聖女様はミイラと出会う。


「あ、ちょっとメアさーん、待ってくだいよー……って、あれ??」


 あれ、あれあれ!?

 ちょっと何これどういう事!?

 メアさんどこ行っちゃったの??


 気が付いたら全然知らない場所に居た。

 メアさんも居ない。


 ここはどこだろう……?

 さっきまでいた遺跡と造りは同じっぽいから、遺跡の中なんだろうなっていうのは分かるけど……。


「メアさーん? メアさーんってばーっ! どこに居るんですかー??」


 ……反応なし?

 えー、今の一瞬でそんなに遠くに来ちゃったのかなぁ……。


 まさかメアさんの事からかい過ぎて怒って私をどっかに飛ばしたとか?


 いやいや、さすがにそれは無いか。

 それに私がメアさんの事友達だって思ってるのは本当だし。


 うーん、どうしようかな……とりあえずもうちょっとこの奥に進んでみようかな?


 私が移動したこの場所は、ちょっとした小さな部屋みたいになってて、奥に向かって通路が続いていた。


 これを進めばそのうちメアさんと合流出来るかもしれないし。

 魔物は居ないと思うから危険はきっと無いよね……?


 あ、でも世の中にははぐれ魔物みたいなのもまだ居るんだっけ……?


 出来ればそういうのに遭遇したくはないなぁ……私全然戦ったりできないし。


 きっと弱い魔物とかに襲われたとしてもコロっと死んじゃうかも……。


 いやいや、さすがに私だってハーミット様と一緒に何度も死線をくぐって来たんだから。

 万が一の時は一人でも戦ってみせる!


 でも出来れば早くメアさん帰ってきてぇぇぇ……。


 私一人じゃ心細いよぉ……。


 あ、今私メアさんに助けてほしいって思うよりもまず心細いから帰ってきてって思った。


 良かった。私は別にメアさんの力をあてにして一緒に居る訳じゃないんだ。


 自分で自分の気持ちとかよく分からなくなっちゃってたから少し心配だったけど、ちゃんと私メアさんの事友達だと思ってる。


 よーっし!


「こうなったら行けるとこまで行ってやりますよーっ!!」


 偶然この奥にハーミット様が居たりしないかなー?


 なんて、さすがにそれは無いよね。

 神出鬼没だけどわざわざニポポンに居る意味が分からないし。


 ぞわり。


 急に背筋に悪寒が走った。


 どうでもいいけど悪寒が走るとオカンが走るって似てる。


 こんな事考えられるくらいにはまだ余裕があるから大丈夫。うん、大丈夫なはず……。


「こんにちわー。誰かいますかぁ……?」


 奥へ進んだらまた小部屋。

 挨拶したけれどやっぱり誰も居なくて、今回は奥に続く道とかは無いみたい。


 行き止まり……?


 えっと、私この空間に閉じ込められてる?

 メアさんが見つけてくれなかったら出られないって事!?


 なんで? 誰が私をこんな所に……?


 えっと……とにかく魔物が居ないならすぐに死ぬわけじゃないしいろいろ調べてみようかな。


 この部屋はなんか変な物がいろいろ置いてあるし、何か役に立つ物とか、もしかしたら画し扉のスイッチとかあるかもしれないしね。


 こういう時はプラス思考で行かないと!

 私まっすぐ思った通りに突き進むくらいしか能が無いんだからこんなくらいでへこたれちゃダメ。


「よーっし!! がんばるぞーっ!」


『うるさい』


「ひぇっ、だ……誰?」


『やかましいと言っている』


 だ、誰か居る……。ここに、でも……今にも息絶えてしまいそうな……。


「あ、あの……お住まいに……お住まいでいいんですよね? 勝手にお邪魔してしまってすいません。その上お騒がせして……」


『そう思うなら早々に消えよ。最後くらい静かに迎えさせてくれ』


「でも私気が付いたらここに居たんです。帰り方知りませんか?」


『……そう言えばそうだな……人間がここに来れる筈が……お前何者だ』


 あ、ちょっとだけ話してくれる気になったのかな……? 今はこの人しかここを出る手がかりがないんだからいろいろ聞かなきゃ。


「私の名前はヒールニント。ヒールニント・ウル・グレイシアって言います。あなたは?」



『私の事などどうでもいい。それよりお前……ぐふっ……ごほっごほっ……』


「ちょっと! 大丈夫ですか? どこに居るの? この辺から声が聞こえて来たけど……」



『やめろ。寄るな……見ても楽しい物ではないぞ』


「そういうのいいから!」


『どのみち私はもう死にゆく運命だ。最後にうるさい客人が来たものよ』


「あー!こんな所に居た。うわぁ……もうミイラじゃないですか……」


 ごちゃごちゃとガラクタが山積みになっていた場所に埋もれるようにその人は横たわっていた。


『もう何百年も飲まず食わずだからな。干からびてもしかたあるまいよ。それにこれから死にゆく理由はそれではない。見よ、この傷よ……これは特別な傷でな、治る事は無い……私の命を少しずつ削り取り、果てさせるのよ……お前、何をしている?』


「治しますね」


『馬鹿な。この傷に回復魔法などが効くはずが……』


「はい、治りましたよ」


『ば、バカな……お前何者だ? この力……まさか同族か? 私が追われているのを知らないのか……?』


「何言ってるか分かりませんし私は普通の人間ですよー?」


『人間な物か。ふふ……なるほど、ハーフとは興味深い。娘、礼をしよう。なんなりと望みを言え』


「望みって言われても……強いて言うなら力が欲しいですね。神様もぶん殴れるくらいの……なぁんて、無理ですよね。あはは……」


『聞き届けた』


「へっ?」


「ヒールニント! ここに居るの!?」


 メアさんの声だ。私を追いかけて来てくれたんだ!


「メアさーん! こっちです!!」


 助かったぁ……。


「助けも来ましたからもう大丈夫ですよ……って、あれ?」


 傷が癒えてちょっと元気になったミイラは、もうどこにも居なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る