魔王様VS巨大魔導兵装、決着。


 今回はあのサヴィちゃんとかいう人が補正とかいうのをかけてくれなかったらしい。


 おそらく私に飛んで来たんじゃなくて私が突っ込んでいっちゃったんだから仕方ないけれど。


 気を取り直して空中で体制を整え、もう一度魔導兵装へ向けて飛ぶ。


 意味があるかどうかは分からないけど背後に回り込んで背中の方から攻撃してみる。


「どっせーい!」


 ガギィィィン!!


「やっぱだめかーっ!」


 近付く者を自動的に認識するようなセンサーがついてるのかもしれない。


 こまったなぁ。

 これだったら後ろからじゃなくて正面からの方がよさそう。


 せめて真正面からだったら進行を抑えられるしね。後ろからだと防がれるしそのまま進まれちゃうしでいい事無しだ。


 というか他の連中はまだこっちに来ないの?


 思ったより手こずってるのかしら。


 あっちの様子がまるで分からないけれど、一体ずつ相手しなきゃいけないんだからしょうがないか。


 こういう相手の方が本来力技でぶん殴ればいいから楽だったはずなのに……。


 そう言えばこの魔導兵装は中にリンロンが乗り込んで操作してるんだっけ……。


 いっそ内部に直接転移して白兵戦っていうのはどうだろう?


 よし、試してみよう。


『主! それはやめた方が……』


「えーいっ!!」


 ばごん!


「いったっ!!」


 転移しようとしたら魔導兵装と私の間に見えない壁みたいなのがあってそれに弾かれてしまった。


 転移じゃ乗り込めないか……対策はとってあるって事ね。さすが神様のテクノロジーってやつだわ。


『主……万が一転移が出来たとして、機械部分に転移して埋まってしまうとかは考えなかったのですか?』


 ……えっ。


 そっか……私の転移だと正確な移動が難しいから、中身がどうなってるのか分からない場所に転移したらそうなっちゃってもおかしくなかったのか。


 転移した瞬間身体からパイプとか歯車とかが生えてるとかいう展開もあったかと思うと怖すぎる。


「うわ……弾かれて良かったね」


『主……』


「何よ。文句があるなら言いなさい!」


『では言わせて頂きますが、主は女性化すると思考回路が少々短絡化するといいますか衝動と行動が直結してしまう傾向にあります。気を付けた方がいいかと』


『よく分からないけんどもあだすもそう思うべ……』


「な、何よ何よ! 二人とも私の事嫌いなの!? 寄ってたかって虐めて楽しい!?」


『……追加で少々言動が幼くなってしまうようですね』


『これはこれで可愛らしいべさ』


 なによ二人とも私の事馬鹿にして!


 こうなったら私はこの状態の方が強いんだ凄いんだって所を見せてやるわ!


「メディファス! もう一回行くわよ!」


 私はリンロンの前方に転移してすぐメディファスを構えて突っ込む。


 魔導兵装へ攻撃するつもりで振りかぶるんじゃなくて障壁を突き破るつもりで最初からメディファスを前方に突き出し高スピードで攻撃。


 ガギィィン!


 障壁に当たったのを確認して、少しヒビが入った個所目掛けて突きを繰り出す。何度も。


 がしゃぁぁんという音を立て一枚目を突破。


 次は先端にのみ魔法を集中し、突き立てヒビが入った場所目掛けて私が直接空いている方の手で魔法をぶち込んで砕く。


 その次!

 大分勢いが殺されてしまったのでここからは振りかぶって思い切りぶん殴るしかない。


「どりゃぁぁぁぁぁっ!」


 ズドォォォン!!


 魔導兵装が大きくバランスを崩してその場に膝から崩れ落ちた。


「ほらほらっ! 私凄くない!?」


『……いや、これはどう考えても別の要因かと……』

『だべ』


 むぅ……私の凄さを実証する前にこうなってしまったんだから仕方ないけど、誰だ邪魔したのは!


「……やっぱり、その兵装の表面に感知機能がついてたのね」


「プリン……!? メアァァァァッ!!」


 えっ、メア?


「地面の中から近付けば貴女の感知には引っかからなかったみたいね」


「くそっ、動けっ! 動けぇぇぇっ!!」


『主、これはメアリー・ルーナの戦術勝ちというやつでは?』


『認めた方がいいべ。素直な人の方が素敵だべさ』


 ぐぬぬ……!


「そんな所でじゃれてないで貴女も手伝いなさい」


「う、うっさい! さっきまでボロボロ泣いてたくせに!」


「そんな昔の事は忘れたわ。気付いたのよ。守りたい人は全部守って、その守りたい人が悪い事したなら簀巻きにして行動できなくしてからゆっくり洗脳すればいいってね」


 ……お、おう……。


 立ち直ったのは嬉しいけれど開き直り方に問題があるような気がしてならない。


 一気に頭が冷静になってきた。


「どうやらもう障壁は機能してないみたいだから足をぶち壊すわよ」


 メアの言う通り、既に俺達の攻撃を防ぐ障壁は現れない。そして、直接攻撃が通りさえすれば巨大とはいえ魔導兵装の手足をぶっ潰すくらいあっという間だった。


「メア……頼む、私の邪魔をするなっ!!」


 リンロンが泣き出しそうな声で叫ぶ。


「リンシャオさん、私はね、貴女が人殺しでも気にしないし、今後私の大切な人にさえ危害を加えなければ全部許すわ。世界中の誰もが貴女の事を許さなくても、私は許すから。だから帰ってきて。貴女の事も守らせて……」



 これだけの事をやって許される筈がない。

 だけど、メアはリンロン……彼女を守る為なら再び世界を敵に回すつもりなのだろうか?


 俺はただ、成り行きを見守るしかなかった。


「……お前ハ、馬鹿ヨ」


「知ってるわ。さぁ、一緒に行きましょう?」



「……もう、遅いネ」


 魔導兵装の黒い装甲が瞬時に真っ赤に染まる。


 リンロンが何かしたのだろう。


 メアは何が起きるのか気付いたようで慌てて魔導兵装へ向かう。


 が、それを見過ごす事は出来ない。もう、間に合わない。


「離して! 離してよっ!!」


「アレがお前の言葉に対しての答えだよ」


 やむを得ず引き摺ってその場を離れる。


 案の定魔導兵装は巨大な火柱を上げ、その場で大爆発を起こした。


 本当は障壁に閉じ込めて被害を最小限に留めたかったが、俺にはそこまでの障壁は張れないしメアはその気が無い。


「どうして……? 馬鹿なのはリンシャオさんの方だよ……」


 メアは少しばかりの間俺にしがみ付いて泣いた。

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