魔王様の妹は世界の秘密に興味なし。
ヤマタノオロチが語った内容はこの世の常識、俺達が知っている範囲をはるかに超えた物だった。
一通り聞いた今も、よく分からないでいる部分が多い。
これについては後でアシュリーにでも話して解説してもらう必要がありそうだ。
オロチが語った内容はこうだ。
この世界は昔一つの丸い星で、現状はある段階で二つに切り離され障壁のような物で囲われた半円形の世界である。
まだ世界が丸かった頃、この世界には文明があった。それは今よりもはるかに科学力に優れ、国も沢山あり、今の数倍もの人間が住んでいた。
国によって言葉も違ったりしたらしいが、概ね世界の意思は同じ方向に向いていた。
人々は、この星の中央に大量に蓄えられている魔力、魔素に目をつけ、それを吸い上げる機械を使い色々な事に利用していった。
この時点での人間は今の俺達のような外見ではなく、どちらかと言うと獣人などの亜人類に近い外見だったようだ。
魔力を得た人々は……魔法を得て、科学と魔法の融合を進めていった。
そして、だんだんと国同士の意思、方向性がズレていく。
そのズレが、許容できる範囲を超えてしまった時……大きな諍いが起きた。オロチは戦争、という表現を使っていた。
恐ろしい事に、当時の技術力を最大限駆使したら小さな大陸の一つくらい吹き飛ばせるほどの兵器を作れたのだそうだ。
しかし、それでは相手の国を滅ぼした後、何も残らない。
そこで、相手の戦意を折る事を目的として、生物兵器開発が進んでいった。
主に人や動物などをベースとしてあらゆる研究が行なわれていたらしい。
その過程で多くの命が失われた。
基本的に実験体は志願者や、身寄りのない子供が使われた。
そして、やがてとある国で偶然にもちょっとした研究者の失敗から、逆に成功例が出てしまう。
人の姿をとどめては居ないが、それでも意思は保たれていた。
ただし、あくまでも失敗から偶然生まれた成功例なのでその後再現に苦労したらしい。
一人目の成功例は力を持ちすぎた。
大地から再現なく魔素を吸い上げ、力に変換しどんどんとその姿を大きく、そして強力に変質させていく。
その後の研究は、実験体一号ほど手が付けられない物ではなく、ほどほどに強力な物をというコンセプトで続けられた。
そして、他国も同じような研究を進めていった結果、やがて各国の生物兵器を用いた戦争が激化していく事になる。
人の制御を外れてしまったそれらは、争いながらも世界を蹂躙した。
そして、ひたすら世界のエネルギーである魔素を吸い続けた。
やがて、星の力は減退し、このままでは魔素が尽きてしまう。
そう危惧した一人の科学者が、比較的損壊の少ない土地を中心に、星を分断した。
それは大掛かりなプロジェクトだったが、結果的に成功した。成功してしまった。
当初はその隔離された部分に人々が移住し、新しく新天地での生活を始めていくという計画だったらしい。
が、暴走した生物兵器たちの争いは終わる事なく、やがて世界は崩壊した。
隔離していた部分を除き、地面から魔素が噴き出し星が崩壊を始めた。
噴き出した魔素を直接浴びた生物兵器たちはさらなる進化を遂げ、完全に制御を失い星を破壊した。
人々は隔離された区域へ逃げる暇もなく、自分たちが作り上げた兵器たちの争いに巻き込まれて死んでいく事になる。
そして、誰も居なくなった。
星は崩壊し、砕け散った。
生物兵器たちは魔素を求め、自然と隔離されていた方へ集まっていった。
その時点でこの星は球体ではなくなった。
人が滅び争う目的を失った生物兵器たちはこちらでそれぞれ住む場所を決め、時に小競り合いをしながらも平和に暮らしていった。
そして、この世界には何も居なかったはずなのに、荒神たちがこちらへ来ると、既に龍が存在した。
それがエンシェントドラゴン。
正しくは分からないが、この星の魔素の結晶体がエンシェントドラゴンだろうとオロチは言った。
なぜ命を持ったのかは分からない。
おそらく生物兵器たちを作る際の研究に使われた何らかの技術が、ここを隔離する際に魔素に影響を及ぼしたのではないか、との事だが結論は出ない。
誰も知る事が出来ぬ事だからだ。
そして星降りの民が現れる。
つまり、その生物兵器というのが荒神である。
しかも、ヤマタノオロチは実験体第一号、始祖の荒神だった。
つまり、元は向こう側で過去繁栄していた人類なのだ。
やがて星振りの民はこちらの世界に人間と魔物を作り出した。
これがこの世界が今に至るまでに起きた出来事だ。
勿論細かいところは割愛しているし俺には理解できない部分も多かったが……。
結局隔離された部分の海の水がそのまま残っているからこちらの海は水が減る事は無い。
星降りの民がどこからやってきたのかはオロチにも分からないが、恐らく他の星からではないかと言っていた。
異星人などという表現をするとまったく実感がわかない。
しかし、向こう側の人類より危険なのは疑いようがなかった。
星と星を行き来出来るほどの力を持った奴等がこの世界にやってきた。
間違いなく星に悪影響を与える。
その証拠に、この星の結晶であると思われるエンシェントドラゴンは奴等を敵と見なした。
荒神たちは一緒に星降りの民と戦い……そして敗れた。
「すぴー。……んぁ? あ、そろそろ終わった?」
「終わったけどお前は寝てていい」
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