魔王様と謎の男。
次の階層へ移るとそこには忍者みたいな奴等が沢山いて、すばしっこいのが多かったけどショコラに比べたらどうという事はなかった。
フロアに居た忍者のうち三分の二程ぶちのめした所で、奥の部屋から誰か出てくる。
「なんだ騒々しい……賊か?」
「レイファン様! 曲者です! あの女強すぎて我等では相手になりません。どうかお助けを……!」
……出て来た奴は人間だった。
レイファン様、と呼ばれていたのでここに居る奴等よりも格上なんだろう。
「レイファン様の術にかかれば女などただの人形になり果てるのだ!」
あの男一人出て来ただけでやたらと忍者どもの士気が上がった。
術……サクラコの使う忍術とかいうやつも広い意味では魔術の一種らしいので、警戒が必要よね。
こいつはどんな術を使う……?
「ふふふ……騒ぐな、すぐにお前らにいい思いをさせてやるからな。さぁ……我の秘儀に恐れ慄き、そして悶絶せ……よ? えっ?」」
レイファンと呼ばれた男が私の顔を見た途端その動きを止めた。
「な、な……、なんで?」
「あら? どうしたのかしら? かかってこないの?」
どうも様子がおかしい。
「レイファン様! どうされたんですか!?」
「レイファン様! いつものようにお願いします!」
「レイファン様!」
「だまれぇぇぇっ!! 貴様ら、貴様らが相手にしているのがどれほど恐ろしい悪魔なのか、まったく理解していないっ!!」
この男……何を言ってるのかしら?
「邪魔するなら……やっちゃうよ?」
メディファスを構えてレイファンへ向ける。
「ひっ」
「レイファン様!? どうされたんですか!? あの女はそんなに危険なのですか!?」
「お、おおおおお前らは何も知らんからそんなふうでいられるのだっ! わ、私はあんなのと二度と戦いたくないぞ!」
私の事を知ってる……? でもあんなのと戦った覚えはないんだけど……。
「そんな、レイファン様! 何とかしてください! レイファン様に見放されたら我等はどうしたら……っ!」
「うるせぇ知るかっ! お前らに男として再起不能になった俺の気持ちがわかるか!? いいか、あいつは化け物だ! 鬼だっ!悪魔だっ! 畜生っ! 金払いが良いからとこんな所の用心棒なんて受けるんじゃなかった……俺は逃げる! 全力で逃げるぞ!」
「ま、待って下さいレイファン様!!」
「嫌だね! お前らも地獄の苦しみを味わって死ね!! じゃあな!!」
「レイファン様ぁぁぁぁっ!!」
……なんだこれ。
ぜんぜん、まったく状況が飲み込めないんだけど……。
レイファンって奴は顔面蒼白で股間を抑えながら格子窓をぶち壊して外へ逃げていった。
「……レイファン様ってのは逃げちゃったけど……あんたらはどうする? あいつが言ってたみたいに地獄の苦しみってやつ味わってみる?」
よく分からないけどこれは乗っかっておいた方が楽できそうだ。
「う、うわあぁぁぁぁぁっ!!」
「逃げろぉぉぉぉぉっ!!」
「レイファン様が逃げるような相手に勝てる訳ねぇぇぇっ!!」
「押すな馬鹿っ! 先に逃げるのは俺だっ!!」
……みんな取り乱しながらも蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
ほんとに、なんだったんだろう?
「あれ、おにぃちゃんだ」
窓の外にメアが浮いてた。
「ねぇおにぃちゃん、さっきの爆発っておにぃちゃんがやったんだよね? もうオッケーなんでしょ?」
「あぁ、大丈夫だ」
『……やっと戻って下さいましたか……』
メディファスが何か言ってたがそんな事はいい。
それより、メアが破壊された格子窓から中に入ってくると、背中にヒールニントを背負ってるのはいいとして、片手にさっきのレイファン様って奴が首根っこ掴まれてもがいていた。
「なんだぁぁきさまぁぁぁっ! ひっ、ひぃぃぃぃっ!!」
メアから逃れようと暴れていたが、俺のいる場所まで連れてこられた事に気付くとパニックを起こした。
「た、助けてぇぇぇっ!!」
「なぁ、レイファンって言ったよな。お前誰だっけ? 俺全然記憶にないんだけど」
「ひっ、ひぃぃっ! 許して、許してーっ!」
騒ぐばかりで全然会話にならん。
「おにぃちゃん、こいつね、私がその体使ってた時ロンシャンの闘技場に居た女の敵」
女の敵……?
「妙な術で女の子を動けなくして観衆の中で乱暴するっていうのがお決まりだったクソ野郎なんだよね」
……あぁ、そりゃ糞野郎だわ。
それで納得がいった。
こいつが出て来た時の忍者どもの士気の上がり方は異常だったもんな。
あの時忍者どもはこいつの魔術だか忍術だかで俺が動けなくなって、好き放題出来ると思って喜んでたわけだ。
……こわーっ。
「あの時こいつの下半身にメディファスぶっ刺してやったのに生きてたんだね」
『なんですと!?』
うわ、きたねーなおい。
『わ、我の意識がない時にそんな事に使うとは……!』
「よく見たら同じ顔が二人……!? どうなって……」
レイファンが涙目でガクガクと震えている。少し可哀想な気もするけどこいつの場合自業自得か。
「あの時戦ったの私。今度はあの剣をお尻にでもぶっ刺してあげようかしら?」
「ご、ごめんなすぁぁぁぁぁい!! 何でもするから許して下さい助けてっ!!」
『……言っておきますが、我は断固拒否します。これ以上我を汚らわしい事に使わないで頂きたい……ほんと、お願いします』
……メアの奴、この身体使ってプリンとして生きてた時随分濃い人生送ってたんだなぁ……。
――――――――――――――――――――――――
まさかのキャラ再登場でしたが覚えている方はいたんでしょうか?(笑)
これを聞きたいが為に後書き部分を作ってしまいました……。
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