魔王様はもうよくわかんない。
「……と、まぁ大体そんな感じでさぁ」
「大変だったんですね……」
「大変だったのね……」
女性陣はかなり感動してしまったらしく二人で大盛り上がりなのだが、俺はちょっといろいろ気になって仕方ない。
「いくつか確認したい事があるんだが……」
「へい、なんでも聞いてくだせぇ」
「じゃあ遠慮なく……まずだ、ショウグンってやつの詳細がわからん。それとなんでベアモトがゲコゲコランドって呼ばれてるんだ? それと一番気になってるのが機動要塞ベアモンだよなんだそれふざけてんのか?」
一気にまくし立てたら軽く息が切れた。
女子二人は「それ重要?」とか言って俺を白い目で見てくる。
「ショウグンはダイミョウの弟にあたり、ベアモトで二番目に位の高い人物でさぁ。ゲコゲコランドっていうのは昔の地名なんでさぁ。ベアモトの場合ほとんど領地が変わらず名前が変わった為に昔の呼び名もそのまま使われてるってわけですぜ。機動要塞ベアモンは……どう説明したらいいものか、とにかくでっけぇカラクリですぜ」
一気に全部説明されてしまった。
ベアモンだけは未だに納得できないが、そういう物があったんだ、という事で納得するしかなさそう。
「……うーん、百歩譲ってな、過去の話は分かったという事にしよう。大体だが把握した。それで、次はあのメッセージについて説明してもらえるか?」
ゲッコウとゲコリーヌ……ゲコ美は顔を見合わせてから、ゆっくり語りだした。
「実は……あっしらが知らぬ間にどうやらゲコゲコランドが再建しているようなんでさぁ」
「ほう、いい事じゃねぇか。生き残りが居たって事だろう?」
「それなんですがね、そうじゃねぇんです。ベアモト城を復活させ、今ゲコゲコランドを支配しているのはどうやらフクヒルのダイミョウって話なんでさぁ」
……フクヒルって言ったらゲッコウに以前ゲコ美暗殺を依頼したところか。
「そもそもなんだが、どうしてフクヒルのダイミョウはゲコ美を暗殺しようとしてたんだ?」
「あっしにも分かりやせん。敵対勢力のダイミョウを討つというのなら分かりやすがその娘を、というのは……。あっしは理由など関係なく仕事を受けてやしたし」
ゲコ美は少し複雑な表情で俯いてしまった。
段々このカエル顔も慣れて来たな。
「きっと……あいつらは杓子の玉を探してるんだと思います」
俯いたままのゲコ美が気になる事を呟いた。
「杓子の玉はこの地に眠る龍脈の力を吸い上げ凝縮した結晶の事です。膨大なエネルギーを秘めていて、あのベアモンも杓子の玉を動力にしていました」
龍脈……? 初耳の言葉だな。
『お前らで言う所の魔素という奴だ』
「うわっ、びっくりした!」
急にオロチが話しかけてきたのでかなり驚いたが、その説明でなんとなく分かったぞ。
魔素ってのはアシュリーに言わせると大地から湧き出てる魔力みたいなもので、それを浴び続けて内部に凝縮した物が確かクリスタルツリーだった筈。
だとしたらその杓子の玉ってのもかなりのエネルギーを秘めているんだろう。
「じゃあフクヒルのダイミョウは当時ベアモンに使われていた筈の杓子の玉を探す為にゲコゲコランドに拠点を構えたというのか? それにしても玉っころ一つを探すのにそんな大掛かりな事をするとは……もう既に見つかってるって可能性はあるかもな」
「いえ、それはありません」
ゲコ美が断言する。その力強い言葉でピン、ときた。
「……持ってるのか?」
「はい。あの日から肌身離さず」
そう言ってゲコ美が胸元をちらりと開き、ペンダント型の何かを見せようとしたが慌ててゲッコウが俺の視界を遮って来やがったのでどんな物かは分からなかった。
「ゲコ美さん! この方はこう見えて男性なんですぜ!? もう少し恥らいと言う物を!!」
「ご、ごめんなさい」
というかそんな必死にならなくてもカエルの胸元に興味はねぇから安心しろよ……。
「それをゲコ美が持ってるって事は……それがバレちまったら狙われるぞ」
「へい。それが問題でして……普通にしてればバレる事など無いと思うんですがね……だというのに既に昨夜刺客が送り込まれてきやした」
……わざわざこんな所に刺客を送り込む理由……ゲコ美がここにいて、杓子の玉ってのを持ってるのがバレてるって事なんだろうなぁ。
どこからその情報を仕入れた?
……いや、今それはどうでもいいか。それよりも。
「で、ゲッコウはどうするつもりなんだ? ゲコ美が狙われてるならこのままにする気はないんだろう?」
一瞬にしてゲッコウの目付きが鋭くなる。見た事が無い程に。
「……あっしは、ゲコゲコランドに……ベアモト城に乗り込んでダイミョウを始末するつもりでさぁ」
危険の元を排除する。それが一番の解決策ではあるんだろうな。
「よく言ったわカエルさん! 私も手伝ってあげようじゃない」
「あ、あの……力になるかどうかはわかりませんが私も協力します!」
女性陣は二人ともやる気満々のご様子なのでここは俺も乗っかるしかなさそうだ。
「ここまで聞いちまったからな。俺も手伝ってやるよ。お前らはショウグンって人を探してたみたいだが、戦力として召集をかけたかったのか?」
俺の言葉に感謝しつつ、ゲコ美が「違うのです」と伏し目がちに言う。
「あれは、敵を騙す為なのです」
……?
どういうこっちゃ。
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