魔王様とカラクリ屋敷。
いやいや、成り行きとはいえ、ここまで関わってしまったんだからきちんとやるべき事をやらないとな。
ふざけた話に聞こえるがゲッコウ達からしたら本当に重要な問題なのだから。
「とりあえず俺達も早く行こう。それにしたってなんでこのタイミングであんな話したんだよ時間くっちまったじゃないか」
「貴女が私のおにぃちゃんになって、いろいろ考えてたのよ。ママの事とか、ほら……ヒールニントが私の妹かも、とかさ」
メアはおふくろと会って来た時の事を思い出すように目を閉じ、続けた。
「そしたら貴女の体はロザリアのでしょ? ヒールニントとも関係ある訳だから昔出会ってるんだよって教えてあげたくなっちゃって」
「……なるほどな。俺も微かな記憶だけどちょっとは思い出せたよ。ありがとう」
「別にいいのよ。私はどっちかっていうと私よりヒールニントに早く出会えてるって事に拗ねてるんだからね!」
拗ねてるんだからね! って言われても困ってしまう。こいつは先の事をちゃんと考えるようになったのはいいんだけど、ネガティブに前向きなんだよなぁ。
「そのうちまたおふくろに会いに行けばいいさ。お前ももう俺の家族なんだからよ」
「おにぃちゃんは私を妹として受け入れてくれたのね。……うれしい」
おいおい。照れるの分かるけどこっちまで恥ずかしくなるからやめてくれよ。
「とにかく俺達の事よりも今はさっさとゲッコウの問題を解決してやろうぜ」
「そうね。私カエルさんにはいろいろ助けてもらったし。恩返ししなきゃね!」
本当に、変わったよなこいつ。
「じゃあヒールニント、私達はあっちにいきましょう!」
「はい! あ、待って下さいよう! ちゃんと守って下さいね!?」
「はいはい。だからちゃんとついて来なさいね!」
そんな騒がしいやり取りをしながら暗がりへ進んでいく。
まったく、ここはもう敵の陣地だというのに能天気な奴等だぜ。
……さて、ここからは俺一人。急に静かになったからちょっと違和感があるが……別に寂しいとかそういうんじゃないから。絶対。
ちょっとさっきまで騒がしかったから空気の変わりようについていけてないだけだから。
俺も一緒に行く人誰か連れてくればよかったとかそんな事まったく思っては……。
「何者だっ!?」
「うわっ、びっくりした……なんだ、お前フクヒルの兵士か?」
「如何にも! この侵入者め! 俺と出会ったからにはここを生きてでられるとごぶあっ!」
「うっさい。お前は黙っとれ」
出来るだけ加減して頭をぶっ叩いた。
多分死にはしないんじゃないかな。きっと。
「……はぁ、仕方ない。気を取り直して行くとするか」
『主、誰かお忘れではありませんか?』
「……いや、誰も忘れてはいないと思うが?」
『強がっても無意味です。主が先ほどとても寂しい思いをしていたのは我に筒抜けで……』
「お前はこんな異国の地に来てまで俺に虐待されたいのか?」
『いえ、そんな事は……! ……待って下さい。今の言い方ですと普段我の事を虐待していたという意味になってしまいますが!?』
「……気のせいだ。そんな事よりも話し相手くらいはできるだろ、付き合え」
『むむ……話をはぐらかされてしまったように思いますが話し相手にというのであればやぶさかではないというかそのくらい引き受けてもよかろうというか……』
「嫌ならいいぞ黙ってて」
『嫌なんて言っておりません!』
まったく、嬉しいなら嬉しいと言えばいい物を。
『そっくりそのままお返しいたしましょうか?』
「……」
『……』
「痛み分けという事で」
『それがいいですね』
さて、実際問題メディファスが居る事を忘れていたので軽く話が出来る相手がいるのは助かる。
なんだか奴等が賑やか過ぎて羨ましくなってたところだ。
俺はゲッコウやメア達が向かった方とは別の、真っ暗な通路へ足を踏み込む。
魔法で小さな明かりを灯し、前方に注意しながら進むが、もう少し足元にも注意を払うべきだったと後悔した。
だって足元いきなり穴開いて落とし穴に落ちそうになったんだもん。
かろうじて縁を掴んでよじ登る。
落とし穴なんてめりにゃんと出会った遺跡以来だな……危なかった。
別に死にはしないしそこまで警戒する必要もないんだけど、痛いのは避けたいし。
穴の底を明かりで照らしてみると無数のトゲトゲと白骨。
やっぱり落とし穴ってのは普通こうなってるよな……。
この城、思ったより面倒かもしれないなぁ。残りの二組は大丈夫だろうか?
ゲッコウとメアに関しては別に平気だろうけど、ゲコ美とヒールニントが落とし穴に落ちてたらザックリいって死亡って結末も考えられる。
ほんとに余計な事しなくていいからちゃんと守られていてくれよ?
串刺しのカエルなんてゲテモノ料理みたいな絵面は見たくないからな。
『主、気を付けてください。この城には特殊なフィールドが展開されております』
フィールド? まさか魔術を?
『おそらくその通りかと。ここからは気を付けて進みましょう。頼りになる相棒に任せてください。罠などすぐに見破って差し上げましょう』
「そうだな。お前がいれば安心だ」
『な、ななな、突然何を……!? そんなふうに褒められるなんて想定しておおおおおりません!!』
相変わらずこいつからかうとおもしれーなーなんて思いながら、目の前にある扉を指先で触れた瞬間扉がぐるんと回転して、回ってきたドアに背中をどつかれる形で向こう側に吸い込まれてしまった。
その先は滑り台になっていて見事ゴミ溜めに到着。
「……おい、頼りになる相棒よ」
『な、なんでしょう……』
「罠の感知してくれるんじゃねぇのかよ」
『それは、その……まず主の罠にかかってしまったのでノーカンで……』
俺は酷い臭いの中、深いため息をついた。
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