魔王様と張り合う二人。
「あぁびっくりしたーっ!!」
メアは掌が痺れたらしくぶんぶん振りながら叫んだ。
メアと俺の二重の障壁で何とかなったが、こりゃ想像以上の威力だ。
メアの障壁には所々穴が開いていて、防ぎきれなかった分がその隙間から俺やメアの身体にいくつか穴を開けていた。間違いなく俺の障壁だけだったら消し飛んで戦線復帰がかなり遅れていただろう。
「とりあえずこの砲撃だけでもなんとかしないとよね」
「そうだな。この威力じゃアシュリーといえどそう何発も耐えるのはきついだろう」
むしろこれを既にきっちり防いでるんだから大したもんだ。
あいつまた魔力の予備玉持ち込んでるんだろうな。
「それにしてもどうやってぶっ潰す?」
「次の砲撃が来るまでタイムラグがあるんでしょう? だったらここから突っ込んで暴れてやるわ!」
そう言ってメアは、今まさに砲撃が飛んできた穴へ向かって飛び込んでいった。
ゆっくりとしまり始めていたので考えている余裕もなく、俺も後を追う。
俺達が中へ入った頃背後で穴が塞がってしまい、真っ暗になったと同時に物凄い熱気に包まれた。
あれほどのエネルギーが放出された場所なんだからこれだけ熱を持っていてもおかしくはないが……。
これ、大丈夫か?
「暑い……あついあついあついーっ!!」
「お、おいメア?」
こいつほんとにキャラがかなり変わっちまった気がする。
俺として生きてた間にこいつに何があったんだよ……。
「腹立ってきた……とにかくかたっぱしからぶっ壊してやる!」
「落ち着け! ここのどこかに人質がいるかもしれないんだぞ!?」
「……そう、だったわね。忘れるところだった」
怒りに身を任せて大事な所を忘れてしまうあたり以前に似た狂気を感じる。
というかアレだ、俺が言うのもなんなんだけど、女性化してる時の俺に似てるんだ。
……メアを見て反面教師にしよう。それがいい。
「……だったら、まずはここの一番奥まで行って砲撃だけでも阻止して、こっからすぐ移動しましょう」
「それは分ってるんだがこの暑さだぞ。どうやって奥まで……ん? おい、冗談だろ? なんで俺の手を掴んだ。おい、おいって!」
「ごめんなさい。私暑いの苦手みたいなの」
「だ、だったらここから魔法でも……」
「ほら、奥見えないじゃない。直接破壊しないと不安でしょう? だから」
「だ、だからじゃねぇよ!! おい、わかった、何とかするからとりあえずその手を離せ」
「貴女なら出来る。信じてるわ! いってこーいっ!!」
「うおぁぁぁっ!!」
メアが俺の手首を掴んだままぐるんぐるん回転して奥の方へ俺を放り投げやがった。
あっちぃ!! 自分の周りに障壁を張ってみたけれど相手が熱じゃどうにもならんぞ。
あーっ、身体がどんどん火傷していく感覚はとっても気持ち悪い。
俺の身体が火傷するくらい暑い。ライゴスの技を受け止めた時も熱かったけどこれはそれ以上だ。
あっ、嫌な記憶がフラッシュバックしたぞ。
まだメアをやってた頃にアシュリーにぐっずぐずにされたんだった。アレくらい痛い。あれくらい身体がとろけてきてる。
メアの奴……ただじゃおかねぇからな……!
『あだすに任せるべ!』
チャコの言葉が頭に響き、次の瞬間俺の身体がふわっとした光のヴェールに覆われた。
『あだすはこのくらいの熱なんてことないべ! このまま奥まで行くべよ!』
「お、おぉ! チャコを連れてきて本当によかったぜ。よし、そうなれば一気に行くぞ!」
暑さ、熱さを感じなくなったのですぐに俺の身体は元に戻る。
前方に明かりを灯して突き進むと、やがて巨大なレンズのような物が現れた。
「……古都の民のとこで見たのに似てるな……なんでこんなものが……? これもデュクシの入れ知恵か?」
とにかく、この手の物はぶん殴って砕くに限る。
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
直接レンズ部分をぶん殴ると思った以上に簡単に亀裂が入り、それが全体に伝わってバラバラに砕け散った。
よし、これで砲撃の方は心配しなくていいだろう……。
よし、次だ! とにかくメアに一度文句言っておかないとな。
急いで先ほどの場所まで引き返すと、既にそこにメアの姿はなかった。
その代わり横にでかい穴が空けられている。
あいつ……暑さに我慢できなくなって先に行きやがったな……?
追いかけるように穴の向こうへ出ると、何やらツルツルした壁の通路が迷路のように広がっていた。
……ここから目的地を探すのは大変そうだ。
まず俺達が最優先すべきは人質の確保、次に魔導兵装への魔力供給を切る事、そしてリンシャオの安否、全部終わってからこの飛行する船の始末だ。
さて……どこから行きゃいいんだろうな。
ここから続いている通路は直進と左右。それぞれすぐまた分岐があるが、大まかにこの三方向から決めなきゃならない。
『だーりん、左に微かな魔力反応、右から強い魔力反応があるべさ』
「お前は役に立つな。メディファスとは大違いだ」
『主、我も魔力の反応くらいは察知しております。情報を精査している段階でした。ついでに言うのならば右側の魔力反応のそばにリンシャオの魔力反応があります』
「なんだと……? なんで個人を特定できる? それにリンシャオに魔力だと……?」
『魔力には個人の色があるのです。我はそれを識別したまで。リンシャオはもとよりある程度の魔力を所有しておりましたよ』
「よくやった、と言いたいところだが……素直に喜べねぇなこれは」
リンシャオにそれなりの魔力があるとなったら、魔導兵装を操っているのがリンシャオである可能性が高まってしまう。
『あ、あだすだって会った事さえあればそのくらい分るべさ!』
いや、別に張り合わなくていいから……。
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