魔王様と騒ぎの後。


「いい? 貴女に今嵌め込んでるエネルギー源はただの疑似アーティファクトなんだから、無理したらすぐ壊れるんだからね!?」


「はむっ、わはってまふよーむぐっ、もぐっ、あーおにくおいひーれすー♪」


 ぼかり。


「もぐもぐっ、なんれたたくんれすかー?」


「お前が腹立つからだよっ!! 相変わらずかてぇなお前は……!!」


「おまえひゃなくてもぐっ、むぐっ、メリーですよぉ~?」


「はぁ……もういいわ。お前はそういう奴だったよ。とにかく今は食いたいだけ食え」


「やたーっ♪ マスター大好き☆彡」



 あれから数日……。

 あの後俺達はメリーを回収し、王国へ戻ってきた。

 あちこちボロボロになっていたが、致命的な損傷は無いので日常生活をするには支障がないだろう。


 それにアシュリーは疑似アーティファクトを自力で作れるくらいにそっちの道に通じている。

 少しずつ補修もしてくれるだろう。


 アレクがドン引きするくらい爆食を続けるメリーと、それを見て文句を言いながらも優しい目をしているアシュリー。

 なんだか親子みたいだなぁと思った。


「お、なんだお前も飯か? たまには一緒にどうだ」


「うげ」


 遠巻きに二人を見ていた俺に声をかけてきたのは……。


「父親相手にうげ、は無いだろうよ」


「お前もう父親じゃねーだろうがよ」


「離婚したからってお前の父親である事に変わりないからね!? 俺の遺伝子から生まれたのを忘れないでっ!」


 親父の奴……さっさとおふくろに頭下げに行けばいい物を、うだうだ言ってなかなか思いきれずにいるらしい。


「言っておくが俺の体はローゼリアの姫の物だからな。お前の遺伝子など今の俺には全く関係ない」


「やれやれ屁理屈をいいやがって……ん、待てよ……? そうするとお前の体はどこいっちまったんだ?」


「ああ、それならアレだよ」


「こっちに話振らないでちょうだい。そのおじさんとは関わりたくないの」


 俺から少し離れた所でスープを啜ってたメアを指さして教えてやると、親父は首を傾げていた。


「いや、二人はよく似てるけど、メアちゃんの身体がプリンの? 確かに言われてみればプリンは前あっちの身体に入ってたんだったか。で、あっちが今メアちゃん……って事は、メアちゃんは俺の娘なのでは?」


「ふざけないでっ! 私はキャンディママの娘だけど貴方の娘になった覚えないわ! キャンディママに頭下げて許してもらわない限り絶対に認めないからっ!」


 メアは顔を真っ青にして早口でまくし立てる。本当に心の底から嫌らしい。


「……なるほど、つまり俺があいつに許して貰えれば晴れて父親になれるというわけだな……よしプリン、今から行こう!」


 おいおい正気かよ……。


「早くキャンディの奴に詫び入れてメアちゃんを俺の娘にするんだ! セクハラしてた相手が息子だったと知った時の絶望を挽回するにはこれしかないっ!」


「セスティ、殺しましょう」


「待てメア、早まるな!」


「メアちゃん! 恥ずかしがらずに俺の胸に飛び込んでおいで! もしくは俺がその胸に飛び込むから受け止めておくれ!」


「死ねぇぇぇぇぇ!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」



 ……はぁ、ここは地獄か……?

 平和な騒ぎではあるのだが、メアが衝動的に暴れ出したらこの国にかなりの被害が出るんだからマジで勘弁してほしい。


 というかメアの心をここまで逆なでできるやつも珍しい。


 その後メアをなだめるのにかなりの時間を浪費した。


『あんた達って本当に見てて飽きないわ』


「もうっ! そういう問題じゃないのよロザリア……」


『わたくし、貴女の事許してあげるからあのおじさんの娘になりなさいな』


「待って、その条件は酷すぎる!」


『ふふっ、冗談よ。貴女が涙目になって喜ぶ姿が見れただけでもいい収穫ね』


「見れたって言っても私の顔なんて見れないでしょうに……」


『いいのよ。どんな顔してるかはわたくしにもわかるもの』


 ……こいつら楽しそうだな。ついこの前まで殺し合いをしていたとは思えない。


 ロザリアの態度がやたら軟化しているのは気になったが、上手くやっているのならそれでいい。


 ロザリアの精神が入ったアーティファクトは王国内でしっかり管理をして、来るべき時がくるまで保管しておこうと俺とアシュリーは話していたのだが、それを聞きつけたロザリアが猛反発。


『わたくしをどこかに閉じ込めておくつもりですの!? 嫌ですわ嫌ですわ! 一般ぴーぽーどもがわたくしを監禁しますの助けてーっ!!』


 とか騒ぎだして、じゃあどうすりゃいいんだよと本人に聞いた結果……。


『簡単よ。わたくしをメアの中に取り込みなさい。彼女の中で延々と愚痴を聞かせてやるわ♪』


 だそうだ。

 メア本人もそれを罰として受け入れたものの、自分の中からあれこれからかいの言葉が飛んで来る事に困惑しているようで、あまり強くも出れずわたわたしている。


 感覚なども共有しているようで、昔ロザリアの中にメアが居たように、今はメアの中にロザリアが居る、という状態のようだ。



 メアがあれほど困惑している様なんてなかなか見られない絵面だからとても面白いが、本人にとっては確かにこれが一番の罰かもしれない。


「私があいつの娘になったら、父親面するあのおじさんを娘として貴女も間近で見る事になるのよ!?」


『うげっ、や、やっぱり考え直したほうがいいかもしれませんわね』


「でしょう!? 体は一つなんだから協力しましょう?」


『不本意ですがそれが最善ですわね』



 お前ら仲いいな……。


「ところでセスティ、ローゼリアから帰ってきて……それから見てないけれどヒールニントはどこへ行ったの?」


 ……え?

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