魔王様はお見合いに苦笑い。
「……」
ゲッコウまで飲み込まれなくて良かった。ダイダラボッチがキャメリオを飲み込んですぐに吸い込むのを辞めてくれたおかげで助かった。
先程のように逆側から吐き出されるような事もなく、キャメリオは完全に飲み込まれてしまった。
と思ったんだけど。
ぺっ!
あれ? キャメリオらしき物が勢いよく吐き出されて飛んでいった。
「……全然、足りなぁぁぁい」
ダイダラボッチは活動エネルギーが足りなくなってキャメリオを吸収したが、それじゃあ全然足りなかったらしい。
「で、どうする? そんな状態でも俺達と戦うのか?」
ダイダラボッチはゆっくりと身体ごとこちらに向き直り、しばらくぼーっとする。
「……おい、なんか言えよ」
ダイダラボッチはこちらをぼけーっと眺めたままたっぷりと沈黙を続けた。
「おーい、どうするんだ? 俺達のエネルギーを奪おうとしたって俺達はそう簡単には……」
「もう、いい。そもそもぉぉ争いはぁぁぁ好きじゃぁぁないんだぁぁぁ」
「ど、どういう事だよ。思いっきり好戦的だったじゃねぇか」
あれだけ暴れておいて争いは好きじゃないとか言われても……。
「それはぁぁぁ話すとぉぉぉ長くぅぅ……」
ほんっとに長かった。
ゆっくりゆっくり間延びしながら長い話をしてくるので、こいつの話を要約するとだ。
ダイダラボッチは元々おとなしい性格で、むしろ率先して人々の生活に関わってきた。
でも彼が活動をする為には多くのエネルギーが必要で、その都度沢山の人々から少しずつ力を分けてもらっていたが、そのせいかこの近辺の人々は全体的に寿命が短かった。
それに気付いたダイダラボッチは自ら眠りにつく事を願い、ベアモトの住人達はダイダラボッチをこの地の守り神として敬った。
何者かが彼の望みに反して目覚めさせたりしないよう、眠る場所を誰かに荒らされないよう、彼の眠る地にダムを造り水底に沈めた。
先程は無理矢理目覚めさせられてしまった事に対する怒りと、目覚める事が出来た喜びという相反する感情からキャメリオの言う事を聞いてしまい、かつ俺達と戦ってムキになって暴れてしまったのだと言う。
しかし、どちらにせよ長くはもたないのでこのまま再び貯水池の底で眠りにつく事にすると言い出した。
「ねぇおにぃちゃん、この荒神なんとかならないかしら? このまま眠らせちゃうのもなんだかもっ……可哀想よ」
今勿体ないって言いそうになっただろこいつ。
しかし言いたい事はなんとなくわかる。
無理矢理起こされてすぐまた眠りにつかなきゃならないんだもんな。
だが俺にこいつをどうにかしてやる方法は思いつかない。
仮に俺と一緒に居られるなら力を分けてやる事も出来るかもしれないが、そもそもヤマタノオロチだけで精一杯なのでこれ以上増やすというのは流石に危険な気がする。
俺ではなくメアが、というのなら何とかなるだろうがそもそもこいつのこの巨体ではチャコのように普段から一緒に居る事もできない。
ヤマタノオロチのようにアーティファクトに入れて持ち運ぼうにもあれほどの強度を持った器なんてそうそう見つからないだろう。
……待てよ?
「メア、もしかしたらイケるかもしれないぞ」
メアが不思議そうにこちらを見て、首を捻っていたが、すぐに何かに気付いたようにどこかへ飛んで行き、ゲコ美を連れて帰ってきた。
俺はダイダラボッチの肩の上にゲッコウと共に立っていて、そこから大事な質問をする。
「ダイダラボッチ、今この世界は星降りの民の生き残りに脅かされてるんだ。もしよかったら力を貸してほしい」
「星降りぃぃぃ?」
ダイダラボッチの声に怒気が混じる。
「あいつらのせいで、大変だったんだぁぁぁ。まだ悪さしてるのかぁぁ? でも……力を貸すって言ってもぉぉどうしたらぁぁぁいいぃぃい? もう力がぁぁぁ」
「私が貴方に力を分けてあげる。言っておくけどあんな偽ガエルと一緒にしないでね! 貴方が十分に力を出せるくらいにはしてあげるわ」
「でもぉぉぉ動くとぉぉぉ木も、動物も、人間もぉぉ傷つくかもぉぉぉ」
やっぱり根っこはとても優しいのだろう。
大きな一つ目を細めて、とても寂しそうだ。
「ダイダラボッチ様! 私はこの地を納めてきた者の子孫です! 先祖達に代わり、お礼を言わせて下さい。いつもこの地を見守っていて下さりありがとうございました。そして、過去に私の先祖達を助けて下さった事、このベアモトの繁栄に力を貸して下さった事、本当にありがとうございます」
メアが連れて来たゲコ美が、メアにぶら下がりながら深く頭を下げた。
「うぉぉぉぉ……確かに、懐かしい感じぃぃするぅぅぅ」
「我が一族には杓子の玉という物があります。先程はこれを悪人に利用されてしまい、ダイダラボッチ様の眠りを覚ましてしまったのですが……きっとこの玉は長い年月を経て力を溜め、然るべき時に貴方様を目覚めさせる為の物だったのではないかと思うのです」
……なるほど。人々から力を吸い取る事を嫌がって眠りについたダイダラボッチを、罪の意識なく目覚めさせる為にずっと力を溜め込んでいた……そういう物だったのかもしれない。
今となっては戦闘のせいでその力も一気に使い切ってしまった訳だが……。
しかし、ゲコ美の先祖達のおかげでまだ先に繋ぐ事が出来る。
「ねぇダイダラボッチさん、もし私達に力を貸してくれるなら私が力を分けてあげる。オッケーだったらさ、この杓子の玉に入って一緒に来ない?」
あれだけの力を長期蓄えておく事のできる玉、恐らく杓子の玉もアーティファクトの一種だ。
ならば、空っぽになった今ヤマタノオロチのように出来るのではないか?
「お、おででよければぁぁ喜んでえぇぇ」
うっすら顔が赤らんでる気がする。
でっけぇ図体して照れやがって……
なんだこれお見合いかよ。
――――――――――――――――――――――――
ダイダラボッチとキャメリオ戦はこれでひと段落ですが、この章はもう少し続きます。
この章は息抜き回とみせかけて細かい伏線を散らしております(笑)
気付いても気付かない振りをして下さいね(;´∀`)
次回不思議な事がおこるよ!
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