守るからっ! 私が守るっていったら守るしぶっ殺すって言ったらぶっ殺すからね! 世界を敵に回そうと思ったらまずは私が相手になってやる! 覚えとけーっ!!」
……ふぅ、すっきりした♪
めりにゃんを抱っこしたまま手すりから降りると同時に、今までの数倍もあろうかという大歓声がこの国を震わせた。
「せ、セスティ様……今のは……」
「ん? テンション上がっちゃってさー。ついやっちゃった♪ はい次はレオナね!」
何故か困惑顔のレオナの背中を押してみんなの前に連れていくと、彼女もみんなからとっても人気があるみたいで再び大歓声。
「え、えっと……こほん! 私は、まだ王になったという自覚がありませんでした。正直言ってなりゆきでしたし、自分が王族の血を引いてるなんて事も知らずに生きてきました……それでもここにいるセスティ様を始め、魔物フレンズ王国の皆さまにお力添え頂き今ここに立っています」
そこでレオナは一度深呼吸をして住民たちを見回した。
人々も先ほどまでの騒がしさは影を潜めレオナの次の言葉を待っている。
「まだ王としては未熟です。何も分かっておりません。それでも……私には先王であるリレイディオ大叔父様、元総騎士団長のアレクセイ・バンドリア……そしてすべての騎士団、兵……そして、そして……この国に住まう全ての人々が共に居てくれます。だから、私が至らない時は遠慮なく叱咤して下さい。私もよりよい王になれるように、そして皆さまに認めて頂けるように頑張るつもりです。どうか、今後ともよろしくお願いします!」
ぺこりとレオナが頭を下げると、さっそく住民から叱咤が飛んできた。
「王が軽々しく住民に頭下げるんじゃないわよ!」
……あ、間違えた。住民じゃなくてこれ絶対メアだわ。
なんだかんだ気になってあの子も見に来てたのね。
「ご、ごめんなさい!」
そういってレオナは再び頭を下げ、住民たちからはどっと笑いがおこる。
恥ずかしそうにレオナは頭をぽりぽりとかきながら赤面した。
「レオナはみんなから愛されるいい王様になれるとおもうわよ♪」
「もう、セスティ様……からかわないで下さい。……でも、セスティ様が居てくれればこの国も安泰ですし私も安心です」
「これレオナ! セスティは儂のもんじゃからな!」
私の背後で人々から隠れるようにしていためりにゃんがそんな事を言ったもんだからみんなは更に笑って、場の空気が盛り上がった。
仲には「尊い……」なんてよく分からない言葉も混じってたけど、みんな私達を認めてくれてるし応援してくれる。
「そういう事だから! 私達は今ここに改めて宣言するよっ! 距離は離れてるけど王都ディレクシアと魔物フレンズ王国は姉妹国家として共に協力していくからね!」
「今日はセスティ様を招いて、素敵なお言葉も頂きました。この素晴らしい日を、皆で祝いましょう! 皆さまも盛大に盛り上がって楽しんで下さいね!」
もう一度レオナが皆にぺこりと頭を下げ、私の手を引いて城内へ戻る。
「また頭下げてるよ」って一瞬みんな固まってたけど、すぐに賑やかな声が聞こえてきた。
先王のリレイディオはレオナの演説を見て涙を流してる。孫の成長に感動するおじいちゃんって感じ。
「ふぅ……これで私達の役目も終わりかしら?」
「あっ、はい! ちょっとびっくりしましたけどとってもいい演説でした! これからもよろしくお願いします」
またレオナが頭を下げる。
「こらっ、そうやって王が自分を安売りしないの。王たるもの毅然とした態度でいなきゃだめなんだからね?」
「ご、ごめんなさい」
でもこの子のこういう所が人に好かれる理由なんだろうなぁとは思う。
きっと言っても治らないだろうし周りが口うるさく言うくらいで丁度いいよね。
その役目はきっと先王とかアレクとかがやってくれるだろうから私はいざって時に助けに入ればいい。
それぞれやるべき事が違うんだから。
「さてめりにゃん!」
「な、なんじゃ?」
「遊びに行こう♪」
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