魔王様とその後の顛末。
「ふむ……それだけ聞くとダイダラボッチに吸い込まれた際にキャメリオが吸い尽くされて、中のショウグンだけが残ったという事なのかのう? 実際それはショウグンだったんじゃろう?」
「そうなんだよ。でもさ、そんなに都合のいい話があるか? そもそもキャメリオに食われていたのにショウグンが残ってたっていうのもよく分からん」
そんな事があり得るだろうか?
……いや、待てよ? 確かキャメリオの奴なんだか変な事を言ってたな。
「どうもこのやり方だとお互いが混ざりすぎて本当の自分がどちらなのか分からなくなってしまいますね……まぁ、私が取りこまれるなんて事はあり得ませんが」
……これだ。
このやり方だと? 本当の自分がどちらなのか分からなくなる? 取り込まれる事はあり得ない……?
とてつもなく違和感を感じる。
確かキャメリーンは食った相手の記憶と姿を手に入れていたが、それは純粋に食い殺されていたのだろうか?
俺は思い出したキャメリオのセリフをめりにゃんに告げて意見を仰いだ。
「……それは、かなり重要なヒントじゃぞ。こう考えるのはどうじゃ? キャメリーンやキャメリオが相手を食う、という行為は同化なのではないかのう?」
……同化?
「思い出してもみるのじゃ。以前キャメリーンと戦った時の事……確かあやつは大食漢だから人一人くらいペロリだとか言っておったが……しかしあの時何人も餌食になったじゃろう? そんなに何人も食すなど物理的にかのうじゃろうか?」
……確かにあの時キャメリーンは腹が膨れる事も無く、次々と人を喰っていった。
それが食べる、という意味ではなく取り込んでいた、と考えるのならどうだろう?
「そしてキャメリオはこのやり方だと自分がどちらか分からなくなる、と言っておったのじゃろう? その杓子の玉とかいうのを使う為にショウグンを全て吸収してしまうわけにはいかなかった、というのはどうじゃ?」
……なるほど。一応の筋は通る……か?
敢えてショウグンを完全に取り込まずに、大部分を残しておいたとしたら、杓子の玉を使えた事も理解できる。
「でも、だからと言ってダイダラボッチにキャメリオだけが吸い込まれたっていうのは不自然じゃないか?」
「それは儂にも分からんなぁ。例えばその時メインだったのはキャメリオで、ダイダラボッチはキャメリオの生命エネルギーを吸い取った時点でもう用無しだと放り出し、残りかすとなったショウグンだけが残り……」
「それをヒールニントが復活させた、って事か……」
「そう考えるしかあるまいよ。少なくとも今ある情報だけではそれ以上の仮説は立てられんかな」
確かになぁ……今はそれで納得しておくしかなさそうだ。
奇跡が偶然にも重なったおかげでショウグンが復活する事ができた……。
「それかもしかしたらキャメリオとショウグン共に疲弊して死にかけだったところにヒールニントがショウグンだけを回復した為体の支配権が変動した、とかやもしれんしな」
「えっ? あぁ……なるほど、そういう可能性もあるのか。確かに可能性で考えるならいろいろありそうだな……やっぱり話してよかったよ」
「どういたしましてなのじゃ♪」
めりにゃんは俺の腕にひっつきながらにっこりと笑う。
「それで、結局ショウグンとゲコ美はそのままベアモトに残ったのかのう?」
「ああ、ショウグンはゲコ蔵……ゲコ美の兄だという事が分かったからな。今は兄妹でゲコゲコランド復興とやらを頑張ってるよ。城はそれっぽくメアが作り直してくれたしな。ちょっと変な形になったけど」
そう。なんとなく元には戻ったんだけど所々知識量が足りなくてローゼリアの城っぽい雰囲気が混ざってしまった。
ショウグンとゲコ美はこういうのも新しくて面白いと受け入れてくれたが、俺から見たら文化がごちゃ混ぜのよく分からない城になってしまった。
その上、天守閣の一番上にでっかい蛙のモニュメントが鎮座している。
まぁ、本人たちが喜んでるならそれで構わないが。
「ゲッコウは残らなくてよかったのかのう?」
「ゲコ美やショウグンは引き留めていたよ。復興を手伝ってほしいってさ。でも今はこの世界の危機が迫っているのと、今回の事で俺達に借りが出来たとかでそれを返すまでは魔物フレンズ王国にやっかいになるって言ってた」
「なるほどのう……借りだとかそんなもの気にせんでいいのに。しかし戦力は少しでも多い方がいいのも確かじゃな」
それから、しばらくは平穏な日々が続いた。
その間に多少人員の移動などもあった。
アレクはディレクシアに戻り、レオナと先王の手伝いをしている。
食堂にはアレクの味を受け継いだジービルの嫁さんが料理長に就任し、夫婦で頑張ってくれている。
ステラは転移用アイテムを渡してしまったせいで王都と王国を行ったり来たりしているようだ。
そして俺とめりにゃんは各都市に出向き、兼ねてより計画していた世界中の連絡網を整備、そしてそれぞれの警備体制の強化、そして転移、および転送事業を始めある程度軌道に乗ったと言っていいだろう。
メア、そしてゲッコウもだが、自分の過去と対峙しそれを乗り越える事が出来た。
だからきっと……デュクシよ。
お前も、まだ大丈夫だ。
まだ戻って来れる。
駄々をこねても無駄だぞ?
俺は、そして私は……。
必ずデュクシを取り戻し、ヒールニントの元へハーミットを連れ戻す。
覚悟してやがれ。
――――――――――――――――――――
考察とその後の顛末メインのお話でした。
キャメリオとショウグンに何が起きたのか、その辺の事もいずれハッキリするかと思います♪
次回新章……!
まだ暫定的な予定ですが、最終章になるかもしれません。
応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます