魔王様が疑問に思う事。


 結局、杓子の玉の中はダイダラボッチにとってとても快適な場所という訳ではなかったようだが今までのように眠り続けるよりよほどいいという事で同行してくれる事になった。


 それどころか、メアから供給されるエネルギーにダイダラボッチは大歓喜だった。


「すぅぅぅごぉぉぉい! こぉぉんなぁぁのはじめてぇぇぇぇ!」


 だそうである。

 ちょっといろいろ誤解を招きそうな発言だなと思ったけどそんな事口に出すとまた変態扱いされるので黙っていた。


 そして、ベアモトとゲコゲコランドをめぐるてんやわんやもここで終了かと思われたが、この後もうひと悶着あった。

 今になって思えばいろいろと疑問が残る案件だったが、奇跡が重なった、と自分を納得させる事にした。

 何かが引っかかっているのは間違いないのだが、それが何なのか俺には分からなかった。



 俺達は既に魔物フレンズ王国へ戻っている。

 アシュリーなんかはダイダラボッチに興味津々で、「ここで呼び出してくれ!」なんてメアに無茶を言って困らせていた。


「どうしたんじゃ? 随分難しい顔をしておるようじゃが……」


「めりにゃん……そうだ、まだお礼を言ってなかったな。俺が留守中面倒な事を任せちゃってごめんな?」


「な、何を水臭い事言っとるんじゃ。儂はお主の妻じゃぞ? 旦那のフォローをせずして何が妻か」


 そう言って両手を腰に当てふんぞり返るめりにゃんがほんと可愛らしい。


 傍に抱き寄せて頭を撫で、「ありがとな」と告げると彼女は手足をバタバタしながら真っ赤になっていた。


 夫婦って言ってもこういうのにはお互い全然慣れてないから妙な感じだ。


「今回空中戦しなきゃいけなかったんだけどさ、チャコ連れて行かなかったからメアに飛行関連を任せたんだよ」


「……む、そうか。それが……どうしたのじゃ?」


 なんかめりにゃんが少しむくれている。


「勘違いするなよ。俺はめりにゃんに感謝したいんだ」


「感謝じゃと?」


「前にメアと戦った時俺が自由に空中で戦えるようにしてくれただろう? メアに同じ事頼んだらかなり難しい事なんだって事が分かってさ。俺めりにゃんにずっと無理させてたかなって思って」


 彼女は「なんじゃそんな事か」と、とても優しい表情になった。


「儂は今も、そしてあの時も……種類は違うかもしれんがずっとセスティのパートナーだったんじゃぞ? だから……それくらい当たり前じゃろ?」


「……そっか。だったら俺もパートナーとして大事にしてやらないとな」


「むぅ……照れるのう。……それより! わ、儂の事はいいんじゃ! 何か、気にかかる事があるんじゃろう?」


 確かに、めりにゃんの言うように引っかかってる事がある。


「じゃあちょっと聞いてくれるか?」


 俺はベアモトでの経緯を一通りめりにゃんに説明した。


 そしてその後の事も。


 あの後、俺達がダイダラボッチを仲間にして、ヒールニントの元へ戻ると……。




「ヒールニントどこ?」


「確かにこの辺なんだろうな?」


「間違いないわよ。私が間違える訳ないじゃない」


 自信満々に言ってる所を見ると間違いは無いんだろうが……それにしてもヒールニントはどこへ行った?


 ベアモト城は炎上し、ほぼ崩れ去っていた。

 ダムより下流へ行くと万が一ダムが決壊してしまった時に洪水に巻き込まれるので、メアは少し離れた森の中にヒールニントを避難させたらしい。


「あ、皆さんお揃いですねーもう終わったんですか?」


 またひょっこりと木々の影からヒールニントが顔を出した。

 いつも背後から現れるのは何なんだ?


「ヒールニント! そいつから離れて!」


「生きてやがったんですかい! 早くこちらへ!!」


 メアとゲッコウが凄い剣幕でヒールニントの背後を睨む。


 そこには……。


「お前、エネルギー吸い取られてたはずじゃ」


 そこにはキャメリオが立っていた。


「フロザエモンか……このお嬢さんに助けてもらったんだ」


 ゲッコウはゲコ美を下がらせ、刀に手をかける。

 メアも今にも襲い掛かりそうな勢いで戦闘態勢を取ったのだが……。


「あ、この人キャメリオって人じゃないですよ? ちゃんとショウグンさんです」


 あっけらかんとヒールニントがそんな事を言ったので、場の空気が完全に固まる。


「そ、そんな馬鹿な事があるか。キャメリーンは殺して食った相手を模倣できる能力を持っていた……キャメリオも同じだろう?」


 これは、どういう事だ? 何を信じればいい?


「まだショウグンの真似をするたぁふてえ野郎だ!」


「皆! 違うんです。本当にこの人はショウグンさんですよ」


 ヒールニントがショウグンの前に立って彼を庇う。


「どういう事か、聞かせてくれるか?」


 ヒールニントの説明はよく分からない物だった。


 少し離れた所にキャメリオが落ちてきて、彼女が様子を見に行ったら虫の息だったので助けようとしたらしい。


 その時点で救いようのないお人好しなのだが……その時点でキャメリオは消失し、ショウグンだったと彼女は言った。


 思い出しながらめりにゃんに説明しているが、今考えてもよく分からん。

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