魔王様の破壊活動。


「あの~♪ わたしぃ、ちょっとした用事でこのお城に招かれただけなんですけどぉ~そのショウグンって方はどんな人なんですかぁ?」



『ぐぼぼぼ……ごれはびどい げふっ』


 私の足元で喋り出したメディファスを踏みつけて黙らせる。


 まったく、バレたらどーすんのよっ! 少し黙ってなさい!


 そもそもこんな美少女と一緒にお風呂に入ってしかも足元に沈んでるとかどんだけご褒美なのよ。もっと喜ぶべきなんじゃないの? でも実際喜ばれたら気持ち悪いからとりあえず黙ってなさい!


「あれ? 今何か変な声聞こえなかった?」


「き、気のせいじゃないですかぁ? それで、そのショウグンって人は……」


 メディファスのせいで話が逸れそうになっちゃったじゃん危ない危ない。


「ショウグンさんはねぇ……」


 そこで彼女達から聞いた話は、思ってた内容と大分違った。

 いろいろ考え直す必要がありそうだなぁ。




「お嬢ちゃんはまだ出ないのかい?」

「お姉さん、私達先に出るわね」


「おかまいなく~私はもうちょっとゆっくりしてからでますので~♪」


『……ぞろぞろよろじいのでは?』


 うっさいわねぇ……。


 私は皆が風呂場から出て着替え、脱衣所から出て行った頃を見計らってメディファスを浴槽から出した。


『ふぅ……錆びてしまうかと思いました』


「あんた錆びるような素材だっけ?」


『こういうのは気持ちの問題です』


「ぷきゅぅ~」


 あっ、マリスが大分湯あたりしちゃってる……。


「よしっ、私達もそろそろ出ましょう♪」


 浴室から出て脱衣所に山積みになってたバスタオルの下から三番目くらいのタオルを引き抜いて体をふく。


『なぜそこから?』


「だってこういうのってローテーションで使うでしょ? 下の方にあるやつの方があまり使われてないような気がして」


『意外と潔癖なのでしょうか?』


 違うんだなぁ。そういう訳じゃ無いんだけど日々カエルの身体を拭いてるタオルってなんか嫌じゃない?


 ゲッコウとかゲコ美にはこんな事絶対言えないけど。


『女というのは恐ろしいものですね』


 うっさい!


「さて、マリス大丈夫? そろそろ服に戻ってもらえると助かるんだけど」


「ぷ、きゅ」


 タオル状態から一度毛玉に戻っていたマリスは、フラフラしながらも再び私の身体にくるくる巻き付いて赤いドレスに戻る。


「さて、と♪」


『これからどうされるんです?』


「必要な情報は仕入れたし、とりあえず大暴れでいいんじゃないかな? さっきの人達巻き込みたくないからみんなに聞こえるような大爆発起こせばおっけーでしょ」


『それだけの爆発を起こすのならば巻き込んでしまうのでは?』


「馬鹿ねぇ、とりあえず今は誰も居ない場所があるでしょ?」


 この風呂場と、下のゴミ捨て場。


 私はまず先ほど上がってきた穴の入り口まで行って、ダクトの向こう目掛けて一発魔法をぶちかました。


 どごごごごごごっ!!


「思ったより建物がぐらついちゃったけど……まぁこのくらいじゃ倒壊はしないでしょ。あとは風呂場の爆破いっくよー♪」


 どがぁああぁぁぁぁん!!


 同じく風呂場目掛けて魔法を唱えて大爆発。

 というか炎上。


 燃やすつもりは無かったんだけどな……。


『主、早く用事をすまさないとこの城が燃え落ちてしまいます』


「そう、ね……炎系の魔法辞めといた方がよかったね」


『少し考えればわかる事かと……』


「何か言った?」


『その目を辞めて下さいゴミ捨て場に投下しそうな顔をしています』


「そうなりたくなかったらお口チャックね」


『……了解』


 じゃあ後は上を目指してガンガン行きましょう!


「どんどん登って行くからもし罠があったらすぐに言ってね。もしメディファスが教える前に私が罠にかかるような事があったら分かってるよね?」


『……最善を尽くします』


「よろしいっ♪」


 風呂場から出ると先ほどの女性達が何事かとせわしなく走り回ってたから、近くで爆発があったみたいと告げて早く城の外に逃げて下さい! って言っておいた。


 これでさっさと逃げてくれたら巻き込まれるような事は無いと思う。多分。


 周りにある部屋は全部無視で廊下の突き当りまで行くと階段があったのでそれを上へ。


 そこは広間になっていて、カエルみたいな外見の兵士や、獣人の類なんかもひしめいていて爆発に狼狽してた。


「あんた達死にたくなかったらさっさとこの城から逃げた方がいいよー?」


「なんだ貴様は!」

「さてはこの爆発貴様の仕業か!?」

「この侵入者め! 切り捨ててくれる!」


 ……逃げた方がいいって言ったのに。


「せっかく教えてあげたのに逃げないって事はここで死ぬ覚悟があるって事でいいんだよね?」


 兵士達はよく訓練されてるらしく、そのくらいじゃ引いてくれなかった。

 私を取り囲んで各々武器を構える。


「いいよ、相手してあげるから死にたい奴からかかってきなさいっ☆彡」


 飛びついてきたカエルをメディファスで一刀両断し、次に突っ込んできた獣人……熊みたいな大男を回し蹴りで吹き飛ばして、水魔法を部屋の中にぶちまけて水浸しにしたところをメディファスに雷魔法を纏わせ地面をぶっ叩く。


 地面を伝って電撃が兵士達を襲い、その後に立っていられたのは一人だけだった。


 うっかり痺れたら嫌なので自分はメディファスの上に乗る形で電撃回避。



「あら、貴方は結構やるみたいね?」


「……かなりの手練れとお見受け致した。是非手合わせ願おう! 我の名前は……」


 思い切り地面を踏みしめ、超加速。

 敵の言葉が終わる前にその眼前まで迫る。


「興味ないんだわ」


 その頭に拳を叩きつけ、そいつは床板をぶち抜いて何階層か下までずぼぼぼっと突き抜けていった。


「さ、先を急ぎましょ♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る